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本紙アンケート調査 【楽天市場・送料課金の影響は?】 ② 出店者に聞く「今後の対応」「意見」
本紙アンケート調査 【楽天市場・送料課金の影響は?】 ② 出店者に聞く「今後の対応」「意見」
2013年01月17日 14:38
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2013年01月17日 14:38
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楽天が同社の仮想モール「楽天市場」に出店する企業に対し、2012年11月に導入した新たな課金制度「送料課金」に関して、楽天市場出店者に意識調査をインターネットで実施した。同アンケートの分析および解説は以下の通り。(
同アンケートの解説記事は「
本紙アンケート調査【楽天市場・送料課金の影響は?】①
」からご覧下さい
)
【複数購入時の対応は?】
問1で「送料を含めた商品価格にすることで『送料無料』とした」と回答した企業に、「1人の客が複数に購入した際の対応」を聞いてみた。
それによると「同一発送は同一運賃扱い」、「同梱送料は1個分(の送料)」というように複数商品を同梱して1個分の送料扱いに設定する方法と、「複数購入 時も値引き対応なしが基本」「送料別の商品も掲載しているので、複数の商品を購入した際は特に再計算はしない」など同梱の有無に限らずそのまま複数配送と して受注処理する場合との2つのケースに分かれた。
前者は同梱・同一配送にすることで消費者への送料負担を軽減。後者の場合は同梱・同一配送にした場合は、実際の送料との差額で店舗側の利益を生み出すことができるようになっている。
そのほかの回答としては、複数注文の際、場合によっては「一部値引きを実施する」などの店舗もあった。
商品価格上乗せ分の送料基準の見直しも
次に、商品価格に上乗せする送料の基準となる金額についても聞いてみた。
寄せられた回答を見ると「送料基準はこれまでの基準(店舗負担運賃の平均)に送料課金割合相当を乗じた額を使用」「基準の送料は1番安い地区の送料で、あ まりに遠い地区の場合のみ追加料金を加算」「運送会社に払う額プラス梱包資材代金」「上乗せ送料は全国一率税込630円」といった具合に店舗ごとにバラつ きが見られる。
一方で、商品価格に上乗せする金額の算出について「高い送料を基準とした」といった店舗のほか、「現状据え置きだが、利 益がほとんどなくなる商品もあることが分かり、全体的に見直そうと思っている」「1部の商品をのぞいて1万500円以上で送料無料にしている。しかし、こ れだとほとんど利益が出ず赤の場合もあるので、値上げを検討中」というように、上乗せ額の見直しを検討している店舗もある。
上乗せする額を増やせば店の利益になるわけだが、価格競争力を落とすことにもなるため、店舗側としては商品価格へ上乗せする送料分について試行錯誤が続くことも考えられる。
【「公取委への相談」に関心はありますか?】
「相談興味あり」は78%
問5と問6では、今回の「送料課金」と公正取引委員会に関する話題について質問した。
公取委では、2006年12月に公表した「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」において、「取引上の立場が優越して いる運営事業者が(中略)出店事業者にとって不当に不利益な手数料率の設定を行う場合には、独占禁止法上の問題(優越的地位の乱用)につながる恐れがあ る」と指摘した。
今回の送料課金が優越的地位の乱用にあたるのではないかとして、公取委に調査を依頼した店舗もある。革製品やペット用品のネット販売を手掛けるA社では、公取委の通報窓口に送料課金の問題で通報した。
問5では、公取委へ相談した店舗があることについて、関心があるかどうかを聞いた。「関心がある」と答えたのは78%にのぼった。「関心がない」は10%、「どちらともいえない」は12%となっている。
次 に、問6では問5で「関心がある」と回答した店舗に「他の出店店舗から共同での公取委への相談や告発を持ちかけられた場合、どうするか」という質問をし た。「共同で相談や告発を行う」としたのは32%。「行わない」は18%で、最も多かったのは「どちらともいえない」で50%だった。
