サービス品質に独自価値を
化粧品通販事業者を取り巻く市場環境が厳しい。いくつもの"脅威"が存在するためだ。制度品大手の通販参入や、資本力を持つ異業種大手の化粧品通販参入はその一つだろう。ここ数年をみてもロート製薬や富士フイルムの台頭で市場の勢力図は変化してきた。これら大手の成功に続けと、多くの異業種も化粧品通販に参入している。いずれも独自技術や素材を活かした「オリジナルブランド」が強みだ。ただ、製品の独自価値のみで優位性を保つことも難しくなっている。リテーラーによるサービスレベルの向上、新業態開発などもう一つの脅威が存在するためだ。通販事業者は、サービスレベルにおいてもこれらリテーラーに負けない仕組みを構築する必要がある。
「オリジナル商品を提供するメーカーといえど、リテーラーによる価格破壊、競争の波に巻き込まれる可能性は十分ある。メーカーは独自価値をより研ぎ澄ませない限り埋没する」。オルビスの町田恒雄社長は、物流再構築に際し、こうメーカーとしての危機意識を語っている。もはや「オリジナルブランド」という独自価値のみで他社優位性を発揮することが難しくなっている市場環境の厳しさを印象づけるものだ。
かつて、制度品メーカーによる寡占的市場だった化粧品業界は、通販やドラッグストアなど流通の多様化により、その勢力図が変化してきた。富士フイルムの「アスタリフト」は通販で、ロート製薬の「肌ラボ」はドラッグストアを中心に顧客の支持を得て急成長を果たしてきた。昨年から今年にかけても異業種からの化粧品通販参入が相次いでいる。サントリーウエルネスは、新ブランド「F.A.G.E.(エファージュ)」を立ち上げ、第一三共ヘルスケアや江崎グリコなど有力メーカーも化粧品通販に参入している。
一方で、リテーラーの動きも活発化している。楽天やアマゾンなどネット専業企業は、送料無料化や配送リードタイムの迅速化などでサービスレベルを向上させてきた。イオングループのコスメームや三越伊勢丹ホールディングス、住商ドラッグストアーズは、百貨店市場でのみ手にすることのできた国内外のラグジュアリー化粧品を新業態のセレクトショップで扱い始めている。いずれも自宅近郊や仕事帰りにラグジュアリー化粧品を手にできる"身近さ"を売りにしたものだ。
通販は、女性の社会進出や出産・育児など生活環境の変化、購買行動の変化に順応できたことで成長してきた側面がある。スマートフォンなど新たなデバイスの登場やリテーラーの戦略を分析する中、オルビスではこうした顧客の購買行動が新たな局面を迎えていると捉え、「関東・関西主要都市における当日配送・全国翌日配送」というサービスレベルが必要と判断したのだろう。
顧客の感覚をどう捉えるか、それは個々の事業者の判断に委ねられている。ただ、女性が仕事帰りやネット上で商品を購入する際、受注から決済、配送に至る場面で顧客の要望に応えるサービスレベルを維持できなければ、通販という業態もいつしか顧客から遠い存在となってしまうはずだ。
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