北陸支局は抗議の手を緩めるな
ディーエイチシー(DHC)が今年8月、新聞に掲載した広告が問題となっている。「誤解を生む」として、調査の引用を止めるよう要請した中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局の要請を振り切り、広告を掲載したためだ。広告を巡り、北陸支局は8月20日、DHCに抗議を行った。ただ一方で、支局には早期に事態収束を図ろうとする様子も窺える。事業者が不利益を被り、消費者を誤認させた責任を感じるならば、支局は抗議の手を緩めるべきではない。
掲載に至る責任の一端は北陸支局にある。調査は「利用している(利用したい)機能性食品メーカー」を企業の実名入りで公表したもの。そのような調査に公的機関のお墨付きがついたとなれば、DHCが"使わない手はない"と思うのも想像に難くない。「ご迷惑をかけた」(北陸支局)と釈明すれば済む問題ではない。
もちろん、DHCの倫理観が疑問視されるものでもあろう。同業他社の実名掲載は、日本の広告慣習にそぐわない。そもそも、こうした調査は、バイアスがかかる可能性を否定できないものでもある。たとえ法的な問題をクリアしても、先の調査のみで「ありがとうございます(中略)第1位に選ばれました」とあけすけに消費者に主張できるものではない。支局が不適切な調査であったことを伝えたにもかかわらず、掲載を強行した姿勢にも疑問を感じる。
だが、その後の北陸支局の対応がなにやらおかしい。「(広告を巡る問題の)影響が大きくなることを危惧している。あまり記事掲載してほしくないのが心情」と、事態が拡大するのを好まず、収束を図ろうと見受けられるためだ。
抗議内容も不可解な部分を残す。北陸支局は「訂正記事の掲載をお願いした」とする。ただ、一般的にDHCが新聞に"訂正記事"を掲載することはありえない。社告掲載を指すのか、さらに問うと「DHCから新聞社にお願いしていただく形で、手法は細かく申し上げていない」とする。着地点をどこに見出しているのか、判然としないのだ。形式的に抗議を行い、ほとぼりが冷めるのを待っているのであれば、それは何ら意味のない行為だろう。
確かに、今回の広告で法的な責任を問うのは難しいかもしれない。景品表示法上の比較広告、特定商取引法上の虚偽誇大広告、著作権法上の引用にかかる問題は指摘されるものの、法律違反とは断じるのは難しい。広告に細心の注意を払い、周到に事業を展開してきたDHCのこと。掲載した広告が及ぼすであろう影響を考え、その法的見解まで意識を働かせていないはずはない。
ただ、そうであっても北陸支局には最後まで抗議の手を緩めないでほしいと思う。支局はこれまで、健康食品が地域経済をけん引する成長性の高い分野の一つと捉え、支援を行ってきた。それが今回の騒動を受け、"鬼門"と避けて通るようになるのであれば、あまりに残念な帰結だ。責任を感じるのであれば、広告の問題を追及し続ける気概を見せてほしい。その姿勢こそが、消費者に今回の広告に潜む倫理的な問題に関する気づきを与え、広告に反発を覚えた企業に対する贖罪ともなるはずだ。
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掲載に至る責任の一端は北陸支局にある。調査は「利用している(利用したい)機能性食品メーカー」を企業の実名入りで公表したもの。そのような調査に公的機関のお墨付きがついたとなれば、DHCが"使わない手はない"と思うのも想像に難くない。「ご迷惑をかけた」(北陸支局)と釈明すれば済む問題ではない。
もちろん、DHCの倫理観が疑問視されるものでもあろう。同業他社の実名掲載は、日本の広告慣習にそぐわない。そもそも、こうした調査は、バイアスがかかる可能性を否定できないものでもある。たとえ法的な問題をクリアしても、先の調査のみで「ありがとうございます(中略)第1位に選ばれました」とあけすけに消費者に主張できるものではない。支局が不適切な調査であったことを伝えたにもかかわらず、掲載を強行した姿勢にも疑問を感じる。
だが、その後の北陸支局の対応がなにやらおかしい。「(広告を巡る問題の)影響が大きくなることを危惧している。あまり記事掲載してほしくないのが心情」と、事態が拡大するのを好まず、収束を図ろうと見受けられるためだ。
抗議内容も不可解な部分を残す。北陸支局は「訂正記事の掲載をお願いした」とする。ただ、一般的にDHCが新聞に"訂正記事"を掲載することはありえない。社告掲載を指すのか、さらに問うと「DHCから新聞社にお願いしていただく形で、手法は細かく申し上げていない」とする。着地点をどこに見出しているのか、判然としないのだ。形式的に抗議を行い、ほとぼりが冷めるのを待っているのであれば、それは何ら意味のない行為だろう。
確かに、今回の広告で法的な責任を問うのは難しいかもしれない。景品表示法上の比較広告、特定商取引法上の虚偽誇大広告、著作権法上の引用にかかる問題は指摘されるものの、法律違反とは断じるのは難しい。広告に細心の注意を払い、周到に事業を展開してきたDHCのこと。掲載した広告が及ぼすであろう影響を考え、その法的見解まで意識を働かせていないはずはない。
ただ、そうであっても北陸支局には最後まで抗議の手を緩めないでほしいと思う。支局はこれまで、健康食品が地域経済をけん引する成長性の高い分野の一つと捉え、支援を行ってきた。それが今回の騒動を受け、"鬼門"と避けて通るようになるのであれば、あまりに残念な帰結だ。責任を感じるのであれば、広告の問題を追及し続ける気概を見せてほしい。その姿勢こそが、消費者に今回の広告に潜む倫理的な問題に関する気づきを与え、広告に反発を覚えた企業に対する贖罪ともなるはずだ。