仮想モールの「Qoo10」を運営しているイーベイジャパンでは、今期からの成長戦略の一つとして「インナービューティー」商品の販売を強化している。昨年は同カテゴリーの流通総額が前年比で4割超となるなど、成長性の高い市場として着目。ターゲットとなる若年女性層を多数抱えている売り場特性を活かし、大規模セールやライブコマース、共同での商品企画開発など、様々な打ち手を通じて拡販を図っていく考え。
24年から健食専門チームを強化
健食の市場規模は年々拡大しており、通販での流通額は5000億円程度だという調査結果もある。近年はコロナ禍でのプロテインブームを皮切りに、健食全体が安定した売り上げを維持している。海外では、大手のコスメ企業などがダイエットに特化したサプリメントを相次いで投入し、若い女性を中心にトレンドとなっている背景がある。
そうした中、同社では24年1月に、健康食品カテゴリーをメインとする専門チームを開設。以前は食品カテゴリーの中の一つという位置付けだったが、専門性もあって、成長性の高い注目分野であることから、健食だけを切り出して強化していく流れとなった。
加えて、Qoo10では毎年流通総額が2桁成長を続けているが、その中でも健食カテゴリーにおけるインナービューティーの商品については、24年の流通総額が前年比で39.7%増と大幅に伸長。今後の大きな柱の一つとなることを期待している。
同社でインナービューティー商材として位置付けているのは、美白をはじめ、肌の調子を補ったり、健康的な体型の維持など身体の内面から美容・健康に働きかけるもの。具体的には女性の美容にフォーカスした飲料やサプリメント、プロテインなどがあり、食事だけでは足りないような部分で、美容や健康のために補助的に摂取できるものだという。カプセルや水に溶かして飲む粉末のものなど様々ある。「こちらで明確に商材の切り分けを行っているわけではないが、若い女性顧客が多いため、彼女たちが『内側から採ることで綺麗になる』と捉えているような商材と考えている」(岡﨑萌依カテゴリーリーダー)とする。
毎週入れ替えで新規商品を紹介
ターゲット層としては美容に関心の高い10代~20代後半などの女性が中心。販売拡大に向けて、まずは8月より、モール内にインナービューティー専門の特集ページを常設で立ち上げた。
特集の中では、常時50~60商品を毎週入れ替えながら掲載するほか、取り扱いブランドの個別紹介も行っており、20ブランド程度を月1回ごとに入れ替えながら掲載している。
出店者にとっては、週ごとにピックアップされる機会があることで、商品を訴求したいタイミングが選べることにもなり、あわせて、特集ページ以外にもプロモーションメニューが豊富にある点が他のモールとの差別化の特徴になっているとする。
また、インナービューティー商材の場合は、アパレルやコスメ商品などと違って、商品名や外装だけでは内容まで理解することが難しい面もあるため、特集での見せ方には様々な配慮をしている。一例としてはテーマ設定による見せ方があり、「ボディメイク」や「体の調子を整える」など、商品特性を想起しやすい言葉で商品を切り出して特集。ほかにも、「ビタミンC」や「レチノール」など個別の成分から検索できるような導線も設けることで、商品を探しやすくしているとした。
さらに、今年4月からは、モール内での新規出店ブランドを紹介する「Mega Debut」の企画を始めており、毎週火曜にリレー形式で新しいビューティー関連ブランドを4つ紹介する中で、インナービューティーについても取り上げている。同企画では、30%割引クーポンの特典を設けて、初回購入のハードルを下げており、まだ認知が限られているような新規ブランドでも商品を気軽に体験できるようにしている。
ここで紹介された4ブランドについては、同社の自社スタジオから配信しているライブコマースにも参加することができる。ライブの中では、同社が提携するインフルエンサーをMCとして起用することも可能で、ビューティー分野に造詣が深く、知見を持ったインフルエンサーがそれぞれの商品について詳しく紹介している。配信動画はアーカイブでも残り、アプリから視聴できるようになっている。
先行事例として、韓国のブランドなどでは、MCを迎えて、実際にサプリをその場で飲んで味や飲みやすさなど商品ページだけでは表現できないような内容を実演で紹介。ライブ中の限定割引や特別セット組みなども用意することで想定以上の販売と認知拡大につながったケースも出ているようだ。
