景表法処分取消し、消費者庁は法運用の見直しを

2025年08月06日 16:50

2025年08月06日 16:50

 消費者庁が発出した景品表示法違反に基づく措置命令が東京地裁によって取り消された。景表法の措置命令が取り消されたのは初めてであり、極めて異例だ。違反認定を受けた企業の事業活動への影響は大きい。これを契機に、消費庁は景表法の運用を見直すべきだ。

 消費者庁は23年、forty-four(=フォーティフォー)が販売する糖質カット炊飯器で行っていた「美味しさそのまま」、「糖質45%カット」などの表示を優良誤認と認定した。企業側はこれを不服として昨年4月に提訴。東京地裁が今年7月に命令の取消しを命じた。

 裁判では、通常の炊飯器と「同様の炊き上がり」であるかが争点になっていた。東京地裁は、広告表示で通常の炊飯と調理工程が異なることを示しており、「消費者が同様の炊き上がりになると認識するとはいえない」と指摘。品質も著しく優良であると表示していないと判断した。

 法執行における問題の一つは、消費者庁が措置命令の公表にあたり触れる「あたかも認定」にあるだろう。通常、処分では、対象となった広告表示を示した上で、「あたかも〇〇かのように表示」と実際の性能と異なることを示す。

 今回、消費者庁は、「あたかも通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質が、45%カットできるかのように示す表示をしていた」と違反認定した。しかし、個人の主観により評価が異なる〝炊き上がり〟を違反認定に持ち込んだのは問題だ。統一的な評価を示すことは難しく、判決でもこの点は否定された。

 「不実証広告規制」頼みの処分の弊害も露呈した。

 規制は、企業側に広告表示の裏づけとなる根拠の提出を求めることができるものだ。しかし、運用における重大な問題は、消費者庁が根拠と認めない理由をほとんど明らかにしない点にある。なぜ根拠が否定されたのか、処分企業も第三者も知るよしがない。当然、違反認定の妥当性も評価できない。本来、根拠を否定した理由は行政の処分理由を知る機会になり、不当表示の抑止力にもなりうるものだが、運用は消費者庁の裁量に委ねられている。にもかかわらず、この規制は年間40件前後ある処分の6~7割に適用され、執行件数など行政評価につながる景表法の運用を支えているのだ。

 景表法処分を受けた企業は、消費者からの信用毀損だけでなく、媒体考査など広告展開、事業運営で重大な影響を受ける。判決は確定しておらず、控訴の可能性はある。消費者庁は、景表法の運用見直しは「検討していない」とする。しかし、運用の適正性が確保されないのは問題であり、抜本的な見直しが求められる。

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