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新たな切り口で生産者を通販で支援 在庫の現金化、食品の廃棄を軽減

2020年 6月18日 07:30

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業活動やイベントの自粛などにより、販売先を失い、困窮する生産者らを自らの通販という販路を提供することで支援する動きが盛り上がりを見せている。すでに大手通販企業を含め様々な事業者が乗り出しているが、それらに加えて、新しくユニークな切り口で生産者らをサポートしたり、高い成果をあげる試みも出てきている。注目すべき取り組みを見ていく。

 














滞留在庫を現金化 ECで常時6割引

 スポーツ用品在庫の買い取り販売などを手がけるPINCHHITTER JAPAN(ピンチヒッタージャパン)は6月12日から、新品未使用のアパレル在庫を一括で買い取って常時60%引きで販売するオフプライス通販サイト「LASTSALE(ラストセール)」を開設した。

 新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響を受け、アパレル店頭は休業を余儀なくされて春物が売れず大量に在庫を抱えていることから、同社ではスポーツ用品の買い取り・販売のノウハウを元に、アパレルのメーカーや卸、小売店の在庫買い取りに着手。滞留在庫を一括で買い取ることでメーカーなどは在庫を現金化できるほか、アパレル業界で問題となっている衣類の廃棄量削減にも貢献できると判断した。

 引き続き、コロナへの警戒が必要な中、同社ではオフプライスストアの実店舗出店はリスクが高く、全国を商圏に販売できる通販サイトの開設を決めた。これまで、仕入れた在庫の販売チャネルとしてECプラットフォームを利用することはあったが、自社通販サイトを開設するのは今回が初めて。

 新設した「ラストセール」はメーカー小売り価格から常時60%引きで販売。一定期間を過ぎても売れ残った商品はファイナルセールとして70~90%で販売する予定だ。

 商品ラインアップはメンズとレディース、キッズのアパレルはもちろん、腕時計やバッグといったファッション小物も扱う予定で、取り扱いブランドや商品カテゴリーを順次広げていく。ただ、メーカーや卸などの滞留在庫を買い取って販売する業態のため、常に同じブランド、商品を扱うのではなく、スポット的な販売となる。

 また、スタート時は「ニューバランス」や「リーガル」「ドクターマーチン」「クラークス」「ラルフローレン」などシューズを中心に500ブランド弱を取り扱う。送料は全国一律950円だが、9800円以上の購入で送料無料となる。

 同社は今期(2021年3月期)、店頭在庫の滞留もあって取扱高を大きく伸ばしており、新規事業の「ラストセール」単体でも初年度は11億円の売上高を見込んでいる。

 なお、ピンチヒッタージャパンは、国内では大手靴量販店やスポーツ店、セレクトショップ、メーカーからの買い取り実績が多く、リピート利用も広がっているようだ。販路は国内のECチャネルや小売り店、国外にも幅広くルートを持っており、アパレルメーカーやECを含めた小売り企業から査定依頼を受ける際は販路規制についても聞き取りし、依頼先の信用損失やブランド価値の毀損を防ぎながら販売している。

先払いライブコマースで生鮮品販売

 レシピ検索サイトを運営するクックパッドは運営する生鮮食品EC「クックパッドマート」で「先払い型ライブコマース」を開始した。新型コロナの影響で食に関するイベントの自粛や延期が相次ぐ中で、消費者が生産者の想いや生産の現場の知る機会を作り、生鮮品の販売増につなげたい狙いだ。

 先払い型ライブコマースとは生鮮品などを先払いで販売し、購入者には商品を届けるまでの間に生産者や食材にまつわるストーリーやさまざまな体験を提供するという新しい買い物体験を狙ったものだという。例えば来年収穫予定の米を田んぼの区画ごと販売して、事前に購入した顧客に田植えや収穫に参加する権利のほか、ライブ配信などにより生長過程の確認や生産者とのやりとりを楽しめる機会などを用意。食材にまつわるさまざまな体験を提供することで商品が届くまでの時間を楽しめるようにするという。加えて購入した食材のおいしい食べ方やレシピ投稿を推進し、他の利用者や生産者へ伝えることにより、料理の楽しさを広げていける取り組みも行うという。