楽天市場に出店している以上、波風を立てたくないという意識を持つ店舗は多いようだ。ある店舗は以前、本紙の取材に対し「巨大商圏から排除されるのが怖 く、楽天に文句を言うどころか公正取引委員会に告発すらできない状態だ」と答えた。アンケートの中にも「こういったアンケートや書き込みなども、楽天側に 把握されてしまうと強制退店やペナルティーを受けるという噂がある」との声もあった。
通販サイト「石けん百貨」を運営する生活と科学 社は05年11月、楽天の出店規約の一方的な変更は、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして公取委に調査を申告したが、「「他の出店事業 者にも協力を呼びかけたが、大手ほど楽天の報復を恐れてか、非協力的だった」(同社の猪ノ口幹雄社長)。送料課金の件で告発したA社も他の出店者に協力を 呼びかけたというが、やはり「なかなか声を上げてくれなかった」という。
A社によれば、公取委からは1月になって「現段階では独禁法上の問題とすることは困難」とした通知が送付されたという。
どのような理由でこうした結論に至ったのかは不明だが、企業法務に詳しい弁護士は「ややグレーというだけでは公取委も動きにくい。公表されている資料や寄 せられた資料で『出店者に不利益な部分ばかりではない』と判断したのではないか。大掛かりな調査は行なっていないと思われる」と話す。
確かに、踏み込んだ調査の実施は、報道もされるだけに社会的な影響は大きく、公取委が慎重になるのはもっともなことといえるだろう。ただ、仮想モール運営 企業と出店者の関係を公取委が調べたのはすでに6年前。今回の送料課金も含め、「不当に不利益な手数料率の設定」が本当に行われていないのか、楽天市場だ けではなく、改めて仮想モールの運営実態を調べる必要があるのではないか。
【楽天の物流サービスの利用は?】
問7で、楽天が拡充を予定している物流サービスの利用を考えているか聞いたところ、「利用を検討する」と回答した店舗は9%にとどまり、「利用するつもりはない」が大半(71%)を占める結果となった。
また、「分からない」と答えたのは20%で、「すでに利用している」企業は雑貨をネット販売する1社だけだった。
そもそも、楽天が送料課金の理由を"物流サービス拡充に向けた取り組みの一環"としたことが、とくに自社や楽天以外の倉庫を利用する店舗の反感を買っていることは間違いなく、そうした状況下で「それでは、楽天に物流をお願いしよう」とはならないのだろう。
実際、「(規約の変更を)好き勝手にやる企業に商品を預けるのは自殺行為」とする店舗もある。
ま た、現実的な問題として、「楽天市場」だけでなく、「ヤフー!ショッピング」や「ビッダーズ」など他の仮想モールにも出店する企業が多く、他社モールで受 注した商品の発送に対応できるのか不明なことや、楽天が運営する倉庫は常温のため、温度管理が必要な商材には不向きで、「商品の性質上、楽天の物流代行は 利用できない」と答えた企業も少なくない。
問題はこうした店舗に対し、送料課金の目的である"物流サービス拡充"の青写真が分かりづらく、各店舗の窓口となるべき楽天の担当者も「詳しくは分からない」などと答えていることも、同社の物流サービスについて疑問視せざるを得ない要因のひとつとなっているようだ。
◇
楽天が送料課金の目的としている物流サービスの拡充とは、商品の多様な受け取り方法の指定や、翌日配送の対象商品・エリアの拡大、当日配送の早期実現に向けて実施している物流投資のこと。
同社は、2010年3月に子会社の楽天物流を設立し、同年秋に初めて自前の物流拠点を千葉県市川市(延床面積2万5000平方メートル)に整備。これに続 いて、今年11月竣工予定で兵庫県内に楽天専用の大型倉庫7万7000平方メートルを準備するほか、12月には市川市内に2拠点となる約4万2000平方 メートルの物流センターが稼働を始める予定で、「関東での当日お届けも視野に入ってきている」(恵谷洋・楽天物流社長)としている。
