ネットの薬事違反に注意せよ
ネット販売企業のコンプライアンス意識が問われている。昨年、化粧品のネット販売専業大手イノベートが保健所から薬事法違反に基づく指導を受けたのに続き、同中堅のオズ・インターナショナルが今年9月、警視庁の一斉摘発を受け、薬事法違反で書類送検されたためだ。ネットの技術革新、消費者への普及を追い風に成長した2社の違反行為は、ネット販売業界の緩いコンプライアンス意識を印象づけるに十分なインパクトを持つ。行政や警察当局のネット上の違反行為に対する関心が高まる中、また、消費者のネット活用が進む中、市場の健全発展を図るため、ネットの広告表現に細心の注意を払う必要がある。
オズ・インターナショナルは今年9月、警視庁から未承認医薬品であるED(勃起不全)治療薬の輸入代行に関する広告違反で書類送検された。オズは送検の事実に「送検されてない」と応じていたが、このことだけでも、同社のコンプライアンス意識の低さが窺い知れる。
一方、イノベートは、保健所から輸入化粧品の一部に表示違反があった指摘を受け、自主回収を発表した。これと前後してスクロールが同社を買収。だが、買収の際に薬事法違反の事実を隠して利益をだまし取っていたとして今年10月、島根県警に元社長ら3人が逮捕されている。
未承認医薬品の個人輸入は法律上、禁止されていないが、言うまでもなく健康被害の恐れがあるため、決して推奨される行為ではない。特に、ED治療薬は規制強化から今では個人がネット上で違法に売買するケースがほとんど。これら個人に混じり、中堅規模の売上高を誇るオズが摘発を受けたのは余りに情けない。
イノベートにしても、輸入化粧品の表示違反は、本来、仕入れ先が貼るべき日本語訳の成分表示シールを化粧品製造業の資格を持たない同社が作成し、貼り付けていたこと。当時、60億円超もの売上高を誇っていた企業にしては有り得ないミスだ。
事業者の中には、行政や消費者団体が主張する「ネット=悪」との図式に反感を覚える者もいるだろう。確かに、今回の違反も一部事業者によるものであり、これを持ってネット市場を一括りに判断はできない。
だが、折しも、消費者庁では食品表示課が健康増進法に基づくネットパトロールを年1回から4回に増やし、表示対策課もアフィリエイト広告などへの監視強化を打ち出している時期。また、警察庁もサイバー犯罪対策に対する監視強化の大方針を打ち出し、全国規模で人員強化を図っている。今後、化粧品、健康食品を扱う事業者は、各県警の薬事法所管部署、薬事法監視が不十分な県警でもネットに関わる犯罪を監視するサイバー犯罪対策課の両部署から二重の網を張られることになる。
これまで、ネット販売は参入が容易なことや販促コストが安いこと、コミュニケーションツールとしての利便性などメリットばかりが強調されてきた。だが、法令順守に対する確固たる信念がなくては、前2社に続く事業者が現われるのも時間の問題だろう。コンプライアンス意識の強化なくして、ネット販売市場の発展は有り得ない。
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