過剰な消費者保護はやめよ
近年、行政による過剰な消費者保護の姿勢が目立つ。例えば、先日、東京都がネット販売などでも広く販売されているカイロポケット付き腹巻の試買調査を行った。同調査の結論はこうだ。「長期間に渡ってポケットにカイロを入れておくと低温やけどをする可能性がある」ので消費者は注意が必要であり、「消費者が分かりやすい形で注意表示を行うこと」とポケット付き腹巻の製造元や販売事業者に要望した。
これは過剰な消費者保護である。カイロを長期間、肌に密着させて使用すれば、おのずとどういう結果を招くかは常識として分かるであろう。まして、その結果として腹巻の製造・販売元に半ば、責任を転嫁するように分かりやすく注意表示を行え、と言い出すというのはいかがなものなのか。
もちろん、東京都の試買調査の意図は分からないわけではない。実際問題、低温やけどは重症化すれば、手術が必要になるなど深刻な事態を招く可能性もある。そのこと事態の注意喚起は必要なことなのかもしれない。また、実際に都に「腹巻のポケットに使いすてカイロを入れて使用していたら、低温やけどを負った」という相談が寄せられていたようだ。ただし、腹巻の製造・販売元への要請というのは筋違いだ。
そもそも低温やけどの注意表示を行うべきは「カイロ」の方であり、カイロの製造元が注意表示を徹底していないのだとすればそうした「要望」を申し入れることはまだ理解できる。しかし、腹巻の製造・販売元にまでこうした要望を行うのは明らかに行き過ぎだ。この論理でいくとカイロを挟んで使用できるすべての肌着や衣服について、同様の注意表示を行う必要が出てくるわけだ。果たしてどこまで「注意表示」を行えば、行政サイドから「要望」されずに済み、そして、それによってどのくらいの消費者が保護されるというのだろうか。
一昔前であれば、社会一般の常識の範疇とされていた様々な事象は昨今の過剰なまでの行政による消費者保護の結果、消費者から常識を奪った。何らかの不具合が生じた場合、明らかに自らのミスであっても、何重にも法律で守られた権利をかさに自己都合の持論を主張し、事業者など誰かのせいにするクレーマーまがいの「非常識な消費者」を生み出してしまった。それでもなお、行政は懲りずに非常識な消費者までも手厚く保護する姿勢を崩さない。
悪質な事業者を排除し消費者を守ること自体は当然、行政の責務であり、それに何ら異論はない。ただし、それと同時にまっとうな事業者のビジネス活動を妨げる悪質な消費者の排除も必要ではないか。過剰な消費者保護を是とする姿勢は事業者をいたずらに疲弊させ、日本の産業の衰退を招く危険性があるだけでなく、常識が欠如した非常識な消費者をさらに生む可能性を孕む。行政が為すべきは過剰な消費者保護で非常識な消費者を増やすことではなく、消費者に事故を未然に防ぐ「常識」を持たせることであろう。そうなれば貴重な税金を使って試買調査などせずとも消費者を「守る」ことができるのではなかろうか。
そのほかの注目記事FEATURED ARTICLE OTHER
これは過剰な消費者保護である。カイロを長期間、肌に密着させて使用すれば、おのずとどういう結果を招くかは常識として分かるであろう。まして、その結果として腹巻の製造・販売元に半ば、責任を転嫁するように分かりやすく注意表示を行え、と言い出すというのはいかがなものなのか。
もちろん、東京都の試買調査の意図は分からないわけではない。実際問題、低温やけどは重症化すれば、手術が必要になるなど深刻な事態を招く可能性もある。そのこと事態の注意喚起は必要なことなのかもしれない。また、実際に都に「腹巻のポケットに使いすてカイロを入れて使用していたら、低温やけどを負った」という相談が寄せられていたようだ。ただし、腹巻の製造・販売元への要請というのは筋違いだ。
そもそも低温やけどの注意表示を行うべきは「カイロ」の方であり、カイロの製造元が注意表示を徹底していないのだとすればそうした「要望」を申し入れることはまだ理解できる。しかし、腹巻の製造・販売元にまでこうした要望を行うのは明らかに行き過ぎだ。この論理でいくとカイロを挟んで使用できるすべての肌着や衣服について、同様の注意表示を行う必要が出てくるわけだ。果たしてどこまで「注意表示」を行えば、行政サイドから「要望」されずに済み、そして、それによってどのくらいの消費者が保護されるというのだろうか。
一昔前であれば、社会一般の常識の範疇とされていた様々な事象は昨今の過剰なまでの行政による消費者保護の結果、消費者から常識を奪った。何らかの不具合が生じた場合、明らかに自らのミスであっても、何重にも法律で守られた権利をかさに自己都合の持論を主張し、事業者など誰かのせいにするクレーマーまがいの「非常識な消費者」を生み出してしまった。それでもなお、行政は懲りずに非常識な消費者までも手厚く保護する姿勢を崩さない。
悪質な事業者を排除し消費者を守ること自体は当然、行政の責務であり、それに何ら異論はない。ただし、それと同時にまっとうな事業者のビジネス活動を妨げる悪質な消費者の排除も必要ではないか。過剰な消費者保護を是とする姿勢は事業者をいたずらに疲弊させ、日本の産業の衰退を招く危険性があるだけでなく、常識が欠如した非常識な消費者をさらに生む可能性を孕む。行政が為すべきは過剰な消費者保護で非常識な消費者を増やすことではなく、消費者に事故を未然に防ぐ「常識」を持たせることであろう。そうなれば貴重な税金を使って試買調査などせずとも消費者を「守る」ことができるのではなかろうか。