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注目各社のOMO戦略は? ECへ誘導やシナジーに期待、新規層獲得や認知拡大も

2025年 5月 1日 12:00

 通販を含む小売事業者にとって最も注力すべき重要な事柄の1つがOMO戦略だ。消費者にとって店舗はもちろん、ネット販売で商品やサービスを購入することはもはや当たり前。それを前提にサービスを設計してオフラインとオンラインを連携させて利便性の高い事業展開を行い、サービスレベル向上はもちろん、業績面でも成果を出し始めた事業者も出てきている。注目すべき通販実施事業者各社のOMO戦略の現状と狙いを見ていく。


 
グロウ
ブランド知名度拡大へ


 子供服ECのグロウは4月4日、子供服ブランド「devirock(デビロック)」の実店舗を、JR大阪駅に直結した商業施設「KITTE大阪」に開設した。同社が常設店舗を運営するのは初となる。年商1億円が目標。
 同社はEC専業として2008年に創業した。自社企画の子供服を、直貿により中国で生産。1000円を切る低価格路線で、特にストレッチパンツがヒット商品となった。仮想モール「楽天市場」を中心に売り上げを拡大、2024年8月期売上高は約50億円だった。

 実店舗開設の目的について、マーケティング本部の網谷洋佑本部長は「ECでは知名度も上がってきたが、アパレル市場におけるEC比率は2割程度。日本一の子供服企業を目指す中で、残り8割の顧客にアプローチするには、店舗が必要だと考えていた」と説明する。

 同社は22年8月期に赤字転落。社員が多数入れ替わるタイミングと、コロナ禍で競合となる子供服企業がECに注力したことが重なったのが原因。上履きやランドセル関連の便利グッズなど、雑貨を中心として小学生向け商品のラインアップを拡充、ブランドの再構築を進めることで、再び成長路線に乗った。

 網谷本部長は「3年かけて作ってきたブランド基盤や商品ラインアップを考えれば、実店舗の世界における子供服の競合と比較された場合でも、当社商品を選んでもらえるのでは、という自負がある。また、大阪万博が開催されており、関西が盛り上がるタイミングで出店したいと考えていた」と話す。

 店舗では、ECで扱う商品のうち、約3割程度を販売している。ECでの人気商品や、他社とのコラボレーション商品を中心に扱っている。

 売り場では、プリントTシャツなどの人気アイテムを前面に出した。また、夏に向けてランドセル用の冷却グッズや浴衣なども展示。さらには、大阪の店舗ということもあり、阪神タイガースとのコラボ商品も販売、「売れ行きはECよりも良い」(網谷本部長)という。

 開設後の手応えについて、網谷本部長は「子供服は『週末に郊外のショッピングモールへ家族で行ったときに買い物をする』という需要が根強いが、KITTE大阪は大阪駅直結で、アパレルの競合も少ない。条件的にはあまり良いとは言えないが、思っていた以上に来店者が多い」と評価する。来店者には、クーポンも込みで「デビロック」アプリの導入を推奨。ダウンロードする顧客も多いことから、ECとのシナジーも期待する。

 また、海外からのインバウンド客の来店も少なくないことから、実店舗でブランドの知名度を高めることで、将来の海外展開につなげる狙いもある。

 同社では、ECにおける成長にプラスする形で、実店舗の出店を加速、早期の売上高100億円到達を目指す。「ECと実店舗のシナジー効果でブランドの知名度を高め、子供服市場におけるシェアを高めていきたい」(網谷本部長)。

 
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