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検証・悠香の自主回収⑤ 品質より原価優先か?

2011年10月 6日 08:30

「グルパール」、価格は他社の4分の1

品質保証で重要な要素となる原料の安全性。これに対する悠香(本社・福岡県大野城市、中山慶一郎社長)の関心はどの程度のものか。この点、悠香が自主回収に対して現状「メディア対応を控える」としているため、本紙が6月に取材した時点で得られた"製造販売元として責任を負うようになり日が浅かった"とのコメントから想像するほかない。ただ「茶のしずく石けん」に使われた加水分解コムギ末「グルパール19S」のルーツを探るとその関心の程度がどのようなものだったか、一端が垣間見えてくる。


「グルパール19S」が、片山化学工業研究所(本社・大阪市東淀川区、片山博彦社長)の製造した原料であることは前回説明した。では、片山化学とはいったいどのような会社だったのか。
 HPによると、片山化学は1908年、医薬品製造を行う会社として創業。現在の主たる事業は、ボイラー用水処理剤や排水処理剤など環境保全を目的とした各種製品の製造・販売となっている。
 化粧品原料に着手したのは十数年前。ただ、取扱品目は「グルパール19S」のみ。同社で新規事業の開発を担う開発事業グループの担当者は、コムギ末に着目した理由を「広く使われている原料であり、厚生労働省に認可されているものであったため」と説明している。だが、いまだ新規事業の位置づけで、化粧品業界に身を置く関係者の多くがその存在を知らない。

 フェニックス(同・奈良県御所市、中野裕司社長)に供給を始めたのは98年11月。97年に代理店を通じてフェニックスに紹介し、石けんに配合した場合の特徴を見出されたという。

 だが、今回の回収に際し、原料の安全性がクローズアップされた際も、「石けんの用途としての知見は門外漢なので島根大学医学部にお願いしている。原料の性質も今年3月に同大から原料提供を求められ、調べた結果分かったこと。解明に役立ててほしいと提供したので島根大に聞いた方がいいかと思う」(片山化学)としており、自社での安全性確認に限界があったことを認めている。

 さらには「(フェニックス社への原料供給は)昨年8月4日の出荷を最後に終了しております」と、悠香が処方変更に踏み切ったと同時に化粧品原料事業からも撤退している。

 確かに片山化学が「グルパール19S」を扱い始めた当時はまだ国の認可に基づき原料が扱われており、全成分表示の導入により企業責任が重くなる01年より前になる。片山化学は厚労省の認可原料であることを安全性の拠り所としており、悠香も国が認可した原料である点は強調していた。

 また、コムギ末でアレルギーが発症したのは新しい知見でもある。

 ただ、時代の変遷や規制緩和、消費者意識の変化と共に企業責任は日々変化している。前段で示した事情を踏まえると、片山化学は化粧品原料を生業とし、これに精通する事業者とは言い難い。

 ある化粧品OEM会社の営業担当者は、「原料の価格はあってないようなもの。取引量や企業間の関係性でも異なる」との前提を踏まえつつ、自社で「グルパール19S」を扱った場合の価格をキロあたり約5000円(入目10キログラム)と説明する。同じ原料メーカーである成和化成のコムギ末「プロモイスWG―SP」は同1万4500円(同5キログラム)、一丸ファルコスの同「グルディアンAGP」は同2万2500円(同1キログラム)という。入目とは最低限必要な購入量のこと。片山化学の原料は、入目こそ大きいが他社の3~4分の1の価格であり、製造量が多ければ製品原価が抑えられる計算になる。

 別の健食のOEM会社の営業担当者は、「茶のしずく」の製品原価について「相当コストを安くするよう製造委託先(注・フェニックス)に働きかけていたと聞いている。原価は100円以下だったのでは」と語っている。あながち当てずっぽうとも思えないのは、悠香の内部事情に通じる関係者も「計算すると30~40円くらい」と推計していることだ。価格のみで品質を問うことはできないが、前段で示してきた背景を踏まえると、悠香はマーケティングの費用対効果や収益性を追う余り、品質保証への関心が薄かったとは言えないだろうか。

 フェニックスに品質管理体制や自主回収を巡る経緯を聞いた。

 薬事法上義務付けられている品質管理はどう行われていたか。

 「(自主回収への)対応は協議の上、悠香に一元化することになっているので回答ができない」

 フェニックスの品質管理体制については悠香では答えられない面もある。

 「基本的には『製造販売業』の業許可を取得しているので...。アレルギーの可能性を知ったのは悠香より後になるが、それ以外の質問は仙台で起きた訴訟(注・本紙1336号既報)で明らかになってくると思う」

 悠香にも再度、回収の経緯を聞いたが「仙台で訴訟が提起され、これらの対応にも関係することになるので、(略)連絡を控えさせて頂きたい」と回答があった。
(つづく)

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