消費者庁は〝本懐〟を果たせ

2009年12月17日 11:38

2009年12月17日 11:38

 消費者庁の「健康食品の表示に関する検討会」がまもなく第2回会合を開く。検討会は「エコナ」問題に端を発していることもあり、当初から"特定保健用食品(トクホ)制度見直しなど限定的な結論に留まるのでは"という疑念がくすぶっていた。だが、初会合では複数の委員が薬事法の「食薬区分」に踏み込んだ健食全体の議論を求めた。徹底的に議論すべきなのは当然で、トクホの見直し議論だけに留まらせてはならない。でなければ消費者庁は"消費者視点に立つ行政の実現"という本懐を果たしたとは言えまい。

 もはやトクホを含む健食表示制度に抜本的な改革が必要なことは明白だ。トクホの枠拡大や新制度確立など、やり方を選択することはできる。だが、業界サイドのみならず、消費者サイドからもあいまいな表示の制度化に向けた声は高まっている。

 全国の消費者組織をまとめる全国消費者団体連絡会(消団連)は第2回会合で「健食全体の表示制度確立」を要望するという。現行の表示制度では「消費者が分からない」というのが理由だ。消団連に限らず、消費者への情報提供が行えない現状は、全国の消費者組織の共通認識でもある。検討会に委員として参加する国民生活センターの宗林さおり氏もその1人。初会合では「現行の表示制度では消費者に分かりづらい」と発言していた。表示の分かりにくさは健食の商品テストでも度々指摘しており、相談現場から消費者の不利益をよく知る人物の意見でもある。

 一方で、監視指導体制の強化を望む声が強いのも事実だ。一部の消費者団体は「監視体制さえ充実すればトクホ制度さえ必要ない」という馬鹿げた主張をいまだに展開する。

 だが、大局的な視点立つならば、表示適正化が規制の「緩和」と「強化」のいずれかに寄るものでないことは明白だ。表示を行えるよう制度を確立することは即、規制「緩和」に結びつくものではない。専門分野を持つ関係者が適切な表示基準をつくり、これを事業者が遵守する。一方で基準に則り行政が指導を行う。それぞれが役割を果たしてこそ、消費者利益を実現する表示適正化が進むからだ。ぜひ、検討委員には自らが所属する団体の立場を越え、幅広い議論を求めたい。

 これを側面から支援するのが消費者庁の果たすべき役割だ。"消費者視点に立つ行政の実現"をめざす理念が本物であるならば、表示制度の確立が不可避であることは誰の目にも明らかだ。"省庁間のすき間事案への対応"を掲げるのであれば、薬事法とのすき間に落ちた健食表示に省庁間の垣根を越え、横断的な対応をするのは本望であるはずだ。今回の検討会で消費者庁は当初に掲げた理念の"真贋"を試されている。

 政治もその役割を果たす義務がある。今回の検討会は4カ月という時間的な制約、省庁間の垣根を越えた議論など複数の障害がすでに浮かび上がっている。これを"政治主導"の理念の下で動かせるのが政治であり、民主党にとっても政権交代以来の見せ場となるだろう。結論がトクホ見直しという限定的なものに終われば健食業界の失望だけでなく、消費者の信頼さえ損なうことになる。

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