消費者委の健食議論は不毛

2012年11月01日 10:35

2012年11月01日 10:35

消費者委員会で10月から健康食品の表示や広告規制に関する審議が始まった。健康増進法をはじめとする法執行力や安全性確保に向けた規制、機能性表示のあり方を検討するものだ。年内に建議の提出を目指す。だが、消費者委における審議は、これまで再三に渡り議論されてきた内容の繰り返しに思える。専門家による審議でない点、その内容はむしろ劣化していると言えるかもしれない。消費者委は、審議を専門家の手に委ねて継続することを早々に決断すべきだ。

 いっそのこと、ヒアリングに呼ばれた関係団体の代表者が集まって議論した方が良いのではないか、と思う。消費者委の健食を巡る制度整備に向けた審議のことだ。

 10月30日に行われた第2回会合までにヒアリングに呼ばれた団体は、主婦連合会などの消費者団体、日本医師会や日本薬剤師会などの職能団体、日本健康・栄養食品協会など業界団体。これに関係省庁の担当者などから健食規制の現状について話を聞いた。

 各団体の主張から導き出された問題意識は、過剰摂取や医薬品との相互作用など健康被害を巡る問題、安全性確保に向けた問題、消費者への情報提供のあり方の検討など。すでに過去の議論で問題提起されたものばかりだ。

 消費者庁の創設以降、健食を巡る議論が行われたのは「健康食品の表示に関する検討会」(2009年11月~10年8月)が初めてだ。以降、検討会の論点整理を受けて第1次消費者委員会(09年9月~11年8月)が中間報告をまとめ、第2次消費者委員会(11年8月~)がこれを引き継いでいる。過去2回の検討でヒアリングに招かれた主だった顔ぶれは今回と同じ。その都度、消費者団体、職能団体、業界団体の代表者らは、同様の主張を繰り返してきた。都合3回、似たようなヒアリングが行われていることになる。

 「健康食品の表示に関する検討会」は、審議を行ったメンバーが業界関係者や健食に詳しい学識経験者などの専門家。これに消費者団体や弁護士が加わったことでバランスが取れていた。だが、消費者委は、あらゆる消費者問題について"消費者目線"で捉え審議することを目的とする組織。扱うテーマも幅広く、全員が健食の専門家、というわけにはいかない。このため、ヒアリングした団体が体験談やイメージ広告が悪いと言えばこれに賛同し、届出制が必要と言えばこれになびく。一夜漬けで健食を巡る問題を学び議論しているに等しく、大所から問題を捉えきれていない。このため毎回、各論の議論に終始している。消費者委の顔ぶれが変わるたびに専門知識を持つ各団体が健食を巡る問題を一から解説し、議論を続けることこそ、行政コストの無駄ではないか。

 専門家でない消費者委は、表示規制の具体的な手法や実現性について、無理やり結論を出すべきではない。検討会と同様の視点で議論しても、導き出される結論はこれに劣るものにしかなり得ないためだ。消費者委は、消費者にとって健食の表示制度が必要なのか否か、シンプルなテーマに絞って答えを出すべきだ。

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