「No.1」は消費者が選ぶものだ
今年8月、ディーエイチシー(DHC)が「『利用している(利用したい)機能性食品メーカー』第1位に選ばれました」との文言を使い、新聞広告を掲載したことは、業界内外に波紋を広げた。調査元の許諾を得ずに調査結果を引用し、同業他社の社名を実名でランキング掲載したためだ。一方で、今回の広告問題は通販事業者に"ナンバーワン表示"のあり方を改めて問うものではないだろうか。DHCのケースは異例だが、昨今、ナンバーワン表示の広告への利用が増えているためだ。
DHCにしてみれば、これまで使ってきたナンバーワン表示の訴求力が弱くなっていることへの焦りがあったのかもしれない。かつて健康食品で売上高1位の時代もあったが、今では健康食品事業単体で売上高1位を強調することはできない。そんな中「利用している(利用したい)機能性食品メーカー第1位」という調査結果を広告に利用しない手はないと考えたのだろう。だが、調査の妥当性や同業他社への配慮、消費者の誤認を招く可能性をしん酌したとは考えにくい。
広告に同業他社は「品位に欠ける」と不快感を示し、調査元の民間企業は「トップブランドの企業行動として倫理的に問題」と指摘。消費者団体は「本当に人気があると誤認する可能性が高い」と懸念を示した。
ただ、DHCのケースほどではないにしろ、通販事業者によるナンバーワン表示は一般化してもいる。多くは同業他社との比較を行わないなど、利用の仕方には広告慣習に対する配慮がみられる。ナンバーワン表示は、消費者に強い訴求力を持つマーケティング上の重要な要素。利用自体を否定するものではない。ただ、そこには一定の節度が必要ではないだろうか。
「No.1」「第1位」など、強調を示す表示には2008年、公正取引委員会が景品表示法上の見解を示している。内容が客観的調査に基づいていること、調査結果を正確かつ適正に引用していることがポイントだ。表示の商品の範囲や、調査対象地域など地理的範囲、調査機関を明確にし、調査会社の名称など根拠の出典を表示することが必要になる。
調査を助成した中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局が調査元を民間企業であると説明していることを踏まえれば、DHCの広告が調査結果を正確かつ適正に引用し、調査機関を明確にしていたかは判断が分かれるだろう。ただ、仮に法律に触れることがなかったとしても、その利用は、景表法が示すそもそもの趣旨に沿うものと言えるだろうか。
ナンバーワン企業としての自負があり、真にナンバーワンに足る企業であるならば、それは自ら強調して主張するまでもないこと。妥当性が疑われる調査を根拠とせずとも、黙っていても消費者一人ひとりが選択するはずだ。その姿勢こそ、"業界最大手の責任"に足る資質だろう。
通販事業者にとって広告は消費者との接点となる重要なツール。だからこそ、誤認を招く可能性に注意を払う必要がある。通販事業者はDHCを巡る広告問題を戒めに、法令順守を超えた広告倫理の重要性を再考する必要がある。
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