 事前購入方式を採ることで生産者は売れ残りを気にせず、生産に集中でき、また、商品の廃棄を減らすことにつながることにもつながるという。

 先払い型ライブコマースの第一弾として、横浜中央卸売市場の創業80年を越える老舗のまぐろ問屋「八清」と連携した「まぐろ解体ショー&販売会」を実施した。解体する本まぐろは6月1日の午前8時から同6日の午前8時まで販売。まぐろ解体ショーは6月6日の午前7時から約30分間にわたってYouTubeでライブ配信を行った。ライブ配信では用意した本マグロ2尾をその場で赤身や中トロ、大トロ、頭肉、頬肉、カマなどの部位にわけてさばき、その日のうちに配送した。

 同社では今後も定期的に先払い型ライブコマースを展開していく考えで、生産者や販売者の募集を行っていくとしている。

飲食店のEC支援成果報酬型で紹介

 企業やブランドのファン育成を支援するアジャイルメディア・ネットワークは6月11日、通販サイト「スタンプワークス」において、コロナの影響を受けている飲食店を支援する「#お店の味を自宅で楽しもう」プロジェクトを始めた。

 飲食店の自慢の一品をネットで販売するまでをサポートするとともに、”お店に食べに行ってみたくなる”ことを目指した情報発信も含め、アフターコロナを見据えた飲食店のビジネスを完全成果報酬型で支援する。

 「スタンプワークス」は国内の魅力的な商品をサイトの編集部や各業界に精通したコミュニティーメンバーが実際に試してレビューし、納得した商品だけを掲載、販売するストーリーコマース型のセレクトショップだ。

 今回、コロナで顕在化している飲食店の課題解決を図りながら、販促活動もしづらい現状に配慮したプロジェクトを展開。参加店舗は初期費用や月額費用などの固定費はかからず、発生するのは商品が売れた際の販売手数料15%だけとなる。

 プロジェクトは短期的な資金集めではなく、長期に渡って店の売り上げにつながることを目指し、ECを通じて商品を販売することで新しい顧客の獲得と、店の商圏を超えて日本中に良い品を届けることができるメリットを提案する。

 ECチャネルで出会ったユーザーが「いつかお店に行ってみたい」と思えるよう、各店の自慢の一品を「スタンプワークス」編集部員とライターが実食し、商品の魅力をレポートとして同サイトに掲載するだけでなく、店舗やシェフを主役にした記事作りも行い、最終的に店舗利用につなげたい考え。

 プロジェクトの第1弾は東京・虎ノ門ヒルズに店舗を構えるモダンフレンチレストラン「サンミ ラボ」が登場し、「完全栄養食カレー」を販売する。また、第2弾は関西の人気ローストビーフを予定するなど、今後も商品ラインアップを充実させる計画だ。

 アジャイルメディアではアフターコロナの新しい生活様式に合わせ、足を使った”食べ歩き”や”グルメサイトの評価”ではなく、EC購入し”実際に食べてみて”気に入った店に足を運ぶ新しい店選びの提案や、地方の店も積極的に発掘することで「いつか食べに行きたい」というユーザーが旅行も兼ねて訪れるような”ゴーツートラベル”にも寄与したいとしている。


窮状把握から3日で返礼品をサイト掲載

 楽天では、ふるさと納税のポータルサイト「楽天ふるさと納税」に新型コロナウイルス感染拡大の影響に対する支援を目的とした特集ページを設けている。多くの自治体から要請を受けた立ち上げた企画で、ページ内では生産者の声なども紹介している。

