"ヤフーの挑戦"に賛辞を
ヤフーが仮想モールおよびネット競売事業で大胆な方針展開に踏み切った。これまで出店者から徴収してきた月額出店料や売上高手数料を無料化、さらに同じくこれまでは制限していた外部リンクや顧客へのメール送信を自由化した。ヤフーのこの方針転換のインパクトは通販事業者にとっては強烈だ。なぜなら、楽天が作り上げ、ヤフーのほか、他社もそれをひな形としてきたこれまでの「仮想モールのビジネスモデル」を否定するものだからだ。
集客面やシステム面、セキュリティ面などをモール運営者によってきちんと整備された売り場で商売をする以上、モール運営者から"地代"を徴収されることはもはや前提条件であり、それ自体について文句を言う事業者もいなかった。モール運営が適時行う出店料金改定などで出店者が不満を持ったとしても結局は「優れた売り場」から去ることは現実的ではなく、そこは割り切って商売を続けざるを得なかったわけだ。
しかし、ヤフーは従来までの出店者から"地代"を徴収して収益化を図るビジネスモデルを「インターネットは本来自由なもののはずだが、eコマースだけは不自由だった。これは違うのではないか。『これまでヤフーは間違っていた』」と(孫正義会長)とし、いわゆる"楽天モデル"を否定。誰もが無料で自由に参加できる仮想モールに改めた。あわせて個人出店も開放し、参加者を多く集め、そこでさらに売上拡大などを目指す出店者からの任意の広告出稿で収益化する広告モデルとした。
無論、ヤフーにとって今回の方針転換は"いばらの道"だ。これまで黙っていても入ってきた四半期ベースで30億円程度の出店料や売上高手数料などの収益をすべて捨てることになるわけで、その減収分を広告収入でカバーするまでには一定期間が必要となりそう。しかも、それも計画通りに出店者や流通総額規模が増えることが前提となる。ヤフーは「広告モデル」にはノウハウがあろうが、それがそのまま仮想モール事業でも通用するかどうかは前例がない以上、誰にもわからないからだ。それでも仮想モール事業では常に首位の楽天の後塵を拝し、万年2番手の地位に甘んじ、様々な施策を打つもその差を埋められないでいた現在のポジションをひっくり返すためには、「一旦、しゃがんでも再びジャンプするため」(宮坂社長)に大胆な施策が必要だと判断したようだ。
今回のヤフーの戦略変更の成否は現状では不明ではあるが、その挑戦には賛辞を贈りたい。「不毛な値下げ競争の始まり」とこの挑戦に否定的な声もあるが、その「売り場」で実際に商売を行う事業者にとっては、歓迎すべきことだ。無料化による収益アップはもちろんだが、規模感で見れば事実上、楽天の独占状態であると言える仮想モール市場は、今回の一手で有力出店者などが主戦場をヤフーに移す可能性もあり、結果として健全な競争を促し、モールにおいてこれまでの"地主優位"から"出店者優位"へとパラダイムシフトを起こす起爆剤になりえるからだ。ヤフーの挑戦の今後がどうなるかを注視しつつ、市場の健全発展のため、その挑戦に声援を贈りたい。
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しかし、ヤフーは従来までの出店者から"地代"を徴収して収益化を図るビジネスモデルを「インターネットは本来自由なもののはずだが、eコマースだけは不自由だった。これは違うのではないか。『これまでヤフーは間違っていた』」と(孫正義会長)とし、いわゆる"楽天モデル"を否定。誰もが無料で自由に参加できる仮想モールに改めた。あわせて個人出店も開放し、参加者を多く集め、そこでさらに売上拡大などを目指す出店者からの任意の広告出稿で収益化する広告モデルとした。
無論、ヤフーにとって今回の方針転換は"いばらの道"だ。これまで黙っていても入ってきた四半期ベースで30億円程度の出店料や売上高手数料などの収益をすべて捨てることになるわけで、その減収分を広告収入でカバーするまでには一定期間が必要となりそう。しかも、それも計画通りに出店者や流通総額規模が増えることが前提となる。ヤフーは「広告モデル」にはノウハウがあろうが、それがそのまま仮想モール事業でも通用するかどうかは前例がない以上、誰にもわからないからだ。それでも仮想モール事業では常に首位の楽天の後塵を拝し、万年2番手の地位に甘んじ、様々な施策を打つもその差を埋められないでいた現在のポジションをひっくり返すためには、「一旦、しゃがんでも再びジャンプするため」(宮坂社長)に大胆な施策が必要だと判断したようだ。
今回のヤフーの戦略変更の成否は現状では不明ではあるが、その挑戦には賛辞を贈りたい。「不毛な値下げ競争の始まり」とこの挑戦に否定的な声もあるが、その「売り場」で実際に商売を行う事業者にとっては、歓迎すべきことだ。無料化による収益アップはもちろんだが、規模感で見れば事実上、楽天の独占状態であると言える仮想モール市場は、今回の一手で有力出店者などが主戦場をヤフーに移す可能性もあり、結果として健全な競争を促し、モールにおいてこれまでの"地主優位"から"出店者優位"へとパラダイムシフトを起こす起爆剤になりえるからだ。ヤフーの挑戦の今後がどうなるかを注視しつつ、市場の健全発展のため、その挑戦に声援を贈りたい。