さらに、中京圏や東北、九州にも物流拠点を開設するほか、大規模物流センターの近隣にはデポ拠点を設けてロングテール商品の保管能力を高める構想もあり、今後2~3年で物流改革に投じる資金は100億円規模にのぼるとの見方もある。
ただ、自前の倉庫は現状、楽天ブックスなどの商品が主体で、楽天の物流サービスを利用する企業は衣料品を扱う店舗など一部に限られていると見られる。
30%が「退店検討」、"一方的"と批判多く
出 店者に「今回の負担増を受けて、楽天からの退店は考えていますか」と尋ねたところ、「退店を検討している、または退店予定」との回答が3割となった。理由 については「一方的」など楽天の対応への批判が目立った。また「考えていない」とした回答者も「納得はいかないが逆らえない」などの意見が多く、「送料課 金や楽天への不満」は総意見の95%と大半を占めた。
ア ンケート問8の「今回の負担増を受けて、楽天からの退店は考えていますか」で「退店を検討、予定している」(27%)と回答した人の理由を見てみると「有 無を言わさず、一方的に送料課金をするというは強引すぎる」「(送料課金開始の)手紙が送られてきただけで何の説明もない。電話をしても折り返しがない。 以前からこうなので慣れた」「常に楽天側からの一方的なルール変更を受け入れざるを得ない状況。リスクヘッジのため他モールへの出店を本格的に始めた」 「楽天だけが儲かればよいという考えが伝わってくる」など"送料課金"に至るまでの説明の不足や一方的なルール変更など楽天の姿勢に対する不満の声が目 立った。
また、「考えていない」(73%)と回答した人の理由を見てみると「不満はない。ボランティアではなく、利益を追求する企業で ある以上、やむを得ないと思う」などの意見があった。ただ、「納得いかないが、国よりも偉い楽天に逆らう事はできない。昔の小作人の気持ちが痛い程分かっ た」「(出店料が)月額5万円の時から出店しているが、大企業には巻かれざるを得なく情けない」など自社ビジネスに欠く事のできない巨大モールの意向には 「納得いかないが従わざるをえない」という意見が大半で、アンケートに寄せられた意見の95%は送料課金や楽天に対する不満の声が占めた。
楽天市場出店者からの声
・意見
以下に、本紙アンケートに寄せられた出店者の主な意見を一部掲載する。
※ ( )内は販売する商品ジャンル
『納得できる』
■ 送料課金は納得できる範囲。商品の価格を異常に安く設定し、送料を高めに設定している店舗がある以上ある意味で公平かと思う。こちらよりも食品などで多い のが、税別価格を全面に出して税込み価格を小さく表示している場合は、お客様へのポイントが税別で算出しているので問題だと思う。(PC・家電)
■ 送料課金を行う事で、【商品+送料】の商品群と、【商品(送料込み)】の商品群の店舗間で課金対象金額の条件が同じになったので、今回の「送料課金」は評 価している。一部の【商品+送料】の店舗では、【商品】価格を極端に下げ、【送料】価格を極端に高価にする事で正当な競争ができなかったが、「送料課金」 を行っていただく事で、低価格競争の歯止めになっているのではないか。(花)
■エンドユーザーにとっては送料無料のほうが計算の必要もなくわかりやすいと思うので、このように半ば強引とも言える形でモール側から送料無料化に持っていくのはありではないかと思う。(家具・家庭用品)
■アマゾンは送料含めての手数料を課金しているので、課金分でシステム拡大するのであれば納得する。(食品・飲料)
『不満があるが仕方がない』
■楽天市場という1つの企業が作ったマーケットで商売をする以上、仕方がない部分はある。ただ、横暴とも言える楽天市場的な押し付けが度重なると不満を持って離れていく人は増えるのではないか。(食品・飲料)
■楽天市場店が売り上げの多くを占めているため、仕方ないとあきらめざるを得ない。文句を言って退店処分などになると困る。(雑貨類)
■今回の送料課金は憤りすら感じる。文句があるなら退店したっていんだよって感じを受ける。私どもとしても楽天の売り上げがないと非常に困るため、泣く泣く楽天の言いなりになるしかない。(靴)
■便利な機能・ユーザーが多い反面、以前から多くの手数料やポイント付けの強制(1%)をしている楽天なので、送料課金も特に驚きはない。(未回答)
