化粧品の"原点回帰"に注目

2012年02月09日 13:52

2012年02月09日 13:52

通販化粧品市場をけん引してきた大手各社で「ブランド再構築」が進んでいる。オルビスは2007年にこのテーマに着手し、ファンケルも09年秋から検討を進めてきた。ディーエイチシー(DHC)も今年1月、企業ブランディングを意識したと思われるテレビCMを始めている。3社の業績はいずれも踊り場を迎え、好む好まざるとにかかわらず、店舗市場を軸に展開する制度品大手各社との競争は避けられない。ただ、国内化粧品市場の横ばい推移が続く中、大手3社が抱える危機感には、早晩、中小事業者も直面するだろう。3社の取り組みが如何なる結果を残すか、注目する必要がある。

 ブランド再構築は、自らがこれまで打ち出してきたブランド価値を再定義していく作業だ。何が顧客の支持を受けてきたのか、その"原点"を見つめ直し、長年に渡る事業展開で溜まってきた澱(おり)とのギャップを埋めていくものだろう。

 3社は80年代、「無添加(ファンケル)」「オイルカット(オルビス)」「オリーブオイル(DHC)から想起される"安心・安全"のイメージを、既存大手化粧品に対するアンチテーゼとして打ち出し支持を得てきた。

 しかし、「無添加」は"肌には優しいが効果は薄い"といった意図しないイメージを生み、「オイルカッ
ト」もシンプルで機能的なイメージが定着したものの、40代以降の女性に"物足りない"との印象を持たれた。「オリーブオイル」も"安心・安全"の域を出なかった訳だ。

 その中で、まず「ブランド再構築」の方向性を明確にしたのがファンケルだ。無添加だからこそきれいになれる「素肌純化」というブランド価値を新たに打ち出した。オルビスもオイルカット理論を用いたアンチエイジングケア製品の強化に乗り出している。2社の取り組みは、原点であるブランド価値に最適な"付加価値"を持たせていく試みだ。

 一方、異なる戦略を取ってきたのがDHCだ。ここ数年、オリーブオイルのみへのこだわりを捨て、「プラチナナノコロイド」「CoQ10」など注目成分をスピード感を持って製品化するのは一つのやり方ではある。だが、「機能(配合成分量)」と「価格」こそ品質であると定義し、その最高パフォーマンスを目指すとしてブランディングCMを展開するのは、原点に対する付加価値を追求する前出2社とは異なるが、ブランド価値というものを意識し、再定義する必要性を感じたからだろう。

 3社の新たなブランド価値の創造は、商品だけでなく、サービス面にも及ぶ。ただ、ブランド価値を再定義する取り組み、新たな企業ブランドの確立を目指す取り組み、いずれもリスクはある。顧客に支持を得てきた"原点"を見誤れば、逆に顧客の離反を招くことにもつながりかねないためだ。

 だが、国内化粧品市場が限界に達しようとも、女性のライフスタイルの変化や少子高齢化など、市場環境は絶えず変わる。そこにブランドチェンジを起こし、市場を切り取る好機も存在している。この中から"原点回帰"の最適な姿を確立する企業が現われるか、その決断の行方を見守る必要がある。

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