消費者庁は特保の将来像示せ

2012年08月02日 10:07

2012年08月02日 10:07

消費者庁は特定保健用食品(トクホ)制度をどうするつもりなのか。過去にはトクホの安全性や剤型を巡る問題が、最近では広告表示を巡る問題も起きた。だが、事の詳細や騒動拡大の要因が検証されることもなく、ただ、消費者のトクホに対する不安だけが膨れていく。国が許認可を与える制度である以上、その将来像をいかに描くか、その責任は消費者庁にある。主体性を発揮できなければ、消費者のトクホに対する信頼は失墜するばかりだ。

 ここ数年、トクホを巡る問題が相次いだ。2009年には、花王の「エコナクッキングオイル」を巡る安全性問題、10年には日清ファルマの「グルコバスター」を巡る剤型の問題が起きた。そして今年はサントリー食品インターナショナルの「黒烏龍茶」を巡る広告表示の問題だ。

 「エコナ」は、主婦連合会が強硬に一時販売停止を主張する一方、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会は「エコナ」がどの程度のリスクか把握した上で情報提供を求めるなど、消費者団体でも意見が割れた。消費者委員会でも企業出身の委員は「食品にはそもそもリスクがある」と慎重な議論を求めた。だが、消費者庁は消費者委に委員を送り込む主婦連側の主張に引きずられ、結果、企業イメージの毀損を懸念した花王が自ら幕引きを図った。

 「グルコバスター」を巡るトクホ審査も物議を醸した。消費者委は「形状がカプセル状であること」を理由にトクホとして認めなかった。医薬品と誤認する可能性があるからだ。だが、医薬品のみ認められた形状規制は01年にすでに撤廃。以後、食品や健食に使われている。にもかかわらず、消費者委は過去の議論と整合性の取れない問題をさして議論することもなく、いとも簡単に覆した。

 「黒烏龍茶」を巡る問題でも消費者委で「適切でないという怒りがとても大きい」とCMを非難した委員の意見が消費者委の総意となり、消費者庁の要望に至っている。

 これらのケースはいずれも一部の消費者団体や、消費者委の問題提起を鵜呑みにしたものばかり。消費者の意見を反映させる「消費者庁」とは名ばかりのもの。"消費者目線"を掲げる団体や委員に都合よく利用されているだけではないか。

 「エコナ」の場合、強硬な主張を繰り返した主婦連は05年から安全性を疑問視し、目の敵にしてきた。他のケースも、形状規制撤廃やCMを憎々しく思っていた消費者委の委員の強い執念を感じる。これを押し通すことができる委員に与えられた権力の大きさは想像に難くない。

 日本健康・栄養食品協会が調査した11年度のトクホ市場は6%減となり、約10年前の水準にまで落ち込んでいる。これまでトクホを非難してきた消費者団体や消費者委の委員は、これを"市場の冷え込みは消費者の支持低下の表れ"とでも評するつもりだろうか。だが、いずれの問題もその"危惧"ばかりが目立ち、深く検証が加えられてはいない。「エコナ」や「グルコバスター」「黒烏龍茶」の判断は正しかったのか。検証を加えなければ、この先も同様の問題は続き、消費者に資する制度とはなりえない。

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