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楽天グループ ARでCVRに効果、3Dで家具コーデも提案

2024年 4月18日 12:00

 楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」では昨年11月28日より、一部インテリア関連商品を対象に、AR(拡張現実)機能を用いて、商品のサイズや設置する空間との相性など、イメージを確認できる機能の提供を本格的に開始した。導入した店舗においては、CVR(商品購入率)が上昇するなどの効果が出ているようだ。

 「楽天市場」では、3年前から一部店舗へAR機能の試験導入を開始した。アカウントイノベーションオフィス事業企画課ニューカテゴリー戦略グループの加藤雅人マネージャーは「どういう形で導入すれば消費者に購入してもらえるのか、導入することでCVRにどんな影響があるかをテストした」と話す。昨夏より対象となる商品数を増やし、CVR上昇などの効果が期待できると判断し、正式提供を決めたという。

 現在はインテリアカテゴリーや寝具カテゴリーを中心に、38店舗が導入。店舗運営システム「RMS」に、指定ページのURLを貼付するだけで機能が導入できる。猫用の遊具「キャットタワー」や犬用のケージなど、一部ペットカテゴリーでもAR機能を使っている店舗があるという。やはりAR機能への消費者の需要が高いとみられるのは、サイズ感や設置できるかどうかが、画像だけでは判断しにくい大型家具。さらにはデザイン性が高い家具、ペット向け遊具などもAR機能の導入効果が高いとみられる。

 ユーザーは購入検討時に、スマートフォンから商品ページ上にある「ARで試し置き」バナーをタップし、カメラを起動することで、商品を設置する空間に実物大で設置したイメージを360度好きな角度から確認し、商品の比較検討ができるようになる。3Dデータのクオリティーの高さも特徴だ。

 ただ、せっかく機能を導入してもユーザーに使ってもらえなければ意味がない。そこで「ARを起動するボタンや、AR機能を説明するバナーを当社で用意している。ただ、ボタンやバナーを掲載する位置やデザインによってクリック率が変わってくるので、かなり試行錯誤した」。

 AR機能はアンドロイド・iPhoneのみでの対応となるが、ページ上部から2~3スライドした程度にボタンやバナーを置くと効果があるという。商品説明文が終わったあとにあるとタップされにくい。AR機能を利用する店舗に対して「もう少し商品ページの上部にバナーを配置した方がタップされやすい」といったアドバイスも行っている。

 機能をうまく活用しているのは、アイリスオーヤマグループのe―net shopが運営する「収納・家具・寝具の収納宅配館」だ。同店では独自にAR機能の操作手順などをまとめたページを作成。AR対象商品をカテゴリー別に閲覧することもできる。さらに「モダンテースト」「ヴィンテージテースト」など、イメージごとに商品を用意し、ARで試し置きしながらコーディネートできる特集ページも用意した。また、AR起動ボタンには動きのあるGIF画像を利用して「ARが使える」ことを視覚的に分かりやすくしている。

 機能導入店舗からは「ユーザーからの問い合わせが減った」「CVRに改善がみられた」といった声が出ている。実際に、AR機能を導入した一部店舗において、オフィスチェアは13・0%、収納家具は12・5%、テーブルは9・1%、椅子・チェアは8・3%、それぞれ導入以前よりCVRが上昇している。また、導入した店舗においては「『インテリアのサイズ感』に関する低評価レビューも減少傾向にある」(加藤マネージャー)ようだ。

 現在の課題は、より詳細な効果検証。「どれだけARがタップされたかは店舗に開示できているが、ARを見た人が購入したかどうかまでは伝えられておらず、今後効果の検証について改善をしていきたい」。また、AR機能を導入することによる”付加価値”も高めていく。加藤マネージャーは「楽天市場は多種多様な商品が販売されているが、一方で慣れていない消費者にとっては欲しい商品が見つけにくいという面もある。例えば『このサイズの椅子が欲しい』と入力すると、AR機能に対応した椅子が表示される検索機能を設ければ、店舗としても機能を導入するきっかけになるのではないか」と話す。さらには、「楽天市場」としてARを活用したインテリアコーディネートの提案も視野に入れる。

 「AR起動ボタンをタップするのが面倒だ」というユーザーへのアプローチも課題となる。そのため、ARを起動するボタンの上部に「360度で確認する」というスペースを設け、ボタンを押さなくても家具の3Dデータが閲覧できるようにしている店舗もあるという。

 現在の導入店舗やインテリア・寝具が中心だが、今後はキャンプ用品などのアウトドアグッズ、大型玩具、さらには家電製品、DIY製品を扱う店舗にも導入を進めていく。加藤マネージャーは「大型製品を買う際には『まずAR機能を使ってみよう』という文化を育てていきたい」と意気込む。
 
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