リスク管理を再確認せよ

2011年11月30日 16:32

2011年11月30日 16:32

2011年もあと1カ月を残すのみとなった。今年は3月に起きた東日本大震災と、それに伴う福島第一原発事故の影響を大きく受けた年といえよう。

 通販業界のこの1年を振り返ると、震災関連に並ぶ大きなニュースといえるのが、悠香の「茶のしずく石けん」による集団小麦アレルギー発症ではないか。ここに来て、大手マスコミでも連日のように報道されており、悠香だけではなく、通販業界全体の信用に関わりかねない事態となっている。さらには、来春にも各県で結成された被害者弁護団が集団訴訟の準備を進めていることも分かっており、問題は長引きそうだ。

 本紙でも指摘してきたように、今回の事件がここまで大きくなった背景には、悠香のリスク軽視と被害者への対応のまずさがある。「加水分解コムギ末」がアレルギー発症の可能性となっている事実を、09年末から10年初頭にかけて医師などから指摘されていたにも関わらず、何の対策も打ってこなかった。また、顧客に対しては少額の「お見舞い金」で解決しようとしたほか、告知はダイレクトメールや電話によるものに終始し、謝罪会見やテレビCMでの周知などは一切行っていない。

 11月には、今回の問題への取り組みについて説明した文書をサイトで発表。「被害者に対して誠心誠意対応する」とは述べているものの、「全く新しい症例であり、弊社としても大変な驚き」などの言い訳に終始。被害者に対する謝罪の姿勢はまったく見られない。訴訟を考慮に入れたものではあるのだろうが、実際に小麦アレルギーに苦しむ被害者が、この文書を読んだときにどう感じるのか、という視点がまったく抜け落ちているのではないか。

 今回の事件は、同社が消費者からの信頼を失うだけにとどまるものではない。通販全体への不信につながるものだ。「きちんと治験はされているのか」「よく知らないメーカーでは何かあっても補償もままならないのでは」という疑念が湧くのは無理からぬことといえる。業種は異なるものの、例えばパナソニックは、かつて死亡事故を起こしたFF式石油暖房機の回収を呼びかけるCMをこの冬も放映している。こうした姿勢が消費者にどんな印象を与えるか、悠香は考えるべきだ。このままでは、通販各社が築いてきたブランドを壊すことにもなりかねない。

 これまで右肩上がりの急成長を続けてきた悠香。だが、そのおごりからリスク管理に甘さが出たとみることもできるのではないか。確かに、リスク対策は少なくない費用がかかるだけに、創業から間もない同社にとっては目を向けにくい部分だったのかもしれない。しかし、消費者からの信頼を失うのは一瞬のこと。他の通販企業は同じ轍(てつ)を踏まないようにしなければならない。

 リスク管理は、製品の安全対策に限った話ではない。例えば地震などの大災害でも事業を継続できるように備えなければならないし、通販サイトのセキュリティー対策も重要だ。常に最悪の事態を想定し、対策を練る。2011年は、通販企業にとってリスク管理の重要性を再認識する1年といえるのではないか。

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