通販にクーリングオフは不要

2011年06月23日 12:06

2011年06月23日 12:06

 欧州各国で通販にクーリングオフ制度が導入される見通しのようだ。欧州連合(EU)は加盟各国でこれまでバラバラだったクーリングオフ期間などについて統一したルールを策定。消費者は商品購入後、14日以内であれば原則、無条件で契約解除が可能で返品できるというものらしい。さらにこのクーリングオフの権利を通販事業者が消費者に通知していなかった場合は契約解除の期間が1年間に延長されるという。

 こうした欧州の動きについて「ネット販売が一般化しつつある今、消費者保護の観点からも時代にあったよい制度だ」「通販にクーリングオフを導入することで消費者が安心し逆に通販・ネット販売の市場は伸びる」などの声が日本国内でもあがっているようだ。しかし、言うまでもなく通販におけるクーリングオフ制度などまったく不要である。欧州の動きや「消費者保護強化」という美名のもとに日本の行政や政治家が変に触発され、「日本でも...」という愚行を犯さないことを願うばかりである。

 そもそもクーリングオフとは訪問販売や電話勧誘販売など販売員が不意打ち的に接触し、商品を購入してしまった際に適用されるものだ。不意打ちでは商品購入を十分に検討する時間がないためだ。一方、通販の場合は消費者自身が時間をかけてどの商品をどの事業者から購入するかを自ら決定できる。そういった意味からすると、通販は店頭で商品を購入するのと何ら変わりはない。店頭での買い物にクーリングオフがない以上、通販においても不要だということだ。なお、09年に施行された改正特商法であらかじめ返品の条件を明示していない場合、通販で購入した商品でも8日以内であれば返品できる返品特約が盛り込まれたがこれはクーリングオフではない。

 大手の総合通販事業者は以前から、近年では有力ネット販売事業者でも独自のルールを設けて、返品返金に応じているが、これはあくまで企業としての販売戦略の一環である。個別の企業が自らの意思や戦略に基づいて、返品対応を行うことは無論、当該企業の自由である。一部の通販事業者が実施している購入後にサイズが合わなければ何度でも返品交換ができる、試着のようなサービスは通販の欠点である「実際に手にとって商品を確かめられない」というデメリットを解消する非常に有効な施策であるとさえ言えるだろう。

 しかし、法律で強制的に無条件で返品に応じろ、ということになると話は別である。事業者に著しい負担を強いることになるからだ。前述のようにすでに自社のサービスとして返品対応を行っている大手通販にしても独自のルールに基づいて運用している訳で、再販できない状態での返品には応じていないはずだ。体力のある大手通販ではそれでも何とか対応できようが、中小規模の通販事業者は到底、持ちこたえることはできまい。結局はそうしたコスト負担は価格に転嫁され、事業者にとっても消費者にとっても何ら利はない。クーリングオフ導入が通販市場の発展につながるなどは、まさに絵空事だ。欧州のことは知らないが繰り返すが少なくとも日本においては通販にクーリングオフは不要である。

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