行政はトクホ再浮上の道開け
特定保健用食品(トクホ)市場の先細りに歯止めがかからない。日本健康・栄養食品協会が調査した2011年度の市場規模は約5200億円で、07年度の約6800億円をピークに減少に転じ、約10年前の水準にまで落ち込んでいる。トクホは09年末から約2年に渡り、消費者庁、消費者委員会で制度改革が議論された。だが、示された方針は消費者団体の強い反発もあり、規制強化一辺倒といえるものだった。市場の再浮上に向けた好要因が認められない中、このままではトクホ市場はますます冷え込むことになる。
昨年、消費者委で行われた制度改革議論で導き出された結論は、トクホ許可に関わる審査の厳格化や、更新制の導入など規制強化に関わるもののみ。これに同調するように、今回調査でも11年のトクホ許可品目は前年を大きく下回った。
消費者委の議論には、国際情勢に対する視点も皆無だった。EFSA(エフサ=欧州食品安全機関)では機能性表示の科学的根拠の評価を行ったが、日本でトクホを取得した大半の製品が、その根拠を認められなかった。中には、トクホ取得時より多くの試験データを添えた企業があったにもかかわらずだ。
EFSAの評価に対しては、同国の業界団体や事業者から厳しすぎるとの声も挙がっており、海外と国内のトクホ制度を単純比較することはできない。だが、その評価を見ても、現行のトクホ制度が海外で通用する制度にはなり得ていないことは明らかだろう。
2010年、日清ファルマがトクホ取得を目指した「グルコバスターカプセル」の評価結果でもトクホ市場に暗い影を落す"前例"が示された。「カプセル形状が医薬品との誤認を招く」との消費者委の判断からトクホの許可が下りなかったのだ。
当時、「グルコバスター」に関する審議は最終段階まで来ており、厚生労働省のある担当官は公の場で「もうすぐカプセル状のトクホが誕生する」とまで発言していた。また、医薬品にのみ認められていた錠剤・カプセルの形状規制は01年に撤廃されており、食品への使用は決着済みの問題でもあった。にもかかわらず、消費者委は許可に待ったをかけた。
トクホ許可品目は、未だに過去に許可を得たわずかな商品を除き、食品形態のものが大半を占めている。保健用途の拡大も期待できず、錠剤・カプセル状食品を中心に約1兆円超に達するとされる健康食品市場を取り込める素地がないままでは、市場の拡大など望むことはできない。
こうした状況の中、野田佳彦首相は昨年12月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する方針を表明した。仮にTPPが現実となって関税撤廃に進んだ場合、次は関税の後ろに控え、実質的に自由貿易の障壁となっている表示制度の規制緩和を求められる可能性が高い。
米国は健食の安全性や機能性で日本より厳しい評価基準を持つ。これ照らせば、トクホ制度も海外諸国の言うがままに改革を迫られるかもしれない。トクホを含む健食の表示制度を消費者と国内事業者にとって利益あるものにするためにも、改めて制度改革を議論する必要がある。
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消費者委の議論には、国際情勢に対する視点も皆無だった。EFSA(エフサ=欧州食品安全機関)では機能性表示の科学的根拠の評価を行ったが、日本でトクホを取得した大半の製品が、その根拠を認められなかった。中には、トクホ取得時より多くの試験データを添えた企業があったにもかかわらずだ。
EFSAの評価に対しては、同国の業界団体や事業者から厳しすぎるとの声も挙がっており、海外と国内のトクホ制度を単純比較することはできない。だが、その評価を見ても、現行のトクホ制度が海外で通用する制度にはなり得ていないことは明らかだろう。
2010年、日清ファルマがトクホ取得を目指した「グルコバスターカプセル」の評価結果でもトクホ市場に暗い影を落す"前例"が示された。「カプセル形状が医薬品との誤認を招く」との消費者委の判断からトクホの許可が下りなかったのだ。
当時、「グルコバスター」に関する審議は最終段階まで来ており、厚生労働省のある担当官は公の場で「もうすぐカプセル状のトクホが誕生する」とまで発言していた。また、医薬品にのみ認められていた錠剤・カプセルの形状規制は01年に撤廃されており、食品への使用は決着済みの問題でもあった。にもかかわらず、消費者委は許可に待ったをかけた。
トクホ許可品目は、未だに過去に許可を得たわずかな商品を除き、食品形態のものが大半を占めている。保健用途の拡大も期待できず、錠剤・カプセル状食品を中心に約1兆円超に達するとされる健康食品市場を取り込める素地がないままでは、市場の拡大など望むことはできない。
こうした状況の中、野田佳彦首相は昨年12月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する方針を表明した。仮にTPPが現実となって関税撤廃に進んだ場合、次は関税の後ろに控え、実質的に自由貿易の障壁となっている表示制度の規制緩和を求められる可能性が高い。
米国は健食の安全性や機能性で日本より厳しい評価基準を持つ。これ照らせば、トクホ制度も海外諸国の言うがままに改革を迫られるかもしれない。トクホを含む健食の表示制度を消費者と国内事業者にとって利益あるものにするためにも、改めて制度改革を議論する必要がある。