健食業界は「外圧」に備えよ

2012年01月12日 13:54

2012年01月12日 13:54

健康食品を販売する国内企業が瀬戸際に立たされている。国内制度では、健食はその存在すら認められておらず、国が承認する特定保健用食品(トクホ)ですら、海外では全く通用しない、独自の制度となっているためだ。一方で、市場の世界的な拡大を背景に、外資系企業の動きは活気づいている。昨年末には在日米商工会議所(ACCJ)が健食表示に関わる提言を発表。規制緩和に向け動き始めた。その背後には、野田佳彦首相の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加方針の表明を受けた世界戦略があるとみられる。だが、健食に関する限り、"主体性"を欠く日本政府、行政、業界にこれに対抗する術はない。市場のグローバル化が進む中、このままでは国際競争力を持ち得ない国内企業は海外から取り残されてしまう。

 ACCJは昨年末、トクホ審査や健食の表示制度の改善を求め、提言を発表した。「外圧」による規制緩和の要請だ。ACCJと言えば1994年、食品(健食)の形状規制緩和を先導したことが知られている。今回の提言は、その背後に健食を販売する外資系大手MLM(連鎖販売取引)2社が関与しており、日本のTPP参加を念頭に規制緩和を一気に進めようとの思惑が垣間見える。

 外資系企業にとって健食にかかる高い関税は長年に渡り頭を悩ませてきた問題。仮にTPP参加が決定し、関税撤廃に動くことになればそれだけで外資系企業が受ける恩恵は大きい。だが、それだけでなく、貿易自由化が進むことになれば、健食という商品分野で次に浮上するのは海外と日本の表示制度の整合性の問題だ。日本より数段厳しい審査体制を持つ海外諸国が制度改革を求めてくるならば、まともな法律や制度を持たず、通知規制でお茶を濁してきた日本に国内制度を守りきれる保証はない。

 TPPに直接関与しないが、EUは08年、許可する健食表示のリストを確立すべく、各国企業から申請された表示とその科学的根拠の評価を始めた。日本からもトクホを取得した多くの企業が申請。中にはトクホ申請時より厚い試験データをもって臨んだ企業もみられたが、その結果は惨敗。国が認めたトクホですら海外においては役不足だった。こうした海外の動きを見るにつけ、いかに国内制度が脆いものかを実感する。

 ただ、この「外圧」を好機と捉えることもできる。健食業界は過去に時に政治の力を借り、時に業態の垣根を超えた団体を発足して規制緩和を試みたが、そのいずれも思惑の違いから離合集散を繰り返してきた。

 だが、最近ではこの反省を受け、社会的評価を得る着実な歩みを見せ始めてもいる。日本通信販売協会は、健食の登録制度を始め、市場の実態把握と健康被害防止に向けた環境整備に動き出した。流通・小売の業界団体、消費者団体が加盟する「国民生活産業・消費者団体連合会」発足も期待される動きではあるだろう。

 通販事業者もこれら団体と行動を共にし、健食業界としての意識を醸成していくことが必要だ。市場の国際化を背景に制度改革議論が再燃する可能性がある中、業界として確固たる主張を示す準備を始めなければ海外制度に後れを取ることになる。

カテゴリ一覧