■何事も課金を迫る楽天には辟易しているが、集客力はあるので致し方ない。小さなショップでは太刀打ちできない。(雑貨)
『勝手なルール変更に不満』
■送料に課金するのであれば、システム料の利率を見直すなどして欲しい。(化粧品・美容関連機器)
■ 担当者からの電話連絡等は一切なく、メールでの一方的な課金予告しかなかった。これまでも勝手なシステム変更や請求に関しても納得できない点が多く、2カ 月後に退店することにした。売り上げが落ちていたわけではなく、楽天は集客力もあるが運営の仕方に納得できない。こういったアンケートや書き込みなども、 楽天側に把握されてしまうと強制退店やペナルティを受けるという噂があり、それを恐れている店舗も多いはず。(衣料品)
■一方的に「〇月〇日より送料分も課金する」という封書が送付され、出店者専用の楽天管理画面にログインする際に「同意する」という一文にチェックをしないとログインできない仕様になっていた。担当者からの電話連絡なども一切ない。(食品・飲料)
■送料は楽天と全く関係なく、お店と配送業者で契約を交わしてお金を支払っているのだから課金されるのは絶対におかしい。商品代金1円、送料1500円など、法外な送料を徴収している一部店舗に対しては、罰則を設けるなどで対応してほしかった。(衣料品)
■一方的な値上げであり、モールを借りている側の立場に付け込んだ悪質なやり口だ。(衣料品)
『説明不足』
■事前の打診は一切なかった。送料課金する旨を決定事項として伝えられたのは開始まで1カ月もない時期だった。(雑貨)
■もっと納得のいく説明が欲しい。代表者からいっさい出店店舗に対しての言葉がない。(未回答)
■今回の施策に当たっての説明は詭弁に過ぎない。(食品)
■正々堂々と「利益が足りないから値上げ(課金率アップ)します」と言ってもらった方がまだ話は分かりすい。(ギフト商品)
■担当コンサルタントは今回の課金の件で「すみません」と謝っていた。楽天内でも送料課金はおかしいと思っている人は多数いるのでは。(衣料品)
『楽天以外の"売り場"へシフト』
■単に楽天の収益を上げたいだけで、企業努力が足りない。店舗側が楽天に利益を献上するのに等しい。企業努力不足とは付き合えないので閉店を決めた。(スポーツ用品)
■楽天に頼っていると危険だと感じた。(衣料品)
■今までは楽天だけだったが、独自ドメインなどの店舗も準備しておこうと思う。(衣料品)
■アマゾンのほうがはるかに効率的だし納得のいく手数料ではある。楽天にかわるショッピングモールができればそちらに移行したい。(食品・飲料)
■年々課金対象のサービス(メルマガ等)が増えており、楽天だけで出店していくのは厳しい。こうしたサービスの価格が低い他のモールでの出店も考えている。(雑貨類)
『楽天の企業姿勢や三木谷社長への不満』
■市場事業以外の失敗の穴埋めを市場出店者の手数料値上げでまかなっている感じが最近とくに強い。(家具・家庭用品)
■フェイスブック導入の際にも勝手に利用料を追加した。そういう体質の企業なので、そのように付き合っていくつもり。(家具・家庭用品)
■店舗のレビューは一切削除しないのに、自社に都合が悪いときは削除するのは卑怯。(食品・飲料)
■東証一部上場企業としてあるべき姿勢ではない。(家具・家庭用品)
■ショップへの事前アンケートなどせずに独善的な態度で物事を進める姿勢は創業当時から変わらない。(雑貨類)
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【複数購入時の対応は?】
それによると「同一発送は同一運賃扱い」、「同梱送料は1個分(の送料)」というように複数商品を同梱して1個分の送料扱いに設定する方法と、「複数購入 時も値引き対応なしが基本」「送料別の商品も掲載しているので、複数の商品を購入した際は特に再計算はしない」など同梱の有無に限らずそのまま複数配送と して受注処理する場合との2つのケースに分かれた。
前者は同梱・同一配送にすることで消費者への送料負担を軽減。後者の場合は同梱・同一配送にした場合は、実際の送料との差額で店舗側の利益を生み出すことができるようになっている。
そのほかの回答としては、複数注文の際、場合によっては「一部値引きを実施する」などの店舗もあった。
商品価格上乗せ分の送料基準の見直しも