なお、各ブランドと同社が共同企画して同モール内のみで販売する商品企画として「Qoo10 ONLY」を以前から展開している。インナービューティーについても、この企画を通じて限定商品を作るケースが増えており、割り引きのセット組みや先行販売のフレーバー、お試し特典付きのセットなどを展開。Qoo10 ONLYを集めた特集ページもあるため、そこでの商品販売もできるほか、同社の大規模セールである「メガ割」においては、Qoo10 ONLYが上位の人気商品にランクインされることが多いため、効果的に売り上げを伸ばせると見ている。
同社でもメガ割とインナービューティー商品の相性は非常に高いと見ており、特に商品の特性上、継続して摂取する場合が多いことから、セールでのまとめ買いの対象になりやすく、あわせて、ポイント還元セールの「メガポ」においても、毎月開催の利点を生かして、ポイント還元によるリピート購入の場として、拡販が図れているようだ。
加えて、メガ割に関しては、リアルと連動した内容としても、セール時期と合わせたポップアップイベントを同社のライブスタジオでも開催できる。来場者は抽選となるが、開催当日は多くの集客があり、サンプルを試せる機会からその後の継続購入に大きく寄与しているようだ。「(リアルとネットの)様々な形で露出できることで、これまで以上に目につきやすくなる。いわゆる店頭やモールでただ並べたりするような見せ方とは違って、Z世代など特定のターゲットに向けて一緒に商品を提案できるということが最大の強み」(岡﨑カテゴリーリーダー)とした。
そのほか、現在は出店者への販売サポートについても力を入れており、今年はまず韓国で営業スタッフを増員。10月には日本でも増員する予定で、商品の企画開発やセールでの打ち出し方、ライブショッピングでの販売方法などについて随時相談を受け付ける体制を拡充している。
今後も、インナービューティーの新規出店者の開拓強化を図り、新たな成長カテゴリーの一つとして様々な施策を進めていく考え。
責任者に聞く
強化の経緯と今後
「内面の美容に高いニーズ」
同社がインナービューティーを強化している背景やその方針などについて、Qoo10で健康食品のカテゴリーマネージャーを務めている岡﨑萌依氏に聞いた。
◇
――インナービューティーの定義について。
「以前からインナーケアという健康や美容を対象とした大きなジャンルがあるが、こちらは定義としてはかなり広い。例えば、体調の改善や健康的な体づくり、ストレスケアといったものであったりして、対象となる商材も本当に多くのものが含まれていると思う。
当社で言うところのインナービューティーとしては、健食の中でも美容目的に特化していて、比較的若い世代に向けたもの。例えば韓国ではこうした市場が非常に旺盛で、欧米でも、元々、サプリメント自体が日本よりも普及していることがあり、美容目的で摂取されるケースは多い」
――ニーズの高さとしては。
「顧客からのレビューやSNSを見る限り、外側を美しくするだけでなく、内側からも綺麗になりたいと考えるニーズは高いと感じている。特にコロナが明けてから、最初は(外出の際の)コスメへの需要が高まり、そこから徐々に内面への美しさへと興味関心が移っていった部分があるかと思う。元々、Qoo10はビューティーカテゴリーが強く、それらの商材を求める顧客がたくさん集まるため、インナービューティーに対して最初の購入のきっかけの場になりやすいと思い、着目していった。
そのほかにも大きなところでは、『AMOREPACIFIC(アモーレパシフィック)』などの大手のコスメブランドが、最近になってインナービューティー商品の開発を強化し始めたという市場の流れもある。インナーケアのように、幅広い層に向けた健食とはまた違い、ビューティーに特化した内容ということで、特にZ世代を中心に大きな支持を得ていくと思う」
――日本ではまだ、そこまでインナービューティーという言葉が定着していない面もあるが。
「大手や中小のブランドを含めて、実はインナービューティーの商品であっても、自社でそれを認識されていなかったり、もしかしたらブランド側の方で『これは年配向けの商品』と決めつけてしまっているケースも少なからずあるのでは。また、美容をサポートしている商品として打ち出せるような売り場に出会えていない面もあると思う。そうした商品を私たちの方でピックアップして、求めている顧客に届けることができれば。
まだ知名度が低かったり、育成途中のブランドであってもQoo10内の様々な施策を通じて、購入するきっかけを作ってもらいたい。多くのブランドと一緒にこの市場を作っていく」
