消費者委は過ちを繰り返すな
「とんだ茶番」ではないか。今年8月にまとめられた消費者委員会「健康食品の表示の在り方」に関する中間整理に係る審議のことだ。審議は2009年~10年にかけて消費者庁で行われた「健康食品の表示に関する検討会」の論点整理を受けて始まった。健食表示の効果的な規制のあり方について、具体策を提示するのが狙いだった。だが、示された提言には、先の検討会で退けられた意見が蒸し返されたとしか思われないものが散見される。いずれも消費者目線を自認する消費者団体や弁護士の"願望"に近いものだ。
消費者委による審議には当初から懸念が示されていた。審議を行う委員会メンバーの多くは健食についてさしたる知識を持ち合わせていないためだ。継続審議を行うこと自体、事業者出身の委員自ら「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と指摘するほどだ。
それだけではない。委員会にヒアリングで招かれたのも、検討会に参加した日本通信販売協会、日本健康・栄養食品協会、日本医師会、国民生活センター、食の安全・監視市民委員会代表の神山美智子弁護士など見た顔ばかり。健食に関する知識は消費者委メンバーより深く、審議は最後まで健食に対する理解を深める勉強会の域を出なかった。
異なる点と言えば、審議するメンバーが消費者団体や弁護士などに偏りがみられること。そんな委員会審議だから、まとめられた中間整理も消費者団体が検討会で主張していた意見が公然と提言に盛り込まれた。
一例を示そう。中間整理では、効果的な規制のあり方に向けた提言として食品衛生法の改正が盛り込まれた。「表示」のみ対象とする食衛法の規制対象を「広告」にまで拡大するというものだ。これは神山美智子弁護士が持論としているもの。検討会でも同じ主張がされたが、一方で健食の誇大広告は薬事法、特定商取引法、健康増進法、景品表示法など複数の法令が重複して規制対象としており、運用面の充実を図るとの観点から論点整理に盛り込まれなかった。
同じく今後の検討課題とされた事故情報の報告義務化と消費者からの申し出制度の導入。これも検討会に参加した山根香織主婦連合会会長が主張していたものだが、論点整理に含まれていない。にもかかわらず中間整理に盛り込まれたのは、同じ主婦連合会の佐野真理子事務局長が消費者委メンバーに加わっているためだろう。
自らの信念や所属する団体の総意を示したいのであれば、「消費者委」の看板を借りるべきではない。消費者、事業者双方の意見を踏まえ大局的見地から消費者視点を語り得ず、「消費者委」という権力をあからさまに利用するこれら団体に、消費者委として活動する資質があろうか。
今の時代、消費者目線を重視するのは、何も消費者団体ばかりではない。消費者委は8月末で解散となり、メンバーは任期を終えた。次期メンバーには前メンバーの失敗を教訓とし、二度と同じ轍を踏まないことを願いたい。
そのほかの注目記事FEATURED ARTICLE OTHER
消費者委による審議には当初から懸念が示されていた。審議を行う委員会メンバーの多くは健食についてさしたる知識を持ち合わせていないためだ。継続審議を行うこと自体、事業者出身の委員自ら「企業経営の立場で言えば物事を決める際、継続審議という形で委員会が引き継ぐのはおかしい。消費者庁と委員会で重複するテーマを整理すべき」と指摘するほどだ。
それだけではない。委員会にヒアリングで招かれたのも、検討会に参加した日本通信販売協会、日本健康・栄養食品協会、日本医師会、国民生活センター、食の安全・監視市民委員会代表の神山美智子弁護士など見た顔ばかり。健食に関する知識は消費者委メンバーより深く、審議は最後まで健食に対する理解を深める勉強会の域を出なかった。
異なる点と言えば、審議するメンバーが消費者団体や弁護士などに偏りがみられること。そんな委員会審議だから、まとめられた中間整理も消費者団体が検討会で主張していた意見が公然と提言に盛り込まれた。
一例を示そう。中間整理では、効果的な規制のあり方に向けた提言として食品衛生法の改正が盛り込まれた。「表示」のみ対象とする食衛法の規制対象を「広告」にまで拡大するというものだ。これは神山美智子弁護士が持論としているもの。検討会でも同じ主張がされたが、一方で健食の誇大広告は薬事法、特定商取引法、健康増進法、景品表示法など複数の法令が重複して規制対象としており、運用面の充実を図るとの観点から論点整理に盛り込まれなかった。
同じく今後の検討課題とされた事故情報の報告義務化と消費者からの申し出制度の導入。これも検討会に参加した山根香織主婦連合会会長が主張していたものだが、論点整理に含まれていない。にもかかわらず中間整理に盛り込まれたのは、同じ主婦連合会の佐野真理子事務局長が消費者委メンバーに加わっているためだろう。
自らの信念や所属する団体の総意を示したいのであれば、「消費者委」の看板を借りるべきではない。消費者、事業者双方の意見を踏まえ大局的見地から消費者視点を語り得ず、「消費者委」という権力をあからさまに利用するこれら団体に、消費者委として活動する資質があろうか。
今の時代、消費者目線を重視するのは、何も消費者団体ばかりではない。消費者委は8月末で解散となり、メンバーは任期を終えた。次期メンバーには前メンバーの失敗を教訓とし、二度と同じ轍を踏まないことを願いたい。