薬事法リスクへの対応を
健康食品の薬事法違反を巡り、警察が芋づる式に周辺事業者を摘発するケースが増えている。通販会社の販売していた健食の"バイブル本"を製作した出版社が摘発されたケースや、健食の企画開発を行った企業が摘発されたケースなどだ。健食通販への新規参入が増える中、熟練した健食製造の技術を持つOEM事業者が販売支援を目的に、販売会社の事業に深く関与することも多くなっている。警察のそのような動きが活発化する中、健食業界に身を置く事業者にはより慎重さが求められる。
2011年、神奈川県警は「ガンが治る」などとうたい健食通販を展開していたキトサンコーワの摘発に絡み、その関連本を出版していた現代書林の元役員らを逮捕した。同年には警視庁も痩身効果を標ぼうしていた健食通販のH・A・Lの摘発を巡り、同社製品の製造を行っていたシーバイオ研究所の元役員を逮捕している。現代書林の薬事法違反事件は公判中だが、シーバイオ研究所には昨年、罰金100万円、商品を企画した元役員には罰金100万円と懲役8カ月(執行猶予3年)の有罪判決が下された。
両事件からは販売会社だけでなく、これに深く関与した周辺事業者も含め諸悪の根源を絶とうとする警察の強い意志を感じる。現代書林に法的制裁が下されるかは判決を待つことになるが、悪質な販売行為を行う事業者の摘発は健食業界にとっても歓迎すべきことだろう。
一方で、悪質事業者の薬事法違反が後を絶たない背景の一端には、その量刑の軽さがあるかもしれない。
薬事法上の広告違反の刑罰は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」。過去の刑事事件を見ても、その多くは執行猶予付き判決が多い。前出のシーバイオ研究所元役員も執行猶予3年、H・A・Lの経営者だった被告は罰金200万円と懲役1年6カ月(執行猶予5年)だった。11年5月、「背が伸びる」とうたう健食を販売して逮捕された日本新光製薬元社長の場合などは、2年間で6億円超も売り上げたにも関わらず、法人と個人で計100万円の略式命令で済んでしまった。
薬事法の最高刑は7年以下の懲役。だが、健食の販売行為でこの罪に問われることはなく、他の違反行為とのバランスから広告違反が今の刑罰となっているのは仕方のない面もある。安易な厳罰化は、違反事実の認定により厳密さを求め、警察による捜査をより困難にするかもしれない。ただ、現状の刑罰は悪質事業者にとって、その重さより犯罪で得られる利益が大きいと捉えられても仕方のないものだ。高齢化社会の到来で健康維持に対する社会的ニーズが高まる中、健食産業は環境整備が必要とされる市場でもある。
一方で、いまだに健食に定義がない事実にも目を向ける必要がある。罰則強化の検討は、健食に明確な位置づけを与えることや、事業者自身による自主規制の可能性を含め進めなければ意味のないものでもあるためだ。健食産業が社会の一端を担う産業となりつつある中、販売事業者、これを支援する周辺事業者にも、より高い法令順守の意識が求められている。
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2011年、神奈川県警は「ガンが治る」などとうたい健食通販を展開していたキトサンコーワの摘発に絡み、その関連本を出版していた現代書林の元役員らを逮捕した。同年には警視庁も痩身効果を標ぼうしていた健食通販のH・A・Lの摘発を巡り、同社製品の製造を行っていたシーバイオ研究所の元役員を逮捕している。現代書林の薬事法違反事件は公判中だが、シーバイオ研究所には昨年、罰金100万円、商品を企画した元役員には罰金100万円と懲役8カ月(執行猶予3年)の有罪判決が下された。
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一方で、悪質事業者の薬事法違反が後を絶たない背景の一端には、その量刑の軽さがあるかもしれない。
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薬事法の最高刑は7年以下の懲役。だが、健食の販売行為でこの罪に問われることはなく、他の違反行為とのバランスから広告違反が今の刑罰となっているのは仕方のない面もある。安易な厳罰化は、違反事実の認定により厳密さを求め、警察による捜査をより困難にするかもしれない。ただ、現状の刑罰は悪質事業者にとって、その重さより犯罪で得られる利益が大きいと捉えられても仕方のないものだ。高齢化社会の到来で健康維持に対する社会的ニーズが高まる中、健食産業は環境整備が必要とされる市場でもある。
一方で、いまだに健食に定義がない事実にも目を向ける必要がある。罰則強化の検討は、健食に明確な位置づけを与えることや、事業者自身による自主規制の可能性を含め進めなければ意味のないものでもあるためだ。健食産業が社会の一端を担う産業となりつつある中、販売事業者、これを支援する周辺事業者にも、より高い法令順守の意識が求められている。