仮想モールの「Qoo10」を運営しているイーベイジャパンでは、今期からの成長戦略の一つとして「インナービューティー」商品の販売を強化している。昨年は同カテゴリーの流通総額が前年比で4割超となるなど、成長性の高い市場として着目。ターゲットとなる若年女性層を多数抱えている売り場特性を活かし、大規模セールやライブコマース、共同での商品企画開発など、様々な打ち手を通じて拡販を図っていく考え。
24年から健食専門チームを強化
健食の市場規模は年々拡大しており、通販での流通額は5000億円程度だという調査結果もある。近年はコロナ禍でのプロテインブームを皮切りに、健食全体が安定した売り上げを維持している。海外では、大手のコスメ企業などがダイエットに特化したサプリメントを相次いで投入し、若い女性を中心にトレンドとなっている背景がある。
ここで紹介された4ブランドについては、同社の自社スタジオから配信しているライブコマースにも参加することができる。ライブの中では、同社が提携するインフルエンサーをMCとして起用することも可能で、ビューティー分野に造詣が深く、知見を持ったインフルエンサーがそれぞれの商品について詳しく紹介している。配信動画はアーカイブでも残り、アプリから視聴できるようになっている。
そうした中、同社では24年1月に、健康食品カテゴリーをメインとする専門チームを開設。以前は食品カテゴリーの中の一つという位置付けだったが、専門性もあって、成長性の高い注目分野であることから、健食だけを切り出して強化していく流れとなった。
加えて、Qoo10では毎年流通総額が2桁成長を続けているが、その中でも健食カテゴリーにおけるインナービューティーの商品については、24年の流通総額が前年比で39.7%増と大幅に伸長。今後の大きな柱の一つとなることを期待している。
同社でインナービューティー商材として位置付けているのは、美白をはじめ、肌の調子を補ったり、健康的な体型の維持など身体の内面から美容・健康に働きかけるもの。具体的には女性の美容にフォーカスした飲料やサプリメント、プロテインなどがあり、食事だけでは足りないような部分で、美容や健康のために補助的に摂取できるものだという。カプセルや水に溶かして飲む粉末のものなど様々ある。「こちらで明確に商材の切り分けを行っているわけではないが、若い女性顧客が多いため、彼女たちが『内側から採ることで綺麗になる』と捉えているような商材と考えている」(岡﨑萌依カテゴリーリーダー)とする。
毎週入れ替えで新規商品を紹介
ターゲット層としては美容に関心の高い10代~20代後半などの女性が中心。販売拡大に向けて、まずは8月より、モール内にインナービューティー専門の特集ページを常設で立ち上げた。
特集の中では、常時50~60商品を毎週入れ替えながら掲載するほか、取り扱いブランドの個別紹介も行っており、20ブランド程度を月1回ごとに入れ替えながら掲載している。
出店者にとっては、週ごとにピックアップされる機会があることで、商品を訴求したいタイミングが選べることにもなり、あわせて、特集ページ以外にもプロモーションメニューが豊富にある点が他のモールとの差別化の特徴になっているとする。
また、インナービューティー商材の場合は、アパレルやコスメ商品などと違って、商品名や外装だけでは内容まで理解することが難しい面もあるため、特集での見せ方には様々な配慮をしている。一例としてはテーマ設定による見せ方があり、「ボディメイク」や「体の調子を整える」など、商品特性を想起しやすい言葉で商品を切り出して特集。ほかにも、「ビタミンC」や「レチノール」など個別の成分から検索できるような導線も設けることで、商品を探しやすくしているとした。
さらに、今年4月からは、モール内での新規出店ブランドを紹介する「Mega Debut」の企画を始めており、毎週火曜にリレー形式で新しいビューティー関連ブランドを4つ紹介する中で、インナービューティーについても取り上げている。同企画では、30%割引クーポンの特典を設けて、初回購入のハードルを下げており、まだ認知が限られているような新規ブランドでも商品を気軽に体験できるようにしている。
先行事例として、韓国のブランドなどでは、MCを迎えて、実際にサプリをその場で飲んで味や飲みやすさなど商品ページだけでは表現できないような内容を実演で紹介。ライブ中の限定割引や特別セット組みなども用意することで想定以上の販売と認知拡大につながったケースも出ているようだ。
