〝変化〟に対応した戦略を打て

2010年01月07日 19:32

2010年01月07日 19:32

 09年は通販市場にとって苦難の年であったことは言うまでもないだろう。未曾有の不況で幕を開け、消費は低迷。「巣篭もり」で恩恵を受けた通販事業者は一部に限られ、多くは「モノが売れない」環境下で値下げや送料無料など利益を圧迫する体力勝負を余儀なくされた。市場の冷え込みに追い討ちをかけるように低料第3種郵便を使った複数の通販企業によるDM不正送付や、商社系通販企業からの個人情報漏えい、上場通販企業のトップや社員によるインサイダー取引などの通販の信頼を著しく低下させる事件も起こった。 これらに加えて、消費者保護という美名の下、大衆薬の通販規制や消費者庁の設置など通販市場の拡大を阻害する可能性の高い行政による通販への介入も目立った。

 様々な逆風の中、多くの通販事業者は苦戦を強いられ、業績を落とした。ただし、小売り全般で言えば、ユニクロやニトリ、通販企業でもジャパネットたかたやドクターシーラボ、スタートトゥデイなど厳しい環境の中でも大きく業績を伸ばしている企業も存在している。それらの企業の共通点は「不況」「デフレ」「規制」など「何かのせい」にはせず、戦略はそれぞれ異なるが、巧みに社会の変化を読み、その変化に対応する効果的な戦略を立て、即座にそれらを実行していることだ。

 逆に言えば、09年に業績を落とした企業はこうした社会の変化を読み取れず、適切な打ち手を施せなかったことになるわけだ。ただし、昨年の戦略を嘆くのではなく、むしろ活かすべきだろう。ある通販企業の経営者は「今年の不況は経営者としては大変、勉強になった1年だった」と言うが、その通りである。時代に即した「適切な打ち手」などそう容易く打ち出せるものではない。辛酸を舐めた昨年の経験を当面は続くと見られる不況やその先の社会構造の大きな変化に対応するための「教訓」として捉えるべきだ。

 恐らく景気の回復はすぐに成るものではなく、今年も暫く景気低迷は続くであろう。また、通販を取り巻く規制はより強化されるかも知れない。通販媒体となるメディアの変化や強力な競合となり得る新規参入事業者も次々に登場してくるであろう。そして、大きな流れとして、少子高齢化により消費者の絶対数は減っていく。こうした社会の変化はいかんともし難い「現実」である。「現実」を前に「言い訳」や「逃げ口上」を述べても何も変わらない。淘汰されるだけであろう。

 社会の変化で業績が悪化していくのであれば生き残るために、その変化に合わせて、柔軟にビジネスモデルや戦略を組み替え、その都度、時代に即した成長モデルを模索していくほかない。そして必ず活路が見えてくるはずだ。現在は好調な企業もこの先、未来永劫、保障があるわけではない。時代や社会の変化に合わせて、常に変化し続けることができる通販事業者こそがこの先も生き残っていけるはずだ。先の見せない不況が続く中、始まった2010年だが、通販企業にはそれぞれ時代の変化を読み取り、成長のための戦略を見つけてもらいたい。それこそが通販市場発展につながるはずだ。

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