ルール議論の前提を認識せよ

2013年03月14日 10:20

2013年03月14日 10:20

省令による第1、第2類医薬品の通販・ネット販売を一律に禁止することは違法とする最高裁判決を受け、厚生労働省が設置した「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」で医薬品通販・ネット販売のルール作りに向けた検討作業が始まった。これまで行われた2回行の会合では、医薬品ネット販売に慎重な薬業や医療関連団体の委員から、違法な偽造医薬品の問題など、本来議論すべき正規の販売許可を取得した事業者による一般用医薬品の通販・ネット販売のあり方とは関係のない発言が出されている。同検討会においては、最高裁判決の主旨に基づき、論点を絞った議論と早期のルール作りの方向性を出すことが求められるところであり、本筋から外れた話を引き合いに出し、議論の拡散を招くようなことは避けるべきだろう。

 どのようにすれば、副作用リスクを軽減し消費者が安全に医薬品通販・ネット販売を利用できるのか。この部分で、推進派のネット販売関連委員と慎重派の意見の対立はあってもいい。より多角的に意見を出し合った方が、しっかりとしたルール作りの方向性を示すことが期待できるためだ。だが、これまでの会合で慎重派委員から出された意見は、ルール検討会で本来議論すべき内容とはズレがあり、暗にネットを危険視するかのようなものが少なくない。

 特に、目立ったのは違法な偽造医薬品に関する内容で、2月27日に開催された第2回会合では、日本医師会の中川俊男副会長がこの問題に触れ、「ネット販売自体が諸悪の根源」と指摘。ネットがあるから偽造薬も売られているとの考えを示し、偽装医薬品ネット販売の問題もセットで議論すべきとした。

 だが、ルール検討会で議論すべき対象は、正規の販売許可を得た事業者による一般用医薬品の通販・ネット販売であり、法を無視した確信犯的な輩の話とは次元が違う。偽造医薬品の問題を引き合いに出し、一般用医薬品の通販・ネット販売に縛りをかける考えなのかも知れないが、そうしたアウトローは、厳しく取り締まり法執行で対応すべきものである。それで不足なのであれば、別の検討会を設けて議論をすればいい。そもそも、アウトローの存在が全うに一般用医薬品の通販・ネット販売を行おうとする事業者を規制するための立法事実となり得るのかを考えねばなるまい。

 このほかにも慎重派委員からは、省令で一律に一般用医薬品通販・ネット販売を禁止したことが問題であり、薬事法の条文に対面の原則に関する文言を入れれば済むとする意見や、ルール検討会は薬事法改正のためのものではないのかといった発言が出されたが、これらは、最高裁判決で触れている立法過程や憲法の問題を軽視し、初会合で確認された検討会の議論の進め方や目的を取り違えたものと言わざるを得ない。

 今回の検討会は、最高裁判決をもとに設置されたものであり、違法と判断された一般用医薬品の通販・ネット販売のルールのあり方を検討するためのものである。慎重派委員は、この前提を認識した上で議論に参加すべきだ。

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