次に、商品価格に上乗せする送料の基準となる金額についても聞いてみた。
寄せられた回答を見ると「送料基準はこれまでの基準(店舗負担運賃の平均)に送料課金割合相当を乗じた額を使用」「基準の送料は1番安い地区の送料で、あ まりに遠い地区の場合のみ追加料金を加算」「運送会社に払う額プラス梱包資材代金」「上乗せ送料は全国一率税込630円」といった具合に店舗ごとにバラつ きが見られる。
一方で、商品価格に上乗せする金額の算出について「高い送料を基準とした」といった店舗のほか、「現状据え置きだが、利 益がほとんどなくなる商品もあることが分かり、全体的に見直そうと思っている」「1部の商品をのぞいて1万500円以上で送料無料にしている。しかし、こ れだとほとんど利益が出ず赤の場合もあるので、値上げを検討中」というように、上乗せ額の見直しを検討している店舗もある。
上乗せする額を増やせば店の利益になるわけだが、価格競争力を落とすことにもなるため、店舗側としては商品価格へ上乗せする送料分について試行錯誤が続くことも考えられる。
【「公取委への相談」に関心はありますか?】
「相談興味あり」は78%
公取委では、2006年12月に公表した「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」において、「取引上の立場が優越して いる運営事業者が(中略)出店事業者にとって不当に不利益な手数料率の設定を行う場合には、独占禁止法上の問題(優越的地位の乱用)につながる恐れがあ る」と指摘した。
今回の送料課金が優越的地位の乱用にあたるのではないかとして、公取委に調査を依頼した店舗もある。革製品やペット用品のネット販売を手掛けるA社では、公取委の通報窓口に送料課金の問題で通報した。
問5では、公取委へ相談した店舗があることについて、関心があるかどうかを聞いた。「関心がある」と答えたのは78%にのぼった。「関心がない」は10%、「どちらともいえない」は12%となっている。
楽天市場に出店している以上、波風を立てたくないという意識を持つ店舗は多いようだ。ある店舗は以前、本紙の取材に対し「巨大商圏から排除されるのが怖 く、楽天に文句を言うどころか公正取引委員会に告発すらできない状態だ」と答えた。アンケートの中にも「こういったアンケートや書き込みなども、楽天側に 把握されてしまうと強制退店やペナルティーを受けるという噂がある」との声もあった。
通販サイト「石けん百貨」を運営する生活と科学 社は05年11月、楽天の出店規約の一方的な変更は、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして公取委に調査を申告したが、「「他の出店事業 者にも協力を呼びかけたが、大手ほど楽天の報復を恐れてか、非協力的だった」(同社の猪ノ口幹雄社長)。送料課金の件で告発したA社も他の出店者に協力を 呼びかけたというが、やはり「なかなか声を上げてくれなかった」という。
A社によれば、公取委からは1月になって「現段階では独禁法上の問題とすることは困難」とした通知が送付されたという。
どのような理由でこうした結論に至ったのかは不明だが、企業法務に詳しい弁護士は「ややグレーというだけでは公取委も動きにくい。公表されている資料や寄 せられた資料で『出店者に不利益な部分ばかりではない』と判断したのではないか。大掛かりな調査は行なっていないと思われる」と話す。
確かに、踏み込んだ調査の実施は、報道もされるだけに社会的な影響は大きく、公取委が慎重になるのはもっともなことといえるだろう。ただ、仮想モール運営 企業と出店者の関係を公取委が調べたのはすでに6年前。今回の送料課金も含め、「不当に不利益な手数料率の設定」が本当に行われていないのか、楽天市場だ けではなく、改めて仮想モールの運営実態を調べる必要があるのではないか。
【楽天の物流サービスの利用は?】
また、「分からない」と答えたのは20%で、「すでに利用している」企業は雑貨をネット販売する1社だけだった。
そもそも、楽天が送料課金の理由を"物流サービス拡充に向けた取り組みの一環"としたことが、とくに自社や楽天以外の倉庫を利用する店舗の反感を買っていることは間違いなく、そうした状況下で「それでは、楽天に物流をお願いしよう」とはならないのだろう。
