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ジャパネットが旅・定期販売品の大幅強化へ、今夏から3ブランドに分けて訴求

2023年 4月20日 12:00

 ジャパネットグループが旅行商品や定期販売品の企画、販促を強化する。グループ内に旅行事業に特化した専門会社を新設して展開中のクルーズ旅行の催行数を増やしたり、航空機による移動と高級宿をセットした国内ツアーの企画・販売を新たに開始する。また、展開を強化する定期販売品の新たなラインアップに独自開発した機能性表示食品を加え、拡販を進める。旅行商品や定期販売品の拡充に合わせて訴求も一新。旅行、定期販売品、主力の家電などを別ブランドとして通販番組、通販カタログ、通販サイトもそれぞれ分けて展開して訴求を強化する。コロナ禍が収束し需要増が見込まれる旅行分野とジャパネットの顧客層と親和性が高く、リピート購入が見込める健食を含む定期販売品の強化で家電以外の商材群でも収益拡大を図り、さらなる成長につなげる狙い。
 




国内ツアーの企画販売をスタート 

 新規事業を手がけるジャパネットサービスイノベーションで行なってきた旅行事業を3月1日に立ち上げたジャパネットツーリズムに移管、同事業を強化する。前期(22年12月期)はコロナ禍の影響で予定していた催行を中止とするなど厳しい状況だったものの、前々期は年間100億円近い売り上げを上げるなどクルーズ旅行の販売は順調だが、新会社のもと、さらに企画を強化。今期(23年12月期)は大型客船「MSCベリッシマ」を全船貸し切って日本各地などを巡るクルーズ旅行を年間13回企画する。13回の催行で最大乗員は約5万3000人となり、売上ベースでは約150億円となる予定だ。

 クルーズに加え、国内ツアーの企画・販売も始める。資本業務提携を結ぶスターフライヤーのほか、日本航空とも連携して航空機チケットと高級宿をセットに沖縄や北海道、九州などへのツアーを企画する。

 ジャパネットサービスイノベーションの社長で新設したジャパネットツーリズムの社長も兼務する茨木智設氏によると「様々な内容、宿のツアーではなく、家電など他の商材を販売する場合と同様に、ジャパネットらしく当社がしっかり内容や宿を厳選したものを提案させて頂く」とし、顧客のニーズにあわせ、ある程度ラインを絞ったうえでツアー商品を展開していく考えのようだ。

 来春には高級船「シルバームーン」を全船チャターして東京港発着で各地を巡るクルーズ旅行の初催行を計画しており、今春から販売を開始する予定。現行のクルーズ旅行の販売価格は70万円程度がボリュームゾーンだが、「シルバームーン」は全300室を300万円程度で販売する計画。「現状のクルーズでも100万円台の部屋から完売となり、キャンセル待ちも数百人あるという状態。ラグジュアリー感のある『シルバームーン』のクルーズは需要が見込める」(茨木社長)とし、より高級感のあるクルーズ旅行を提供することでリピーターの需要の取り込みを図っていく。

初の独自開発の健康食品発売へ

 また、初となる独自開発の健康食品の販売へ乗り出す。ジャパネットではこれまでも仕入れ品のローヤルゼリーの健康食品の販売は行ってきたが、今回は同社では初となる機能性表示食品「にんにくサフランW(ダブル)」というサプリメントを開発、健康補助食品GMP認定を持つ委託先の工場で製造、5月末をめどに発売する予定。機能性関与成分として配合している「S‐アリルシステイン」「サフラン由来クロシン」「サフラン由来サフラナール」によって、一時的な身体的、精神的な疲労感の軽減や睡眠の質(活動時の眠気)の改善を図れるなどと表示、日中を意欲的に過ごしたい人に訴求するとする。

 ジャパネットホールディングスの髙田旭人社長は「健康食品の本格販売はずっと検討してきた。ただ、ジャパネットが販売すべき健食とは何かと考え、様々な素材を検討し、粗利を減らしてでもよりよいものを作ろうと1年がかりで商品化を進めてきた」とする。

 同社では収益の安定化を図る狙いなどから食品や日本酒、果物の頒布会のほか、ウォーターサーバーなど定期的に商品を配送する定期販売品の強化、拡充を進めており、機能性表示食品「にんにくサフランW」についても定期販売商品として販売していく考え。

 「今後も(「にんにくサフランW」)との飲み合わせなどを考慮しながら第二弾、第三弾の機能性表示食品を発売して幅を広げていきたい」(ジャパネットたかたの田道祐樹常務)という。

ブランドごとに媒体を作成

 旅行商品や独自健食の発売に伴う定期販売品の拡充・強化などに対応して販売方法も6月をめどに一新する。家電・非家電商品、頒布会などの定期購入商品、旅行商品の3つのブランドに分けて展開する計画。「これまでの家電中心から食品の頒布会や水、旅行と取り扱うものが増えてきた中で、すべて『ジャパネットの通販』として番組やカタログなどで紹介してもお客様にとって分かりにくいし、同じ見せ方ではマンネリ化してしまう。当社としても異なる商材を『ジャパネットの通販』という同一ブランドでどう訴求すればよいか(通販番組などの)制作側も混乱してきていた」(髙田社長)という。

 そのため、今後はそれぞれテレビ通販、通販カタログ、通販サイトも分けてブランドごとに訴求していく形に改める。通販番組であれば「本日はクルーズ旅行をご案内します」、「本日は日本各地のおいしいものを紹介します」といったように同じ放送枠であっても紹介する商材に合わせて日ごとにブランドを変えて、訴求していく。ネット販売サイトもこれまでは「ジャパネットセンカ」内でジャンルに関わらず、すべての商品を紹介してきたが、3ブランドごとにテイストの異なる独立した通販サイトを設ける。通販カタログについても総合カタログ「ジャパネット倶楽部」でこれまですべての商品を紹介していたが、ブランドごとに別々のカタログを創刊、発行していくことにする。

