行政は〝通販いじめ〟を止めよ
消費者庁の通販事業者への恣意的ともとれる対応を巡って、通販業界の関係者から批判の声が挙がっている。同庁は10月、11月と相次いでニットおよび布団の「誤表記」に関して、当該製品を製造した三陽商会および住金物産の社名公表を行なっている。ともに「カシミヤ入り」と表示していたが、実際、当該商品にはカシミヤは入っていなかったというもの。言わば似通ったケースと言える。ただし、この2つ事例には相違点がある。社名公表の範囲だ。
ともに表示ミスを犯したメーカーの社名を公表しているが、一方では販売社である百貨店の具体的な社名は伏せ、もう一方では社名が公表されている。公表されたのは大手テレビ通販事業者のQVCジャパンだ。こうしたネガティブな案件で社名が公表されれば、一般紙等で広く報道され、当該企業は企業イメージの低下を招くことは必至だ。加えて、それが業界大手ともなれば、通販業界全体にも悪影響を及ぼしかねない。消費者庁は2つの案件の公表について「消費者への注意喚起」などと説明しているが、ではなぜ、非常に似通ったケースであるにも関わらず、こうした「差」を付けるのか。いかなる理由によるものなのか消費者庁に問いたい。
今回のケースだけでなく、行政による通販への恣意的ともとれる対応は以前からあった。例えば、今夏に公取委から某家電メーカーに下された景品表示法違反による排除命令では、当該メーカーが製造した冷蔵庫が実際には一部にしかリサイクル素材を使用していなかったにも関わらず、すべての製品に使用しているような表現を広告等でしていたとして、家電メーカーのみに行政処分が下っている。しかし、同じく景表法違反とされた数年前の防カビ効果があるという風呂桶や、最近あった消臭効果があるという健康食品のケースではメーカーではなく、当該商品を販売した複数の通販事業者に排除命令が下っている。
販売者が違反を問われるのであれば、先の冷蔵庫の場合、家電量販店も同様に罪を問われるべきであろう。先の消費者庁の社名公表にしても、当該商品を販売していた百貨店を羅列すべきであろう。それが様々な理由をつけて、できないというのならば、通販事業者にも同様の扱いをするべきだ。決して、「ミスを隠せ」というわけではない。ただし、「法の下に平等」であるならば、一方は「売ったもの勝ち」で何ら処分は下されず、もう一方は行政や世間から糾弾されるというのはあまりに不自然ではなかろうか。
特商法改正に伴い、12月から施行された通販事業者に課される「返品ルール」にしても、不自然だ。通販媒体に返品に関する規約を「分かりやすく明示しなければならない」というのは、例えば、百貨店など有店舗の「売り場」で返品について大々的に謳うなどとは考えられないことであろう。同じ小売業であるならば、ルールは平等にすべきだ。カタログ、チラシで証拠が残りやすく処分しやすい点数稼ぎ的な「通販いじめ」は止め、不況の今、国内の有望産業である通販をむしろ育成することこそ、行政の責務ではなかろうか。
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今回のケースだけでなく、行政による通販への恣意的ともとれる対応は以前からあった。例えば、今夏に公取委から某家電メーカーに下された景品表示法違反による排除命令では、当該メーカーが製造した冷蔵庫が実際には一部にしかリサイクル素材を使用していなかったにも関わらず、すべての製品に使用しているような表現を広告等でしていたとして、家電メーカーのみに行政処分が下っている。しかし、同じく景表法違反とされた数年前の防カビ効果があるという風呂桶や、最近あった消臭効果があるという健康食品のケースではメーカーではなく、当該商品を販売した複数の通販事業者に排除命令が下っている。
販売者が違反を問われるのであれば、先の冷蔵庫の場合、家電量販店も同様に罪を問われるべきであろう。先の消費者庁の社名公表にしても、当該商品を販売していた百貨店を羅列すべきであろう。それが様々な理由をつけて、できないというのならば、通販事業者にも同様の扱いをするべきだ。決して、「ミスを隠せ」というわけではない。ただし、「法の下に平等」であるならば、一方は「売ったもの勝ち」で何ら処分は下されず、もう一方は行政や世間から糾弾されるというのはあまりに不自然ではなかろうか。
特商法改正に伴い、12月から施行された通販事業者に課される「返品ルール」にしても、不自然だ。通販媒体に返品に関する規約を「分かりやすく明示しなければならない」というのは、例えば、百貨店など有店舗の「売り場」で返品について大々的に謳うなどとは考えられないことであろう。同じ小売業であるならば、ルールは平等にすべきだ。カタログ、チラシで証拠が残りやすく処分しやすい点数稼ぎ的な「通販いじめ」は止め、不況の今、国内の有望産業である通販をむしろ育成することこそ、行政の責務ではなかろうか。