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医薬品ネット販売規制訴訟  控訴審結審、今夏判決へ

2011年 5月12日 10:17

国の"論点はぐらかし"判断焦点に

省令で医薬品ネット販売を規制するのは違憲などとし、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取り当該省令の取り消しや医薬品ネット販売を行う権利の確認などを求めていた行政訴訟の控訴審が4月28日に結審した。国側の論点すり替えに翻弄され、原告全面敗訴となった1審判決に対し、控訴審では高裁側が提示した論点に基づき双方の主張を整理するよう指示。だが、国側は依然、論点をはぐらかした回答を続けているようだ。判決は、今夏をメドに出される見込みだが、高裁が国側の主張のごまかしをどう判断するかが焦点になる。
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1審では、医薬品ネット販売を規制する明確な理由がないとして、規制の矛盾を突く戦略を採ったケンコーコム等の原告側に対し、被告の国側は原告側の主張への回答を巧みにはぐらかし、対面販売とネット販売の優劣論を展開するといった形で進展。結局、裁判所側は被告側の優劣論を重んじ、ネット販売は対面販売に劣ると結論付け、原告側全面敗訴の判決を下した。

 ケンコーコム等は、この1審判決を不服として控訴したわけだが、控訴審では、昨年12月の第2回期日で高裁側が対面とネットの優劣論に終始した1審の方向性を修正。改正薬事法の施行に伴い、従来認められていた医薬品ネット販売が禁止される時系列的な流れを踏まえ、改正薬事法施行前後の問題点を比較し、医薬品ネット販売規制の合理性を検討する方針を打ち出していた。

 これに基づき高裁側が提示した釈明事項は、(1)従来のネット販売で情報がうまく伝えられなかったのか(2)それにより副作用の危険性がどの程度あったのか(3)仮に副作用の危険性があるとすれば、どのような防止手段があるのか(4)このような全面規制でいいのか、といったもの。控訴人(ケンコーコム等)、被控訴人(国)双方に、釈明事項に基づき主張を整理した回答書の提出を求めていた。

 高裁が改めて論点を提示したことを受け、被控訴人の国側も従来のようなはぐらかしは通じなくなったはずだが、今年2月に行われた第3回期日で被控訴人が提出した回答書は従来とほぼ変わらないごまかしに終始。双方の主張の概要は別表の通りだが、被控訴人側の回答は、高裁が提示した論点や控訴人の主張にへのまともな回答や反論がなく、中には回答そのものがない事項もあるという状況。このため、高裁側は釈明の趣旨に基づく主張の整理を双方に要求していた。

 4月28日の第4回期日では、双方から準備書面の提出があり、控訴人側は、規制仕分けでの大塚耕平厚労副大臣の問題発言を盛り込む書面と、内閣法制局の審査をごまかすための戦略が採られたことを示す証拠文献を盛り込む書面を提出。三輪和雄裁判長は、双方の主張に食い違いがあるとの見方を示しながらも、控訴人側が早期の判決を望んでいることを踏まえ、第4回期日での結審を宣言した。また、判決期日については、計画停電に伴い使用できる法廷が決められないことから、追って通知するとしたが、夏休み前を目標に判決を出したい考えだ。

 裁判を終え、会見に臨んだケンコーコムの後藤代表は、1審に続き控訴審でも高裁が提示した論点をはぐらかす国側の態度に「怒りすら感じる」と発言。「高裁には真実を見極め、判決を出してもらいたい」とした。


後藤玄利ケンコーコム代表、原子力行政にデジャブー
"村"をつくり利益を守る構図



後藤玄利ケンコーコム代表は、控訴審第4回期日終了後の会見で、次のような所感を述べた(以下、発言要旨)。

 1審敗訴は、(地裁が)官僚の無謬性を盲目的に信じたためだと思う。1審に続き高裁が示した論点をはぐらかす国の態度には怒りすら感じる。

 震災による原発事故を巡る原子力行政の問題を見ていると、デジャブーのようなものを感じる。原子力では業界と国、専門家が"原子力村"を作り、内輪の利益を守るために国民をないがしろにしているが、一般用医薬品でも同じことが起きている。"薬剤師村"の利益を守るために、ネット販売を危険とする理由がないのではないかという主張を切り捨て、対面は安全だと屁理屈をこねている。

 先の規制仕分けでも、医薬品ネット販売規制を見直すべきとの結果が出た。高裁には真実を見極め、判決を出してもらいたい。



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