塚本氏、中島氏が役員として管轄

 訴求方法の変更とそれに伴う拡販強化のために体制も見直す。販売を担うグループの中核企業であるジャパネットたかたで現在、通販番組で進行と商品紹介を行うMCの顔として知られる塚本慎太郎氏も中島一成氏同様にジャパネットたかたの専門役員に就任した。

 旅行商品と定期購入商品については塚本氏が担当役員としてグループのジャパネットブロードキャスティングが運営するBS放送局「BSJpapanext(ビーエスジャパネクスト)」の都内のスタジオで、家電・非家電商品は中島氏が担当役員として長崎・佐世保の本社スタジオでそれぞれ専門チームを作ってテレビ通販を展開し、各ジャンルで最適な訴求方法を追求していく考え。

定期販売商品をクロスセル

 拡販強化のための施策も強化する。特に定期購入商品ではすでに何らかの定期販売品を購入している顧客に別の定期販売品を薦めるクロスセルを展開していく考え。具体的には食品の頒布会やウォーターサーバー「ジャパネットウォーター富士山の天然水」の契約者に対して、健康食品の定期購入を促すなどだ。田道常務によると「これまでは食品の頒布会、ウォーターサーバーなどとそれぞれで部分最適を追求してきており、(他の定期販売品と)シナジーがなかった。部分最適ではなく、定期販売の全体最適という観点を考えながら、定期的に当社から届く商品に満足頂き、信頼を頂き、契約を続けてもらっているお客様に、自信をもってお薦めできる他の定期販売品についても試して頂けないかと考えた」とした上で「お客様にとってお得感のある形でご紹介したい」(田道常務)とし、例えば複数の定期販売コースの契約者は価格を割り引くなどの特典を用意して、従来まではほぼ行なっていなかったクロスセル施策を通販カタログなどで行っていく考え。

 3月末現在、ウォーターサーバー「ジャパネットウォーター富士山の天然水」の契約者がおよそ13万人。頒布会の会員数は食品が18万620人、果物が1万3895人、日本酒が6736人。これらに加えて、スマートフォンの契約者や、70万人を突破した同社発行の独自クレジットカード「ジャパネットカード」の契約者らにも各定期販売の商品・サービスを相互に紹介してそれぞれの会員・契約者の基盤を伸ばしていく考え。機能性表示食品の拡販にも同取り組みを活用して垂直立ち上げを行っていきたい狙いもあるようだ。

 また、「BSJpapanext」との連動を強化し、同局で放送する旅番組で「(番組に出演する)タレントにジャパネットで販売するツアーに盛り込んでいる旅館に実際に宿泊してもらい、紹介していく番組を作り、後半で実際にツアーの販売を行う」(ジャパネットブロードキャスティングの佐藤崇充社長)など番組と商品販売を連携させた取り組みを、旅行商品だけでなく食品の頒布会などでも行う計画のほか、「BSJapanext」の番組のために撮影した映像素材を活用して訴求力の高い通販番組を制作する取り組みも行う。「旅番組では例えば温泉や料理を様々な角度から丁寧に撮影する。通常、通販番組ではそこまではしない。旅番組と通販番組で使用する素材を一緒に作っていく体制にすることで、地上波を含む自局以外の通販番組でもより魅力的な映像を使って訴求力の高い通販番組を放送できるようになる」(同)とする。

受注、アフターサービスを同窓口に

 こうした拡販策などにも対応する形で電話対応も変更する。これまで受注と商品への問い合わせ・返品対応・使用方法などのアフターサービスの電話窓口は別々としていたが、食品の頒布会やウォーターサーバー、スマートフォン販売などは受注からアフターサービスまでを一貫して同じ窓口で行う体制とする。従来から「ジャパネットカード」の保有者には特典として専用窓口で受注からアフターサービスまで一貫して対応してきたがそうした形に改める。

 ジャパネットグループで商品配送やアフターサービスなどを手がけるジャパネットロジスティクスサービスの担当者によると「定期販売品の顧客からすると注文もコース変更や問い合わせなども契約期間内で行う手続きの1つ。別々の窓口ではなく、同一窓口に対応するようにすることでお客様の利便性を高めたい」という狙いがあるという。

 業績については前期(2022年12月)はコロナ禍によって予定していたクルーズ船催行の中止や巣ごもり消費増の反動減で売上高は前年比0・7%減の2487億円と2012年度以来の減収となったが、クルーズの強化と国内ツアーの販売開始などで今期は過去最高となる200億円程度を目指す旅行事業のほか、販売を開始する機能性表示食品を含む定期販売品の相互送客や各商材に特化した訴求による各商材の拡販などにより、今期以降は再び成長軌道に戻す考え。

 通販事業での新たな取り組みのほか、「リージョナルフーズ長崎」という飲食業の専門会社を4月に新設して、2024年に開業を目指して長崎市内で建設を進める大型複合施設「長崎スタジアムシティプロジェクト」内で自前でのレストラン運営に乗り出す準備を進めるなど通販事業と両軸で進めるスポーツ・地域創生事業でも矢継ぎ早に様々な挑戦を続ける。

 創業38年目。グループ会社は15社、グループの総従業員数は3828人と大きく成長を遂げたジャパネットだが、「いまだベンチャー企業という感覚で新しいことをどんどんやり続ける会社でありたい」(髙田社長)と話す。

 
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