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現代書林の薬事法違反事件、「新刊本」なら問題、書店発注の「既刊本」で無罪に

2013年 5月23日 11:34

健康食品通販のキトサンコーワ社の薬事法違反を巡り、書籍を出版した出版社の責任が問われることになった現代書林(本社・東京都新宿区、坂本桂一社長)の薬事法違反事件。5月10日、横浜地裁は、現代書林と元社長ら2人に対し、無罪判決を言い渡した。だが、その内容は"バイブル商法"について、改めて問題提起するものだった。

 検察による今回の刑事裁判の起訴事実は、「(健食通販のキトサンコーワ社社長と)共謀し、現代書林の元社長らが書店の販売員を介して書籍を陳列、販売したこと」が薬事法の「未承認医薬品の広告の禁止」にあたるというものだった。

 「書店を介して」という嫌疑は、刑法上「間接正犯」と呼ばれる。例えば、全く犯罪の事情を知らないような子供を利用して罪を犯したり、ドメスティックバイオレンスなど他人を支配した状態で犯罪に利用するなど「他人を道具のように使う」犯罪行為のことだ。今回のケースでは、現在書林が「書店の販売員を介して広告した」という意味合いになる。

 これについて、横浜地裁では書籍が「新刊本」であるか「既刊本」であるかによって判断が分かれるとした。

 書籍の書店流通は「出版社↓取次店↓書店」といった流れで行われる。新刊本の場合、出版社が取次店に配本を依頼。各書店がそれぞれの判断で書籍を陳列、販売する。一方、既刊本の場合、書店が取次店、もしくは出版社に書籍を発注して書店に陳列、販売することになる。

 これを今回のケースにあてはめると、起訴事実にある陳列、販売された書籍はすべて書店が品ぞろえの充実のために発注したと推察される「既刊本」だった。事件当時、絶版処理されていたわけではないため、陳列、販売される可能性は残るが、地裁では「出版から7年以上が経過しており、陳列、販売される可能性がある程度では(取次店や書店販売員を)道具として利用したとは言えず、『間接正犯』成立の蓋然性は低い」と判断した。

 だが、新刊本については違う判断を下している。

 新刊本の場合、「出版され、書店で販売される蓋然性は高く、被告人(現代書林など)が陳列、販売し、広告を自ら行ったということにさほど違和感はない」(横浜地裁)として「間接正犯」が成立するとした。


 さらに「間接正犯」成立の有無と共に争点となっていた、(1)キトサンコーワ(商品)が医薬品に該当するか否か、(2)関連本の書店販売りが薬事法上の「広告」にあたるかという部分について。地裁では、「キトサンコーワに効能の記載はなく、むしろ健康食品と書いてあり、商品自体は医薬品とは認められない」とした。

 しかし、「出版は、現代書林と(健食通販を行う)キトサンコーワ社がタイアップして行われたものであり、書店に陳列されれば一般の方に認知される状態にある。キトサンコーワ(=商品)の販売促進を目的としているのは明らかで、書店に陳列、販売されれば広告にあたる」と断じてもいる。判決の最後に裁判長は「無罪判決ではあるが問題があったのは事実なのでその点は考えてほしい」とも言い添えており、状況が違えば判断が違っていた可能性を示唆していた。

 今後、地裁ではキトサンコーワ社の薬事法違反事件の判決も控えている。今回の判決は、健食通販事業者とその周辺事業者に、薬事法リスクを再認識させるものとなった。
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