なお、各ブランドと同社が共同企画して同モール内のみで販売する商品企画として「Qoo10 ONLY」を以前から展開している。インナービューティーについても、この企画を通じて限定商品を作るケースが増えており、割り引きのセット組みや先行販売のフレーバー、お試し特典付きのセットなどを展開。Qoo10 ONLYを集めた特集ページもあるため、そこでの商品販売もできるほか、同社の大規模セールである「メガ割」においては、Qoo10 ONLYが上位の人気商品にランクインされることが多いため、効果的に売り上げを伸ばせると見ている。
同社でもメガ割とインナービューティー商品の相性は非常に高いと見ており、特に商品の特性上、継続して摂取する場合が多いことから、セールでのまとめ買いの対象になりやすく、あわせて、ポイント還元セールの「メガポ」においても、毎月開催の利点を生かして、ポイント還元によるリピート購入の場として、拡販が図れているようだ。
加えて、メガ割に関しては、リアルと連動した内容としても、セール時期と合わせたポップアップイベントを同社のライブスタジオでも開催できる。来場者は抽選となるが、開催当日は多くの集客があり、サンプルを試せる機会からその後の継続購入に大きく寄与しているようだ。「(リアルとネットの)様々な形で露出できることで、これまで以上に目につきやすくなる。いわゆる店頭やモールでただ並べたりするような見せ方とは違って、Z世代など特定のターゲットに向けて一緒に商品を提案できるということが最大の強み」(岡﨑カテゴリーリーダー)とした。
そのほか、現在は出店者への販売サポートについても力を入れており、今年はまず韓国で営業スタッフを増員。10月には日本でも増員する予定で、商品の企画開発やセールでの打ち出し方、ライブショッピングでの販売方法などについて随時相談を受け付ける体制を拡充している。
今後も、インナービューティーの新規出店者の開拓強化を図り、新たな成長カテゴリーの一つとして様々な施策を進めていく考え。
責任者に聞く
強化の経緯と今後
「内面の美容に高いニーズ」
◇
――インナービューティーの定義について。
「以前からインナーケアという健康や美容を対象とした大きなジャンルがあるが、こちらは定義としてはかなり広い。例えば、体調の改善や健康的な体づくり、ストレスケアといったものであったりして、対象となる商材も本当に多くのものが含まれていると思う。
当社で言うところのインナービューティーとしては、健食の中でも美容目的に特化していて、比較的若い世代に向けたもの。例えば韓国ではこうした市場が非常に旺盛で、欧米でも、元々、サプリメント自体が日本よりも普及していることがあり、美容目的で摂取されるケースは多い」
――ニーズの高さとしては。
「顧客からのレビューやSNSを見る限り、外側を美しくするだけでなく、内側からも綺麗になりたいと考えるニーズは高いと感じている。特にコロナが明けてから、最初は(外出の際の)コスメへの需要が高まり、そこから徐々に内面への美しさへと興味関心が移っていった部分があるかと思う。元々、Qoo10はビューティーカテゴリーが強く、それらの商材を求める顧客がたくさん集まるため、インナービューティーに対して最初の購入のきっかけの場になりやすいと思い、着目していった。
そのほかにも大きなところでは、『AMOREPACIFIC(アモーレパシフィック)』などの大手のコスメブランドが、最近になってインナービューティー商品の開発を強化し始めたという市場の流れもある。インナーケアのように、幅広い層に向けた健食とはまた違い、ビューティーに特化した内容ということで、特にZ世代を中心に大きな支持を得ていくと思う」
――日本ではまだ、そこまでインナービューティーという言葉が定着していない面もあるが。
「大手や中小のブランドを含めて、実はインナービューティーの商品であっても、自社でそれを認識されていなかったり、もしかしたらブランド側の方で『これは年配向けの商品』と決めつけてしまっているケースも少なからずあるのでは。また、美容をサポートしている商品として打ち出せるような売り場に出会えていない面もあると思う。そうした商品を私たちの方でピックアップして、求めている顧客に届けることができれば。
まだ知名度が低かったり、育成途中のブランドであってもQoo10内の様々な施策を通じて、購入するきっかけを作ってもらいたい。多くのブランドと一緒にこの市場を作っていく」