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処方せんネット販売訴訟 国側、実質的な反論なし、改正法施行まで時間稼ぎ?

2014年 1月24日 14:39

 処方せん薬のネット販売を行う権利を求め、ケンコーコム(KC)が国を相手取り昨年11月に提起した訴訟の第1回期日が1月14日、東京地方裁判所(谷口豊裁判長)で開かれた。昨年12月、処方せん薬のネット販売禁止を盛り込む薬事法および薬剤師法の改正法成立を受けたもので、原告のKC側は、同年1月に出された一般用医薬品ネット販売訴訟の最高裁判決をもとに、現行省令で処方せん薬のネット販売を禁止する根拠はないと見ている。だが、改正法施行期日の6月中旬までに判決を出すのは難しい情勢で、裁判所は改正法が施行された場合の原告側の対応について説明を要求。被告の国側も時間稼ぎとも取れる動きを見せている。



 2009年6月に施行された現行省令に第3類以外の"医薬品"の郵便等販売(通販・ネット販売)を禁止する内容が盛り込まれたことを受け、KCは同年5月に第1、2類の一般用医薬品ネット販売を行う権利確認を求める訴訟を提起。昨年1月の最高裁判決では、第1、2類医薬品のネット販売を一律に禁止する現行省令には薬事法の委任がなく違法とし、KCの医薬品ネット販売を行う権利を認める判断を下している。

 この最高裁判決を受け、一般用医薬品の販売ルールに関する検討作業が進み、昨年12月にこの検討内容を反映した薬事法および薬剤師法の改正法が成立。一方、同改正法では処方せん薬のネット販売を禁止する規定も盛り込まれたが、KC側は実質的な検討作業が行われていないなど規制の根拠が曖昧という見方をしていた。

 今回の処方せん薬ネット販売の権利確認訴訟は、改正法に禁止規定が盛り込まれたことを受けたものだが、訴えの対象は09年6月に施行された現行省令になる。KC側としては、早急に法的手段に出るにしても改正法が施行されていないため、現行省令を対象に提訴したもので、第3類以外の"医薬品"のネット販売を一律に禁止する省令を違法と判断した最高裁判決は処方せん薬にも当てはまるとの見方だ。



 昨年1月の最高裁判決に基づけば、KC側の主張が認められる可能性はありそうだが、問題は改正法の施行期日が公布から半年後の6月12日に設定されていること。それまでに判決を出すのは難しいのが実情で改正法が施行されれば、訴訟自体宙に浮くことにもなりかねない。

 このため、KC側も迅速な裁判の進行が必要と見ており、昨年11月、東京地裁に訴状を提出した際、被告の国側が本筋の現行省令から逸脱した答弁をしないよう求める上申書を提出。だが、原告側によると、国側の回答は認否のみで現行省令を問題とする実質的な反論はなく、訴訟の棄却を求めているという。

 第1回期日で原告訴訟代理人の阿部泰隆弁護士は、「(国側は)上申書の趣旨を全く理解していない」とし、改めて、現行省令で処方せんネット販売を規制する立法事実や薬事法に基づく根拠があるのかを早急に回答するよう求めた。

 これを受け、国側が書面の提出までに2カ月程度を要すると回答したのに対し、原告側はもっと早く提出できるはずと反発。時間稼ぎとも受け取れる国側の緩慢な対応に、阿部弁護士は「(裁判を引き伸ばし原告側の)確認の権利がなくなるというようなことはして欲しくない」とし、国側は3月7日に書面を提出する考えを示した。

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 一方、今回の訴訟では、改正法が施行される前に判決が出なければ意義がなくなることになる。改正法が施行されれば、処方せんのネット販売を行う権利確認の前提となる現行省令が機能しなくなるためだ。

 このため、第1回期日で裁判所側は、改正法が施行された場合、主張を変えるのかを原告側に質問。原告側は改正法が施行された時点で対応を考えるとしていたが、最終的に当該訴訟で主張は変えないとした。これは、従来の主張に特化し国側の早急な再反論の提出と判決を狙ったものだ。

 一方で、国側が時間稼ぎに出るのは必至。昨年11月の訴訟提起から第1回期日まで2カ月の準備期間があったにも関わらず実質的な反論がなく、再反論にも2カ月の準備期間を求めたこともその表れと言え、KCは第1回期日に関するコメントで「厚生労働省(国)は、無意味に裁判を長引かせようとしている」と指摘する。

 KC側とすれば、司法に訴える対象が現行法に基づく省令以外にないため訴訟に踏み切った形だが、控訴の可能性などを考えると改正法施行前に決着が着くのは難しいのが実情。処方せん薬のネット販売禁止を巡る訴訟は、改正法施行後に第2ラウンドへ突入する可能性がありそうだ。

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