実際、「(規約の変更を)好き勝手にやる企業に商品を預けるのは自殺行為」とする店舗もある。
ま た、現実的な問題として、「楽天市場」だけでなく、「ヤフー!ショッピング」や「ビッダーズ」など他の仮想モールにも出店する企業が多く、他社モールで受 注した商品の発送に対応できるのか不明なことや、楽天が運営する倉庫は常温のため、温度管理が必要な商材には不向きで、「商品の性質上、楽天の物流代行は 利用できない」と答えた企業も少なくない。
問題はこうした店舗に対し、送料課金の目的である"物流サービス拡充"の青写真が分かりづらく、各店舗の窓口となるべき楽天の担当者も「詳しくは分からない」などと答えていることも、同社の物流サービスについて疑問視せざるを得ない要因のひとつとなっているようだ。
楽天が送料課金の目的としている物流サービスの拡充とは、商品の多様な受け取り方法の指定や、翌日配送の対象商品・エリアの拡大、当日配送の早期実現に向けて実施している物流投資のこと。
同社は、2010年3月に子会社の楽天物流を設立し、同年秋に初めて自前の物流拠点を千葉県市川市(延床面積2万5000平方メートル)に整備。これに続 いて、今年11月竣工予定で兵庫県内に楽天専用の大型倉庫7万7000平方メートルを準備するほか、12月には市川市内に2拠点となる約4万2000平方 メートルの物流センターが稼働を始める予定で、「関東での当日お届けも視野に入ってきている」(恵谷洋・楽天物流社長)としている。
さらに、中京圏や東北、九州にも物流拠点を開設するほか、大規模物流センターの近隣にはデポ拠点を設けてロングテール商品の保管能力を高める構想もあり、今後2~3年で物流改革に投じる資金は100億円規模にのぼるとの見方もある。
ただ、自前の倉庫は現状、楽天ブックスなどの商品が主体で、楽天の物流サービスを利用する企業は衣料品を扱う店舗など一部に限られていると見られる。
30%が「退店検討」、"一方的"と批判多く
出 店者に「今回の負担増を受けて、楽天からの退店は考えていますか」と尋ねたところ、「退店を検討している、または退店予定」との回答が3割となった。理由 については「一方的」など楽天の対応への批判が目立った。また「考えていない」とした回答者も「納得はいかないが逆らえない」などの意見が多く、「送料課 金や楽天への不満」は総意見の95%と大半を占めた。
また、「考えていない」(73%)と回答した人の理由を見てみると「不満はない。ボランティアではなく、利益を追求する企業で ある以上、やむを得ないと思う」などの意見があった。ただ、「納得いかないが、国よりも偉い楽天に逆らう事はできない。昔の小作人の気持ちが痛い程分かっ た」「(出店料が)月額5万円の時から出店しているが、大企業には巻かれざるを得なく情けない」など自社ビジネスに欠く事のできない巨大モールの意向には 「納得いかないが従わざるをえない」という意見が大半で、アンケートに寄せられた意見の95%は送料課金や楽天に対する不満の声が占めた。
楽天市場出店者からの声・意見
以下に、本紙アンケートに寄せられた出店者の主な意見を一部掲載する。
※ ( )内は販売する商品ジャンル
『納得できる』
■ 送料課金は納得できる範囲。商品の価格を異常に安く設定し、送料を高めに設定している店舗がある以上ある意味で公平かと思う。こちらよりも食品などで多い のが、税別価格を全面に出して税込み価格を小さく表示している場合は、お客様へのポイントが税別で算出しているので問題だと思う。(PC・家電)
■ 送料課金を行う事で、【商品+送料】の商品群と、【商品(送料込み)】の商品群の店舗間で課金対象金額の条件が同じになったので、今回の「送料課金」は評 価している。一部の【商品+送料】の店舗では、【商品】価格を極端に下げ、【送料】価格を極端に高価にする事で正当な競争ができなかったが、「送料課金」 を行っていただく事で、低価格競争の歯止めになっているのではないか。(花)
■エンドユーザーにとっては送料無料のほうが計算の必要もなくわかりやすいと思うので、このように半ば強引とも言える形でモール側から送料無料化に持っていくのはありではないかと思う。(家具・家庭用品)
