モール運営者は順法を指導せよ

2012年04月19日 18:08

2012年04月19日 18:08

 東京都は4月3日、健食などを販売していた通販事業者4社の表示が不当であるとして、景品表示法に基づく改善を指示した。当該4社はメーカーや仕入先から合理的な根拠のない販促資料などを元に問題のある表示を作成していたという。体力のない中小事業者にメーカー等から提出された商品の資料についてエビデンスを取れ、というのは酷な話であり、指示の対象が通販事業者のみということについては別途、議論する必要がある。だが、問題の表示を見てみると例えば、「一度止まった身長が強制的に成長期に突入」など明らかに行き過ぎた表現であり、また、東京都によると、再三の注意があったにも関わらず、不当表示を繰り返していたということから悪質な確信犯的な違法行為と言われても仕方あるまい。

 こうした確信犯的に不当表示などを行う通販事業者は後を絶たない。このような状況をこのまま放置しておけば、行政や当局からの通販全体への規制や監視の強化につながり得るし、実際、すでにその厳しさは近年、増してきている。さらに怖いのは消費者の通販離れだ。出鱈目な表示が散見され、半ばそれがまかり通っているような怪しげな場所で商品を購入しようと思う人が減っていくのは自明の理である。通販市場が規制でがんじがらめとなり、顧客もいなくなり、衰退していくという危機的な状態に至る前に、何らかの手を打たねばなるまい。

 ただ、そこで難しいのは法知識の無知に起因するものなのか、確信犯なのかは別としても、違法行為を行う事業者の多くは日本通信販売協会(JADMA)などの業界団体に所属していないアウトサイダーであるということだ。無論、通販事業者の業界団体の役割としてJADMAには今後、非会員企業についてもカバーし、適切な対処が行える体制を構築するよう期待したいが、現実問題として現状では問題がありそうな事業者に接触し、遵法の周知徹底などを指導でき得る組織・団体が存在しないというのが実情である。

 しかし唯一、そこに一定の影響力を行使できるのが仮想モールの運営事業者だ。そうした事業者の多くは仮想モールに出店し、そこを主戦場としているところも多い。ここで商売ができなくなるのは死活問題といっても過言ではなく、その「売り場」を仕切るモール運営者の方針には従わざるを得ないからだ。つまり、モール運営事業者が「売り場」の管理者として、出店者である通販事業者に遵法などの指導を徹底すれば劇的に現状を改善できる可能性は高いわけだ。

 しかし、一部のモール運営者は今回のケースでも東京都から指摘を受け、当該事業者には出店停止措置を行なったが、問題の表示が改善された、としてわずかな期間で出店を再開させたようだ。いかにも甘すぎはしないだろうか。これでは「多少のやりすぎ」は流通総額拡大のために目を瞑るのか、と勘ぐられても仕方がない。いまやネット販売を含めた通販市場の有力事業者となった自分たちの行動・姿勢いかんで市場の将来に大きな影響を与えることをモール運営者はそろそろ認識すべきだ。

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