人気ショップのM&A、双方の成長につながる戦略を

2025年11月05日 17:40

2025年11月05日 17:40

 「楽天市場」などの総合ECモールで人気のショップが経営難から破産や民事再生を申請するケースが相次ぎ、同業者の関心を集めたが、ここにきてM&Aによって再建に乗り出す動きが目立ってきた。

 靴がメイン商材の通販サイト「ゼットクラフト」を運営するロイヤルは、今年5月に民事再生法の適用を申請した。楽天市場の有名店舗が他の店舗をコンサルティングする企画では同社の担当者が講師を務めたほか、楽天市場の優秀店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2023」では総合4位に入るなどの実績を持つ。しかし、並行輸入品を仕入れるため円安によるコスト増や、物流センターの不動産取得などによる借入金負担などで自力再生を断念した。

 再生支援を申し出たのは、靴とファッションの通販サイト「ロコンド」を運営するジェイドグループだ。同社はM&Aによる規模拡大策に積極的で、昨年3月には〝打倒ゾゾタウン〟のライバル関係にあったマガシークを買収し話題になった。マガシーク運営サイトはまだ成長軌道に乗っていないが、早くも次の成長に向けて動いた。

 ジェイドグループの田中社長は、ロイヤルが持つ人気スニーカーの海外仕入れ網や、利益率の高いセレクトショップ「ピースパーク」の存在、楽天市場などECモールの運営ノウハウ、4大都市をカバーする卸の販売網などを「お宝」と評価。前期の取扱高504億円から倍増となる1000億円を2030年度の目標に掲げており、売り上げ拡大だけでなく、ビジネスモデル多様化の面からもロイヤルのM&Aを決めたという。

 一方、4月に破産したファッション通販サイト「イーザッカマニアストアーズ」を運営するズーティーも「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」の常連で人気店だが、実店舗閉鎖による売り上げ減や円安に伴う仕入れ費用の上昇、コロナ融資の返済負担などから資金繰りに窮した。

 ズーティー支援に名乗りを上げたのは老舗アパレルのフジスターで、同社は昨年6月に「イーザッカ」のライバル店でもある「神戸レタス」を運営するマキシムを買収している。マキシムの業績が回復傾向にある中、競合店の取得でシナジー効果が見込めると判断。フジスターは新会社を開設し、新生「イーザッカ」を10月29日に楽天市場店を再開したばかり。

 どちらも人気店だけに、利用者にとってショップの継続や再開は喜ばしいことだ。M&A実施企業は当然ながらさまざまなムダの排除や効率運営、ノウハウの取り込みなどを行うだろうが、自社だけでなく相互に成長できる戦略を構築した上で次のM&Aに臨むべきだ。


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