グリーンスプーンが冷凍弁当市場開拓へ 新規顧客、男性と接点強化

2025年12月19日 13:28

2025年12月19日 13:28

 GreenSpoon(=グリーンスプーン)が、冷凍弁当の展開を始めた。スムージーやスープなど多様な食品を取り揃え、購入数や内容を選べるサブスクリプションモデルで成長する。新たなカテゴリの導入で、男性層を含めた新規顧客との接点を築く。冷凍宅配食の市場はスタートアップの参入も多く、食品単体での差別化も図りにくい。ブランドスイッチも多い。顧客定着には「副菜(野菜)の課題が大きい」(同社)とみる。解凍の際にでる水分が食味を損なうためだ。同社は、野菜の食味にこだわり、選定から加工まで一連のプロセスの独自の知見に強みに冷凍弁当で市場開拓を進める。


1219154911_6944f567a4b41.jpg 12月19日に発売した「DELI BENTO」は、メイン(15種)、サイド(5種)、サラダ(1種)の3種類のメニューで構成する。すべて管理栄養士が栄養バランス等を監修する。和洋中エスニック等のジャンルから、生活習慣やライフスタイル、好みに合わせて商品を選択できる。


 これまで、スムージー、スープ、メインディッシュ(主菜)、サラダ(副菜)、ライス&パスタの5シリーズを展開してきた。食べ応えのある食材、レンジ調理の手軽さを特徴にする。


 現在は、30〜50代が中心顧客層。スムージーやスープは20代後半から30代女性の支持がある。メインディッシュの取扱い以降、幅広い顧客の獲得が進んでいる。冷凍弁当では、買い回りが多い市場特性を活かし、新規顧客との接点、休眠顧客の掘り起こしを図る。


 男性層との接点も強化する。現在の利用比率は女性が約8割。既存シリーズは、パウチから皿に移すなどレンジ調理の手間、パッケージのデザイン、健康志向など食への関心が高い女性層の利用が多い。


 一方で、冷凍弁当は「男性層の利用も多い」(黒﨑社長)とみる。より簡便な調理、男性にも抵抗感のないシンプルなデザインを意識することで男性にもアプローチする。


 発売を前に都内で事前予約制、参加無料の体験型イベントを開催した。事前予約は2時間で満席、キャンセル待ちが3200人を超える反響があった。来場者は1200人を超えた。


 冷凍宅食弁当市場の23年度の国内市場は325億円あるとされる。26年度は23年度比38%増の450億円、29年度には540億円まで拡大すると予測される。


 市場は、コロナ禍、リモートワークの定着で伸びた。健康意識の高まり、冷凍技術の発展も追い風になった。コンビニやスーパーと競合するが、1食7〜800円程度という身近さからコロナ後も生活習慣として定着している。



〈新社長に聞く〉

グリーンスプーン 黒﨑 廉 社長

野菜の知見強みに展開、組織再編で意思決定加速


1219155041_6944f5c11894f.jpg グリーンスプーンは11月1日付で、取締役COOの黒﨑廉氏が代表取締役社長に就任した。創業者の田邊友則前社長は代表取締役会長に就く。黒﨑社長に今後の成長戦略を聞いた。


 ——就任の経緯は。


 「企業の持続性の課題の一つが組織だった。スタートアップで創業者、コアメンバーの意見が強い。トップダウン構造からの転換、社員が主体的に組織や事業に向き合える環境整備が必要だった。売上・利益、クリエイティブなど各領域の責任者に一定の権限を与え意思決定を加速する」


 ——田邊会長との役割分担は。


 「私が事業戦略、現場に責任を持ち、田邊は全体を俯瞰した立場から親会社(江﨑グリコ)との連携、私の相談相手になってくれている」


 ——前期(25年12月期)実績は。


 「増収増益で着地した」


 ——来期の成長目標は。


 「これまで同様、20〜30%の成長率は目指したい」


 ——12月から冷凍弁当の展開を始めた。市場では後発になる。


 「既存シリーズのスープはダイエット、ごはんはより健康志向の関心層が購入する。冷凍弁当の市場は飲食店に似ているが〝これ一筋〟というより色々なものを試したい層が多い。既存の冷凍弁当ユーザーを含め新たな価値を提供できる」


 ——収益性は。


 「1回の配送個数、商品カテゴリで価格は変わるが他のカテゴリに加えて収益性が高いわけではない」


 ——競合の多い市場でどう差別化する。


 「プロダクトベースでは各社、低カロリーなど機能性、シェフ監修など権威性で差別化している。当社の強みは2つ。一つはサービス。スムージーやスープ、惣菜など多様な選択肢を用意し自由に選択できる。もう一つは野菜のおいしさ、食べたくなる気持ちをつくれるかに向き合ってきた。一般的にOEMが保有する素材から選定するが、自ら生産者を探し、工場に持ち込み適否を見極め独自の知見を深めてきた。野菜は原産地、規格で冷凍時の食味が異なる」


 ——一食分の野菜量など基準は設けているのか。


 「管理栄養士の監修のため当然、栄養価は考慮している。ただ、特定の栄養を極端に抑えているといった見せ方はあまりしないようにしようにしている。管理栄養士監修というだけで十分な安心感があり、市場で1グラムの多寡まで気にされているのは特定のターゲットになる」


 ——冷食通販の市場では、疾患や生活習慣病のケアで訴求する商品も増えてきている。


 「現時点で検討していないが可能性はある。糖質配慮、野菜の食べやすさなどメニューの問題になるが、まずはより幅広い層の認知を獲得していく」


 ——冷凍弁当では男性層の開拓も狙う。


 「現状は約2割だが半数程度に引き上げたい。これまでの商品はひと手間必要だが、より簡便でデザインもシンプルにしている」


 ——食品のサブスクリプションにおける継続率向上の取り組みは。


 「重要なのはおいしさだが嗜好に左右される。ユーザーは味に最も不安がある。これをどう払しょくできるかが課題。飲食店で一番上にお勧めするメニューを頼む人が多いように、ハンバーグやチキンなどおいしいと感じやすいものを接点にする工夫は行っている。解約・休止が多いタイミングでグッズや異なるメニューの選択肢、新メニューを提案して継続につなげている」


 ——江﨑グリコと商品のコラボレーションを行っている。商品以外の協業は。


 「原料の調達ではすでにある。製造面のも実現していないが協議はしている」

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