総通破たんは対岸の火事ではない

2012年11月15日 14:32

2012年11月15日 14:32

 テレビショッピングの草分け的な存在であった総通の破たん劇は通販業界だけでなく、広く報道され、世間から注目された。一部で伝えられている通り、不正な経理操作による粉飾決算があったとすれば、企業として批判を免れまい。しかし、一方で総通が通販業界で果たしてきた功績は大きい。昭和36年にペン習字の通信教育で創業し、約10年後に通販事業をスタート。その後、「日本直販」というブランド名でテレビやラジオ、新聞で通販を広く展開し、通販という業態を世間に広め、認知させた同社の功績は疑う余地はあるまい。今後、スポンサー企業に名乗りを上げたトランスコスモスの支援の下、きちんと、みそぎを済ませて、同社には再生の道を歩んでもらいたい。

 一方で、今回の総通の破たんは多くの通販企業にとって「対岸の火事」ではないように思う。総通の破たんの理由は先の粉飾決算や一部で言われているデリバティブ取引の失敗による損失などもあろうかと思うが、やはり最大の理由は、端的に言えば、時代に即した効果的な打ち手を打てなかったということに尽きるだろう。商品政策しかり、媒体選定しかり、経営戦略しかりだ。最盛期には年商500億円まで導いた「過去の成功体験」を忘れることができず、抜本的な打ち手ができずマイナーチェンジに終始し、後手後手に回ったものと考えられる。そうでなければ、今回のような破たんに追い込まれることはなかっただろう。

 無論、過去の手法や戦略をすべて否定するものではない。先人たちが残した戦略や手法の中には今もって色あせないものも多々ある。とは言え、やはりどんなに優れた手法や戦略も時代の変化に合わせて、これらもいずれ変化していくことは道理だろう。消費者の思考や行動の変化。通販媒体となるメディアの変化、強力な競合となり得る新規参入事業者も次々に登場してくるであろう。また、消費者保護という美名の下、通販を取り巻く規制や行政介入は今後もさらに強化されていくかも知れない。そして、大きな流れとして、少子高齢化により消費者の絶対数は減っていく。こうした社会の変化はいかんともし難い「現実」である。「現実」を前に「言い訳」や「逃げ口上」を述べても何も意味がなく、対応できなければ淘汰されるだけであろう。

 社会の変化で業績が悪化していくのであれば生き残るために、その変化に合わせて、柔軟にビジネスモデルや戦略を組み替え、その都度、時代に即した成長モデルを模索していくほかない。実際に老舗であっても好調な企業や健闘している企業の多くは過去にとらわれることなく、挑戦をし続けており、「不況」「デフレ」「規制」など「何かのせい」にはせず、戦略はそれぞれ異なるが、巧みに社会の変化を読み、その変化に対応する効果的な戦略を立て、即座にそれらを実行しているように思う。現在は好調な企業もこの先、未来永劫、保障があるわけではない。時代や社会の変化に合わせて、常に変化し続けることができる通販事業者こそがこの先も生き残っていけるはずでそれこそが通販市場発展につながるはずだ。

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