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「小規模取り込みに注力」【NEの比護則良社長に聞く Hameeから分社化の狙いは】 コミュニティー作り知識伝授

2022年 7月28日 18:30

 Hamee(=ハミィ)は8月1日付で、ECプラットフォーム「ネクストエンジン」を手掛ける「プラットフォーム事業」を分社化した。新設した「NE(エヌイー)株式会社」の代表取締役社長には、比護則良氏が就任。比護氏はスタートアップ企業のエンジニアとしてECシステムの立ち上げを経験しており、2014年Hameeに入社。20年から取締役を務めている。比護氏に分社化の狙いや今後の戦略などを聞いた。

 









 ――なぜこのタイミングで分社化したのか。

 「これまで、プラットフォーム事業はコマース事業を円滑に運用させることを最優先としてきた。HameeがECを手掛ける中で出てきた課題を解決するために作ったECシステムを『ネクストエンジン』として、外部にも提供するようになり、たくさんの企業が使うようになった。ただ、現在ネクストエンジンは5400社以上が利用しており、『HameeのEC事業を運用するためのシステム』という要素が薄れてきた。一方、ECや卸販売のコマース事業に関しても、オリジナルのスマホアクセサリーブランド『iFace』が大ヒットしたこともあり、小売りというよりもメーカー色が強まってきた」

 「ECシステムという無形のサービスを提供するビジネスモデルと、有形の商品を開発するビジネスモデルとでは、やはり価値観の違いが生まれる。これまでは事業間のシナジーを最大化することで成長してきたわけだが、現状を考えると分社化する方が合理的であり、両事業ともにもっと成長できるのではないかと判断した」

 ――Hameeが6月に公表した中期経営計画では、小規模事業者向けにサービスを拡張・強化することを明らかにしている。狙いは。

 「近年はコロナ禍もあり、ECに参入する小規模事業者が増大している。ネクストエンジンは仮想モールでの多店舗展開が簡単にできることが強みだが、比較的規模が大きいEC事業者でなければ多店舗展開は難しい。ECを始めたばかりの事業者にとって重要なのは、面を取りに行くことではなく、売り上げを増やすこと。ECに関するノウハウやナレッジ(知識)を学びたいという事業者は多い」

 ――多店舗展開への対応という強みを消すわけではない。

 「そうだ。小規模事業者もずっと売り上げが小さいわけではなく、成長したユーザーにネクストエンジンの強みである『多店舗展開』をストレス無く提供していくことができれば、コアユーザーの拡大につながるはずだ」

 ――具体的な支援策は。

 「まず、小規模事業者にネクストエンジンのアカウントを作成してもらい、そうした事業者も参加できるコミュニティーを構築していく。少子化が進む日本は、今後消費者の購買力が低下していくため、集客コストがかさむプラットフォーマーからの締め付けは厳しくなるはずだ。EC事業者はマーケットで戦う力をより求められるが、製造から配送までの一連の流れの中で、中間にあたる部分を最適化していく必要がある。これを当社では『守りのDX』と呼んでいるわけだが、多くのEC事業者は、ECという販売チャネルに最適化されたサプライチェーンマネジメント(SCM)への意識が薄い。当社としては、規模の大きなEC事業者をユーザーとして抱えているからこそ、EC発展のためにノウハウやナレッジを共有できる仕組み、いわば『分散型自立組織』を作ることが務めだと思っている。これがうまくいけば、EC事業者のSCMの改善につながるのではないか」

 「もちろん、プラットフォーマーとは共存共栄しなければならないが、一方で外圧から身を守ることも大事だ。今のままではEC事業者はさらに薄利化が進み、事業が続けられなくなる。まだまだ絵に描いた餅ではあるが、適切な知識を普及させるためのコミュニティーを作りたい」


 ――コミュニティーはどのように活性化させていくのか。初心者からの質問に答えたユーザーへのインセンティブなどはあるのか。

 「まずはネクストエンジンにエンゲージメントが高いユーザーに参画してもらいたい。貢献度の大きいユーザーには、ネクストエンジンの機能改修に積極的に関与できるような仕組みも考えているが、メリット・デメリットで動く人たちを優遇するとコミュニティーが成立しないので、そういうノイズをなるべく持ち込まないように運用していきたい。また、Hameeではネクストエンジンのユーザー感謝祭として、オンラインイベント『青祭』を開催しているが、こちらとも連携する」

 ――NEでは、小規模事業者に対してどのようなサポートをしていくのか。

 「希望する事業者に対してはサイトを制作するとともに、子会社であるHameeコンサルティングのコンサルタントがコンサルティング業務を行う。事業拡大フェイズに入った際には、ネクストエンジンを使ってもらうほか、運営代行サービスも提供する」

 ――最近は小規模事業者からの問い合わせが増えているのか。

 「多くなっている。当社の分析では、大手仮想モールでも7割強は大きな流通を作れておらず、今後母集団が増えたとしても、この構図は大きく変わらないだろう。ただ、当社では小規模事業者を囲い込み、「売れる店舗」の割合を少しでも増やすことで、顧客基盤をしっかりと作ることが重要だと思っている。成長途上の事業者に価値を提供することができれば、当社がEC支援事業の世界で勝ち続けることができるのではないか。好循環を生み出すビジネスモデルを構築していきたい」

 ――今後の展開は。

 「ネクストエンジンはまだまだ不十分なプラットフォームだと思っている。『効率化・自動化の先にある体験を追求したい』という話を以前からしているが、EC業界全体の成長や拡大をリードできるようなサービスにしていきたい」
 
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