 岡山県笠岡市が楽天ふるさと納税で返礼品として用意している「瀬戸内の土で育てたミネラル玉ねぎ7・5キロ」(寄付額3000円)は、5月下旬に急きょ追加されたものだ。同市の農業法人、エーアンドエスは年間1700トンの玉ねぎを生産しているが、コロナ禍で出荷先からのキャンセルが相次いだことで、400トンの新玉ねぎが収穫されず、そのまま廃棄される恐れがあったという。

 休校や飲食店の休店などで農産物の需要が全国的に減少したが、笠岡市でも市内の農業生産者から「生産した農作物が余り困っている」という声が相次いでいた。小林嘉文市長から「事業者支援をなるべく早く行うように」という指示があり、同市では部をまたいでの対策会議が毎日行われていたという。エーアンドエスの窮状に関しては、5月18日に笠岡市側が把握。同社は岡山県内でも有数の玉ねぎ生産事業者であることから、小林市長が翌日に現地を視察。「せっかく育てた玉ねぎを廃棄したくない」という事業者の声を受け、同行していた笠岡市ふるさと納税担当者と協議し、事業者支援の一環として、楽天ふるさと納税への出品を決めたという。

 20日には返礼品ページを作成、翌日の21日に返礼品を掲載し、寄付受付を開始した。楽天によれば「楽天ふるさと納税経由で、一定量の玉ねぎを提供できたと聞いている。また事業者に対してサイト掲載、メディア掲載等がきっかけで、ふるさと納税以外にもさまざまな業種から引き合いがあったようだ」(EC広報課)という。

 楽天では笠岡市と同様の手法での返礼品掲載を募集しており、コロナ禍で窮状にある事業者や生産者は「各自治体の担当者に連絡してほしい。また、自治体のふるさと納税担当者は当社の担当コンサルタントまで連絡してもらいたい」(同)としている。


テレビ通販でバーチャル物産展

 テレビ通販最大手も生産者、販売者の支援に向けて動き出す。通販専門放送を行うジュピターショップチャンネル(JSC)は今秋にもテレビ通販を通じた”バーチャル物産展”を実施する。新型コロナの影響で販路縮小を余儀なくされた食品事業者の食品を紹介、販売する特別番組を「全国うまいもの物産展」(仮)と題して10月8日に同社の通販専門チャンネルで2時間にわたって放送する計画だ。番組では商品紹介時に当該商品の販売事業者の担当者も出演し、司会進行役と一緒に自社商品のこだわりなどを紹介、訴求するもの。

 「全国うまいもの物産展」の実施に伴い、6月16日から7月末まで同番組で食品を販売したい事業者の募集(同社のウェブサイトの専用応募フォームより)を行う。採用者数は10社程度を予定しており、通販の経験や百貨店・大型イベント会場での催事に近年出展経験があること、また、今回の企画では顧客への商品発送を事業者自身が行う予定としているため、JSCの食品基準を満たす品質管理体制や出荷体制を備えていることなどが応募条件となる。

 「新型コロナウイルスとの共存時代を迎え、通信販売は買い物における選択肢の一つから、生活に欠かせない手段へと変わりつつあり、今後の小売業界では非接触型の接客の普及が見込まれる。ショップチャンネルは3000万世帯へリーチできる配信力、直接商品を手に取ることができないお客様に商品の価値を伝える販売力が強み。これらをいかし、自宅から参加・納得して購入ができる新しい『物産展』をお客様にお楽しみ頂きたい」(同社)とし、「有店舗での物産展イベントは新型コロナウイルスの影響で中止や規模縮小が相次ぎ、食品販売事業者の販路が減少している。番組で全国のお客様へ発信・販売することを通じ支援を行いたい」(同)という。

 初回の反響などをみながらとなるが、”バーチャル物産展”は今後も継続的に企画・放送していきたい考え。また、今回は食品に絞った企画としたが、他のジャンルでの展開も検討していくとしている。


 
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