企業買収は実現性重視せよ
通販企業が関わる買収や業務提携が相次いだ。1月30日には、NTTドコモが食品宅配大手のらでぃっしゅぼーやを買収すると発表。続いて2月3日には、
ディノスが菓子材料などのネット販売などを行うクオカプランニングに出資し、資本業務提携を結んだ。さまざまな企業が通販に進出し、競争が激化する昨今、
通販・店販といった販路のボーダレス化もますます進んでおり、今後はドコモのような異業種も含めてM&Aや提携が活発化しそうだ。
ドコモは株式公開買い付けを実施し、らでぃっしゅの完全子会社化を目指す。その上で、らでぃっしゅ株式の最大20%分をローソンに譲渡する資本業務提携を締結、3社で野菜通販を拡大させる狙いだ。
らでぃっしゅは近年、売上高が横ばい傾向で、会員数も伸び悩んでいる。同社は定期便の野菜セットとカタログを主力としているが、毎週決まった曜日に届け
る宅配スタイルだけに、通販に比べて利便性で劣る部分がある。また、競合となる有機野菜の宅配・通販企業に比べて、やや価格面で不利なことも伸び悩みの要
因となっていたようだ。
今後はドコモの顧客をらでぃっしゅの宅配事業に送客するほか、モバイル通販を強化。流通量の拡大で商品の値下げにもつなげたい考えだ。業績が頭打ち傾向
にある中で、台頭するオイシックスのような野菜通販への対抗策といえるが、食品宅配事業は生産量のバランスの問題や、比較的高額な食材宅配を利用する世帯
は限られた層であることなどから急激な業容拡大が難しく、実現性は不透明。課題は山積のようだ。
通販市場はネット販売の拡大をテコに成長を続けてきた。ただ、新規事業者の相次ぐ参入もあり、競争は激化する一方。経営難に陥るネット専業も多いとみられ、今後はM&Aの活発化が予想される。
販路のボーダレス化が進む中、店舗も含めたあらゆる媒体で商品を販売することが求められている。事業多角化を進める大手通販によるM&Aや、逆にドコモ
のような異業種の大手による通販企業買収は今後も続きそう。ただ、問題は本当に多角化が果たせるかどうか。「店舗と通販の連動」など、事前に掲げたメリッ
トが実際にはほとんど機能しないM&Aは、これまでも多々あった。
例えば、かつてイマージュはアパレルブランド「トランスコンチネンツ」を買収したものの、店舗運営に失敗し、事業を清算。グループの業績悪化の要因とも
なった。最近では、スクロールが衣料品通販とのシナジー効果を期待し、化粧品通販の「イノベート」を買収したが、買収後のイノベートの売上高は減少。さら
には前経営陣による薬事法違反も発覚している。
こうした事態に陥らないように、事前の慎重な検討が必要なことはもちろん、事後も互いの課題や問題点をすりあわせ、解決していく姿勢が重要となるだろ
う。かつて、キューサイは青汁と宅配との相乗効果を狙い、らでぃっしゅを買収したが、思うような成果が出せずに手放した過去がある。ドコモが食品販売や宅
配事業の弱点をきちんと認識できるかどうかが成功のカギとなりそうだ。
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ドコモは株式公開買い付けを実施し、らでぃっしゅの完全子会社化を目指す。その上で、らでぃっしゅ株式の最大20%分をローソンに譲渡する資本業務提携を締結、3社で野菜通販を拡大させる狙いだ。
らでぃっしゅは近年、売上高が横ばい傾向で、会員数も伸び悩んでいる。同社は定期便の野菜セットとカタログを主力としているが、毎週決まった曜日に届け る宅配スタイルだけに、通販に比べて利便性で劣る部分がある。また、競合となる有機野菜の宅配・通販企業に比べて、やや価格面で不利なことも伸び悩みの要 因となっていたようだ。
今後はドコモの顧客をらでぃっしゅの宅配事業に送客するほか、モバイル通販を強化。流通量の拡大で商品の値下げにもつなげたい考えだ。業績が頭打ち傾向 にある中で、台頭するオイシックスのような野菜通販への対抗策といえるが、食品宅配事業は生産量のバランスの問題や、比較的高額な食材宅配を利用する世帯 は限られた層であることなどから急激な業容拡大が難しく、実現性は不透明。課題は山積のようだ。
通販市場はネット販売の拡大をテコに成長を続けてきた。ただ、新規事業者の相次ぐ参入もあり、競争は激化する一方。経営難に陥るネット専業も多いとみられ、今後はM&Aの活発化が予想される。
販路のボーダレス化が進む中、店舗も含めたあらゆる媒体で商品を販売することが求められている。事業多角化を進める大手通販によるM&Aや、逆にドコモ のような異業種の大手による通販企業買収は今後も続きそう。ただ、問題は本当に多角化が果たせるかどうか。「店舗と通販の連動」など、事前に掲げたメリッ トが実際にはほとんど機能しないM&Aは、これまでも多々あった。
例えば、かつてイマージュはアパレルブランド「トランスコンチネンツ」を買収したものの、店舗運営に失敗し、事業を清算。グループの業績悪化の要因とも なった。最近では、スクロールが衣料品通販とのシナジー効果を期待し、化粧品通販の「イノベート」を買収したが、買収後のイノベートの売上高は減少。さら には前経営陣による薬事法違反も発覚している。
こうした事態に陥らないように、事前の慎重な検討が必要なことはもちろん、事後も互いの課題や問題点をすりあわせ、解決していく姿勢が重要となるだろ う。かつて、キューサイは青汁と宅配との相乗効果を狙い、らでぃっしゅを買収したが、思うような成果が出せずに手放した過去がある。ドコモが食品販売や宅 配事業の弱点をきちんと認識できるかどうかが成功のカギとなりそうだ。