■アマゾンは送料含めての手数料を課金しているので、課金分でシステム拡大するのであれば納得する。(食品・飲料)
『不満があるが仕方がない』
■楽天市場という1つの企業が作ったマーケットで商売をする以上、仕方がない部分はある。ただ、横暴とも言える楽天市場的な押し付けが度重なると不満を持って離れていく人は増えるのではないか。(食品・飲料)
■楽天市場店が売り上げの多くを占めているため、仕方ないとあきらめざるを得ない。文句を言って退店処分などになると困る。(雑貨類)
■今回の送料課金は憤りすら感じる。文句があるなら退店したっていんだよって感じを受ける。私どもとしても楽天の売り上げがないと非常に困るため、泣く泣く楽天の言いなりになるしかない。(靴)
■便利な機能・ユーザーが多い反面、以前から多くの手数料やポイント付けの強制(1%)をしている楽天なので、送料課金も特に驚きはない。(未回答)
■何事も課金を迫る楽天には辟易しているが、集客力はあるので致し方ない。小さなショップでは太刀打ちできない。(雑貨)
『勝手なルール変更に不満』
■送料に課金するのであれば、システム料の利率を見直すなどして欲しい。(化粧品・美容関連機器)
■ 担当者からの電話連絡等は一切なく、メールでの一方的な課金予告しかなかった。これまでも勝手なシステム変更や請求に関しても納得できない点が多く、2カ 月後に退店することにした。売り上げが落ちていたわけではなく、楽天は集客力もあるが運営の仕方に納得できない。こういったアンケートや書き込みなども、 楽天側に把握されてしまうと強制退店やペナルティを受けるという噂があり、それを恐れている店舗も多いはず。(衣料品)
■一方的に「〇月〇日より送料分も課金する」という封書が送付され、出店者専用の楽天管理画面にログインする際に「同意する」という一文にチェックをしないとログインできない仕様になっていた。担当者からの電話連絡なども一切ない。(食品・飲料)
■送料は楽天と全く関係なく、お店と配送業者で契約を交わしてお金を支払っているのだから課金されるのは絶対におかしい。商品代金1円、送料1500円など、法外な送料を徴収している一部店舗に対しては、罰則を設けるなどで対応してほしかった。(衣料品)
■一方的な値上げであり、モールを借りている側の立場に付け込んだ悪質なやり口だ。(衣料品)
『説明不足』
■事前の打診は一切なかった。送料課金する旨を決定事項として伝えられたのは開始まで1カ月もない時期だった。(雑貨)
■もっと納得のいく説明が欲しい。代表者からいっさい出店店舗に対しての言葉がない。(未回答)
■今回の施策に当たっての説明は詭弁に過ぎない。(食品)
■正々堂々と「利益が足りないから値上げ(課金率アップ)します」と言ってもらった方がまだ話は分かりすい。(ギフト商品)
■担当コンサルタントは今回の課金の件で「すみません」と謝っていた。楽天内でも送料課金はおかしいと思っている人は多数いるのでは。(衣料品)
『楽天以外の"売り場"へシフト』
■単に楽天の収益を上げたいだけで、企業努力が足りない。店舗側が楽天に利益を献上するのに等しい。企業努力不足とは付き合えないので閉店を決めた。(スポーツ用品)
■楽天に頼っていると危険だと感じた。(衣料品)
■今までは楽天だけだったが、独自ドメインなどの店舗も準備しておこうと思う。(衣料品)
■アマゾンのほうがはるかに効率的だし納得のいく手数料ではある。楽天にかわるショッピングモールができればそちらに移行したい。(食品・飲料)
■年々課金対象のサービス(メルマガ等)が増えており、楽天だけで出店していくのは厳しい。こうしたサービスの価格が低い他のモールでの出店も考えている。(雑貨類)
『楽天の企業姿勢や三木谷社長への不満』
■市場事業以外の失敗の穴埋めを市場出店者の手数料値上げでまかなっている感じが最近とくに強い。(家具・家庭用品)
■フェイスブック導入の際にも勝手に利用料を追加した。そういう体質の企業なので、そのように付き合っていくつもり。(家具・家庭用品)
■店舗のレビューは一切削除しないのに、自社に都合が悪いときは削除するのは卑怯。(食品・飲料)
■東証一部上場企業としてあるべき姿勢ではない。(家具・家庭用品)
■ショップへの事前アンケートなどせずに独善的な態度で物事を進める姿勢は創業当時から変わらない。(雑貨類)