単品通販の脆さを認識せよ

2011年10月05日 17:11

2011年10月05日 17:11

悠香の自主回収を巡る騒動の拡大は、企業が「製品回収」という事態に見舞われた際、どのように消費者対応すべきかの教訓を残し、また、消費者の"安心・安全"に対する要求が高まる中、品質保証がいかに重要なものになっていたかを再認識させるものだ。一方で業界サイドからすれば、これまで通販市場で強いとされてきた"単品通販モデル"の思わぬ脆さを露呈させたものでもあった。

 悠香は2008年(6月期)に約100億円、09年に同200億円、10年に同300億円と破竹の勢いで業績を伸ばしてきた。その姿は通販という業態の特性を活かし、潜在的な顧客ニーズに訴えかける強い単品商材を仕掛けていくことが、新たな市場を創出する可能性を秘めていることを業界内外に示しもした。

 昨年12月にはこれまで顧客要望を受けて販売してきたトイレタリー関連12アイテムの販売を終了。その決断に至る中山慶一郎社長の「集中こそが力を生む」という考えも単品通販モデルに欠かせない、根幹の理念を示すものであった。

 だが、今年5月の自主回収で悠香を取り巻く状況は一変した。厚生労働省の回収発表以降、7月の国民生活センターによる会見、8月に始まった全国の都道府県における被害者弁護団の結成、9月の国センによる2度目の会見と、そのたびに消費者はリマインドされ、「茶のしずく石けん=悠香」で知られたブランドイメージは著しく毀損された。11年6月期の業績は10~20%減の見通しを示していたが、いまだ新規獲得に向けた広告再開のメドも立っていない。業界関係者によると、今年4~7月の売上高は一説に前年同期比40%減で推移したとも言われる。

 キャッシュインの正常化のメドが立たない中、一方でキャッシュアウトの状況は、数百人いる従業員の人件費など固定費に加え、被害を訴える顧客への見舞金、また、全国の被害者弁護団と訴訟に発展した場合の裁判費用など後を絶たない。その影響の大きさも単品商材に拠って立つが故の脆さだろう。

 ただ、同様のリスクは単品通販を展開する他の通販各社にも例外なく起こりうる事態といえるのではないか。新興の企業であれ老舗企業であれ、消費者から見た企業の姿は同じ。社歴の浅さを理由に品質保証を疎かにしていたことが許されるものではない。

 化粧品業界に限らず、通販市場は今、異業種からの新規参入により競争激化に晒されている。その中にあって"単品通販モデル"は通販という業態の特性にマッチした事業モデルであり、その戦略は異業種との競争を勝ち抜いていく上でも有効に働くであろうことに変わりはない。

 だからこそ、通販各社は今後品質保証体制を再度点検することでリスクへの事前の備えとし、また、仮に自主回収など不測の事態に発展した際の企業対応のあり方を今一度見直さなければならないのではないか。

 また、一企業の甘い認識が自社への影響に留まらず、ようやく社会的認知を得てきた通販業界に対する消費者の信頼すら脅かしかねないものであることも忘れてはならない。

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