JADMAは改革路線進めよ

2012年03月15日 10:19

2012年03月15日 10:19

 日本通信販売協会(JADMA)の新会長に、QVCジャパンの佐々木迅社長が内定した。6月1日の通常総会を経て、第12代の会長に就任する。テレビ通販専業企業の会長は初となる。宮島和美会長が進めてきた改革路線の引き継ぎはもちろん、テレビ局の自主的な通販枠の総量規制など、テレビ通販にも逆風が吹きはじめている中で、専業ならではの視点に基づいた施策の実施にも期待したい。

 伸長の続く通販市場だが、引っ張っているのはJADMA会員である既存の通販事業者ではなく、ネット販売を中心に事業を手掛ける企業だ。ネット販売専業はもちろん、近年は通販を販路の一つとするメーカーや有店舗小売業も目立っている。ただ、こうした企業の中でJADMA会員は多くない。

 実際に、加盟していないネット企業に話を聞くと「メリットが何もない」「単に統計を取るだけの団体ではないのか」という否定的な回答が帰ってくることが多い。もちろん、JADMAは日本で唯一の通販業界の業界団体であり、会員社への情報提供や各種のセミナー、行政への意見具申など、さまざまな取り組みを手がけてきた。しかし、市場をけん引する楽天やヤフー、アマゾンといった大手ネット企業の加盟していないJADMAの意見は、行政からみれば「通販業界の総意とはいえない」と捉えられてもおかしくない状況なのも事実だろう。

 2年前に就任した宮島会長は、会員企業数の停滞に危機感を持ち、さまざまな改革を進めてきた。まず、「サプリメント部会」が中心となって健康食品の登録制を推進。会員企業の扱う商品名や安全性のチェック体制など所定の項目のデータベース化を進め、消費者トラブルが発生した際の対応の迅速化を図るもので、協会非加盟の企業とは信頼度に差があることを明確にする目的だ。また、セミナー事業を強化するなど、非加盟の通販企業に入会のメリットを示す取り組みを行なってきた。

 さらには、2010年9月に専用電話を開設し、企業からの法律相談に力を入れているほか、JADMAマークの普及や協会の認知向上を目的にテレビのスポットCMを展開。広報誌「JADMA NEWS」の掲載内容やレイアウトを見直し、電子ブック形式での閲覧を可能にするなど、広報機能も強化している。こうしたJADMAの取り組みについては「この2年でかなり変わった」(ある中堅通販企業)と一定の評価を与える声は少なくない。

 ただ、今後もJADMAが行政に物申す存在であり続けるためには、既存、新規の通販企業にとって加盟に値する必要な団体とならなければいけない。佐々木新会長には、宮島現会長の路線を推し進め、会員企業数の増加を意識してもらいたい。

 その一方で、佐々木氏ならではのアプローチにも期待したい。ファンケル出身の宮島氏は、健康食品関連で手腕を発揮したが、佐々木氏も同様に、テレビ通販がらみの問題における行政との折衝など、実力の発揮できる場面は多々あろう。通販市場の健全な発展のためにも、JADMAのさらなる変革が求められる。

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