JPは顧客視点の意識を持て
郵便事業会社(JP)は今年度の事業計画で、採算性が悪化している「ゆうパック」について、抜本的な事業運営体制の見直しを盛り込んだ。「ペリカン便」との宅配便事業統合を受けて構築した宅配便の輸送網を白紙に戻し、郵便物との混載による効率化などを骨子としたもので、JPはこれにより年間300億円程度のコスト削減を見込む。6月から本格的な検討作業に入っている状況だが、並行して進めている荷主企業への運賃単価引き上げ交渉が、通販荷主離脱の引き金になりそうだ。
今回、JPが打ち出した「ペリカン便」の採算性改善策は、かなり思い切ったものと言える。もともと宅配便を郵便物と別立てで輸送する仕組みとしたのは、荷物の送達速度を速め、サービス品質を向上させることにある。これに対し、郵便物と宅配便の混載は、以前の「ゆうパック」のスキームに戻すものだ。理屈上、荷物と郵便物との混載でコスト削減が進むのは確かだが、このスキームは送達速度が遅くなるなど、サービス内容の後退を伴うことになる。
通販関連の荷物が増加する中、宅配便各社が商品を受け取る顧客を重視したサービス品質の向上に取り組んでいる状況を考えれば、JPが打ち出した施策はこれに逆行する。言い換えれば「ゆうパック」は、宅配便としての競争力を落としてでも収益を回復させなければならない状況にまで追い込まれているわけだ。
この要因と言えるのは、昨年7月の「ペリカン便」との統合直後に発生した大規模な遅配問題だろう。この際には、産直品を扱う通販事業者では商品がダメになるケースもあり、新生「ゆうパック」のサービス品質に不安を感じさせるものとなった。この大失態は、荷主である通販事業者の離脱を招いただけではなく、遅配による損害の補償、中元期のように失敗が許されない歳暮期を乗る越えるための体制整備など多方面に影響が及んだ。荷主企業の離脱による取扱荷物の減少と想定外の出費が重なり、収益性の悪化が進んだことは想像に難くない。統合段階における準備不足、遅配発生直後の対応の甘さが仇となり、大きな代償を支払うことになったわけだ。
一方、今回の収益改善策では、荷主企業に対する運賃単価の引き上げ交渉を盛り込み、JPでもすでに通販などの荷主企業との交渉を進めている。だが、昨年の遅配問題に起因したサービス品質への不安、郵便物との混載輸送に伴う基本サービスレベルの低下を考えれば、荷主企業が単価の引き上げに応じるとは考えにくい。実際、単価引き上げの話を受けた通販事業者の中には、他の宅配便への切り替えを検討しているところもあり、「ゆうパック」の通販荷主離れは避けられない情勢だ。
再三にわたる統合計画の遅れ、大規模な遅配と散々迷惑をかけた挙句、そのツケを荷主企業に払わせようという構図は、通常の感覚で考えれば明らかにおかしく、顧客サービスを重視する通販荷主が離れていくのも当然だ。JPは、なりふり構わぬ採算性改善策で「ゆうパック」の存続を考える前に、顧客の視点に立ったサービス提供の重要性をしっかりと心に刻むべきだろう。
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一方、今回の収益改善策では、荷主企業に対する運賃単価の引き上げ交渉を盛り込み、JPでもすでに通販などの荷主企業との交渉を進めている。だが、昨年の遅配問題に起因したサービス品質への不安、郵便物との混載輸送に伴う基本サービスレベルの低下を考えれば、荷主企業が単価の引き上げに応じるとは考えにくい。実際、単価引き上げの話を受けた通販事業者の中には、他の宅配便への切り替えを検討しているところもあり、「ゆうパック」の通販荷主離れは避けられない情勢だ。
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