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DHC・広告問題の波紋③ 業界団体、対応に二の足

2012年 9月13日 09:40

 消費者の誤認を招き、同業他社の反発を呼ぶディーエイチシー(DHC)の広告問題。これら事業者の声に、業界団体はいかに応えるのか。



 DHCは日本経済団体連合会(経団連)、消費者関連専門家会議(ACAP)、日本化粧品工業連合会(粧工連)に加盟する。

 経団連の「企業行動憲章」には「企業は公正な競争を通じて付加価値を創出し(中略)高い倫理観をもって社会的責任を果たしていく」との一節がある。これに背く行動がある場合「企業行動委員会」が開かれるが、その判断は「会長などトップの判断」(事務局)。今回のケースは「上に報告するが、事態を把握せずコメントできない」(同)。

 ACAPも法令違反や公序良俗に反する問題には、加盟社の問題提起を受け「会員倫理委員会」を開く。ただ、「定期会合ではなく、年に1回もない」(事務局)。「過去に外部からの要請で行った例はないが、指摘が多ければ開催の可能性はある」(同)とする。ただ、今回は「声が届かないため動きがなく、コメントする状況にない」(同)。

 粧工連は年3回、一定期間に出稿された大手紙の広告を「化粧品広告審査会」で審査し、改善要請も行う。ただ、今回は「広告を実際に見ていないから答えようがない。(健食関連なら)日本健康・栄養食品協会(日健栄協)が動き始めているのではないか。うちは非加盟企業にも要請している」(事務局)とする。

 改善要請という手段を持つ粧工連も、その対象は化粧品のみ。加えて、「行政からは"法律に順じるだけなら意味がない。もっと厳しくするのが業界団体だろ"と言われるが、回答で多いのは"都道府県に確認した"というもの。だから法律違反の疑いがないと実際には難しい」と、企業倫理を扱う難しさをにじませる。



 粧工連に水を向けられた日健栄協はどうか。「税金を使い、何か意図があって調査したのだから、民間が行ったと明示すればいい。結果がまずいから出せないという中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局(北陸支局)の意図が不明。国の『機能性評価モデル事業』も、仮に営業に使っても駄目という根拠はない。ただ、国は発表の際、"国が認めたものではない"とはっきり言っている」(健康食品部)と支局の問題点を指摘。かつてはDHCも加盟していたが「健食の広告のガイドラインを検討中だが、それがない現状では難しい」(同)。現在、粧工連の改善要請の仕組みを参考に、広告ガイドラインを検討中。

 日本通信販売協会(JADMA)は問題発生時「検討中」(事務局)としていたが、いまだ「検討中」(同)。「感情的な要望はできず、非常に難しい問題」(同)とした。

 一方、これら業界団体の対応に「(要請を行うのに)法律違反か否かを重視するわけではなく、消費者にとってどうかという部分が一番大事。法律違反の疑いがあるなら誰かがやる。」と声を挙げるのが消費者団体の主婦連合会(主婦連)だ。



 今回の広告に「最初に見た際、国が関与した調査を一企業が営利目的で使うのを認めるのかと驚いた。異様というか、相当インパクトのある広告」(協会役員)と、すでに問題の端緒は把握済み。「北陸支局はきちんと抗議すべき。抗議したならばその経緯を明らかにしてくれなければ消費者に伝わらない」(同)と、支局の弱腰を指摘する一方、DHCにも「待ってくれと言っているのに使う姿勢はおかしい。この広告を見た人は本当に人気があると誤認する可能性が高い」(同)と話す。消費者を誤認させるとの観点から、対応は「何かできるか考える」(同)。

 健食に否定的な立場で知られる日本消費者連盟はDHCに「何が何でも事業を拡大するため利用できるものは利用するダーティーな部分があり、非常に強引なやり方との印象」(協会役員)とする。

 ただ、「宣伝手法がおかしいと抗議することはおそらくない」(同)とトーンは下がる。「なぜかと言えば、どこが1位であろうと、販売している健食(の存在)そのものを問題視しているから」(同)。この問題で日消連が動くことはなさそうだ。

 対応を検討中のJADMAと主婦連を除き、いずれの団体も動きはない。消費者や事業者の声が届かず、事態を把握できずいることが背景にあるだろう。ただ、「他社に自分の会社を語られたくはない」と、広告に不快感を口にする事業者に共感を覚える事業者は少なくないはず。その代弁者となりうる団体は今のところ現れていない。
(つづく)

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