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消費者庁 QVC、住金物産に措置命令、「景表法」で3件目、返金対応では不十分と判断

2010年 4月 8日 10:34

消費者庁は3月31日、住金物産が製造しQVCジャパンが販売した掛布団に景品表示法(優良誤認)の規定に違反する事実が認められたとして、両社に措置命令を行った。同件は、昨年11月にも家庭用品品質表示法上の誤表記として消費者庁と経産省が消費者へ注意を投げかけている。前回は商品に付けた品質タグが、今回は通販番組とこれに連動したサイトでの映像や音声が誤解を与えたとしているが、QVC以外では購入できないことを考えれば、2段階の公示には業界内からも疑問の声が出そうだ。


問題の商品は、08年1月18日から09年9月11日までの計5日間、QVCジャパンで放映され、同社の通販サイトも含めて販売された「二層式掛布団カシミヤ&メリノウール」。

 掛布団に使用している中綿の素材を「上層ウール100%、下層カシミヤ80%、ウール20%」としていたが、実際には上下層ともにウール100%だった。

 住金物産によると、問題の商品はすべて、07年に中国の協力工場で製造された。工場側から提出されたサンプルは検査したが、製品自体の検査は行わなかったという。

 QVC側の商品検査によって誤表記が明らかになったため、住金物産でも検査し、誤表記の事実を確認した。

 番組では住金物産の名前を出していないため、QVCが窓口となって当該商品の購入者1331人に事実を説明。居場所の分からない1人を除いて昨年中に商品代金を返金済みという。

 これについて消費者庁では、「誤表示が問題となっており、購入者への返金対応だけでは不十分。番組内でお詫びをするのが最善では」(表示対策課)とする。

 なお、住金物産では今回の措置命令を受けて、消費者の誤認を排除するため4月1日付けで全国紙2紙にお詫び広告を掲載。「今後は製品段階での検査をさらに徹底するとともに、社内への周知を図る」(広報部)としている。


解説、QVCへの措置命令について

新年度がスタートする前日の3月31日付で消費者庁がQCVジャパンなど2社に下した景表法違反に伴う措置命令。こうした消費者庁の動きに対し、通販業界から疑問と批判の声が早くも出始めている。

 まず、「措置命令」という重い処分を下す必要があったのか、ということ。違反の事実が広く報道されてしまうなど通販企業にとってはダメージの大きい「社名公表」は昨年11月に消費者庁から「消費者への注意喚起」という名目で、すでになされている。

 また、QVCではこの11月の社名公表の時点で当該商品を販売した1331人への送料を含めた返金を実施。昨年中に「どうしても連絡が取れなかった1人を除く、1330人への返金を終えた」(同社)という。

 さらに当該商品の誤表記はQVC側の自主的な商品検査によって明らかになり、住金物産を通じて消費者庁に報告したという事実。同社では昨年1月に公正取引委員会からプラスチック製のスプーンやフォークを「木製」と表記したことに関して景表法違反による排除命令を受けた。このため、再度、既存商品についても抜き取り検査などの品質検査を実施したところ、判明したものだ。

 無論、「誤表記」を行なったQVC側にも落ち度はあろう。ただし、社名も公表され、返金も終わり、消費者庁に「誤表記」の事実を自ら報告している。にも関わらず、また、「このタイミングで措置命令というのはいかがなものか。同情する」(業界関係者)との声が挙がるのも当然だろう。

 昨年11月の社名公表の際にも、一般紙なででも広く報道され、今回も同じ案件で、報道された。恐らくQVCに対して多くの消費者は良くないイメージを抱いたことであろう。「同じことで(措置命令を)2回受けたようなものだ」(別の業界関係者)。

 「違反は違反」というのが消費者庁にスタンスなのだろうが、すでに返金すら終わっている今回の件で一体、どれだけの消費者被害が起こりえるのだろうか。逆に消費者庁のこうしたスタンスでは、事業者を萎縮させ、過ちを消費者庁には報告せず、隠蔽する事業者が出てくる事態を招く可能性もある。

 そして措置命令を出した日付も気になるところ。「行政機関特有の事情」があると見る関係者も多い。新年度を迎える前までに処分すれば、今回の処分は09年度の実績となる。「昨年度は華々しく消費者庁が創設された記念の年だ。1件でも多くの『実績』を作りたく、駆け込みで年度末に処分したのでは」(業界筋)と指摘する声もある。仮にこれが事実だとすれば、役所都合で処分されたQVCにとってはたまったものではなかろう。

 いずれにせよ、通販事業者にとっては甚大なダメージを与える「措置命令」。だからこそ消費者庁はこの権限を慎重に行使すべきだろう。




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