消費者庁は説明責任果たせ
消費者庁が特定保健用食品(以下、トクホ)「黒烏龍茶」を販売するサントリー食品インターナショナルに、テレビCMの改善を求める文書を送った。CMで使われているある表現が「偏った食生活を助長する恐れがあり不適切」との理由からだ。だが、この改善要望はあまりに不可解だ。改善を求めた内容が、ということではない。問題となったCMが何法のどの部分に違反したものなのか、非常にあいまいなことがだ。違反の根拠を明確にせずに要望できるのであれば、消費者庁は"言葉狩り"との批判を免れない。
問題のCMは、サントリー食品が、アニメ「笑ゥせぇるすまん」のキャラクターを使い展開しているものだ。キャラクターが「脂肪にドーン」と人指し指を突き出し、「食べながら脂肪対策」とのコピーと共に商品を紹介する。これにケチがついた。
改善要望は、消費者委員会傘下の「新開発食品調査部会」での審議が契機となっている。CMについてある委員が「これを飲めば油ものを食べても大丈夫とか、そういう印象を受ける」「個人的な感想かもしれないが、適切でないという怒りがとても大きい」と発言。これに消費者庁食品表示課が「注意を促したい。この商品に限らず、『これさえ飲めば』というイメージのものが増えている」と応じ、要望に至った。
今年3月には消費者庁が日本健康・栄養食品協会に「(トクホの広告の中に)あたかも『当該食品を使用すれば、バランスの取れた食生活を考慮しなくて良い』旨を示唆するような表現が用いられているものがある。許可文言を逸脱するので改善が望まれる」と部会から指摘があった旨を通達。協会が会員各社に周知する事態に発展した。
だが、この改善要望は不可解と言わざるを得ない。先の審議の中で、消費者庁は健康増進法における誇大広告の判断基準を「消費者を著しく誤認させるようなもの」と説明している。特に、問い合わせや指摘が多く集まる案件を重視し、修正を求めているという。ただ、問題となったCMには「そういった意見は入ってきていない」(消費者庁)。さらに「脂肪にドーン」という表現には「個人の捉え方によって学術的に判断できない表現を行っているものは正直なところ判断しにくい」(同)とまで言い添えている。つまり、誇大と断じるに足る根拠を持ちえていなかったということだ。
断っておくが、CMに意見のあった部会はそもそも、事業者から申請されたトクホの表示許可について議論する場で、許可後の宣伝手法を議論する場ではない。にもかかわらず、消費者庁は「審議されている先生方から意見を頂いたので注意を促したい」と要望に至った。
だとすれば、自ら"個人的感想"と認める部会の委員の意見を端緒に、消費者庁が動いたことになる。消費者委員会とは、法を逸脱した要望を可能にするほどの力を持つものなのか。というより、それほどの権力を持たせて良いものなのか。それでは今後も委員が"おかしい"と強く主張すればまかり通ることになる。消費者庁は即刻、法的根拠の説明責任を果たす必要がある。
そのほかの注目記事FEATURED ARTICLE OTHER
問題のCMは、サントリー食品が、アニメ「笑ゥせぇるすまん」のキャラクターを使い展開しているものだ。キャラクターが「脂肪にドーン」と人指し指を突き出し、「食べながら脂肪対策」とのコピーと共に商品を紹介する。これにケチがついた。
改善要望は、消費者委員会傘下の「新開発食品調査部会」での審議が契機となっている。CMについてある委員が「これを飲めば油ものを食べても大丈夫とか、そういう印象を受ける」「個人的な感想かもしれないが、適切でないという怒りがとても大きい」と発言。これに消費者庁食品表示課が「注意を促したい。この商品に限らず、『これさえ飲めば』というイメージのものが増えている」と応じ、要望に至った。
今年3月には消費者庁が日本健康・栄養食品協会に「(トクホの広告の中に)あたかも『当該食品を使用すれば、バランスの取れた食生活を考慮しなくて良い』旨を示唆するような表現が用いられているものがある。許可文言を逸脱するので改善が望まれる」と部会から指摘があった旨を通達。協会が会員各社に周知する事態に発展した。
だが、この改善要望は不可解と言わざるを得ない。先の審議の中で、消費者庁は健康増進法における誇大広告の判断基準を「消費者を著しく誤認させるようなもの」と説明している。特に、問い合わせや指摘が多く集まる案件を重視し、修正を求めているという。ただ、問題となったCMには「そういった意見は入ってきていない」(消費者庁)。さらに「脂肪にドーン」という表現には「個人の捉え方によって学術的に判断できない表現を行っているものは正直なところ判断しにくい」(同)とまで言い添えている。つまり、誇大と断じるに足る根拠を持ちえていなかったということだ。
断っておくが、CMに意見のあった部会はそもそも、事業者から申請されたトクホの表示許可について議論する場で、許可後の宣伝手法を議論する場ではない。にもかかわらず、消費者庁は「審議されている先生方から意見を頂いたので注意を促したい」と要望に至った。
だとすれば、自ら"個人的感想"と認める部会の委員の意見を端緒に、消費者庁が動いたことになる。消費者委員会とは、法を逸脱した要望を可能にするほどの力を持つものなのか。というより、それほどの権力を持たせて良いものなのか。それでは今後も委員が"おかしい"と強く主張すればまかり通ることになる。消費者庁は即刻、法的根拠の説明責任を果たす必要がある。