健食の表示規制"改革"に備えよ

2013年04月04日 10:03

2013年04月04日 10:03

政府の規制改革会議で「健康食品の機能性表示の容認」が検討課題になり、健食の規制改革が大きく進もうとしている。会議傘下の「健康・医療ワーキンググループ」に参加する委員の多くは、この提言に賛同しているとみられ、6月をめどに政府がまとめる成長戦略に「表示容認」が盛り込まれる可能性は高い。ただ、提言の本質は「規制緩和」ではなく「規制改革」だ。表示制度の整備は、事業活動にもより厳しさを求めるものであることを忘れてはならない。

 健食を巡る今の規制環境は複雑だ。「表示容認」が提言される一方、消費者庁では食品表示課と表示対策課で組織する「食品表示担当班」を組織。広告の監視強化を進めようとしている。ただ、監視強化と制度整備は車の両輪と言えるもの。相克を成すものではない。一方で監視体制を整備することは、歓迎すべきことと捉えるべきだ。

 それだけでなく、健食の表示規制を巡る検討に際し、過去にこれほど肯定的な条件が揃ったことはない。安倍晋三首相の諮問機関として強力な意思決定権を持つ規制改革会議で議論されることに加え、健食業界の自主規制が実を結びつつあるタイミングでもあるためだ。

 かつて健食業界では、法制化に向けた運動体である「エグゼクティブ会議」が政治的アプローチで制度化を試みたがうまくいかなかった。業界団体が乱立し、主張が異なる状況に行政や政治家が「業界の総意が見えない」と匙を投げたためだ。

 だが、今の状況は異なる。日本健康・栄養食品協会や日本健康食品規格協会は、製品の品質確保を図るための「GMP(適正製造規範)認証」を地道に展開。GMP認定工場も今では2団体で100を超えた。日本通信販売協会は、「サプリメント登録制度」を導入。製品登録を健康被害、事故発生時の押さえとするだけでなく、事業者の安全性確認や広告表示のチェック体制を調査することで、事業者による取り組みの底上げを図っている。このような地に足のついた活動で実績を積み重ねてきたことは、業界外の有識者や消費者団体にも理解を得られるものだろう。

 ただ、機能性表示の本来の目的は、消費者選択に資する制度を確立することにある。これまで少なからず、広告の巧みさが他社との差別化要因となってきた健食業界だが、表示制度化は事業活動にも一定の制限をもたらすものになるだろう。極端な話、科学的根拠が十分でない製品は、「効果がない」ことも表示しなければいけなくなるかもしれない。表示の適正化だけでなく、安全性や品質も安易なイメージではなく、より本物志向になるはずだ。

 「規制改革」は、事業者により厳しさを求めるものになるかもしれない。ただ、定義もなく、表示制度もない業界のままでは、いかがわしさの残る従来のイメージを払拭することは叶わず、いつまでも社会的認知を得ることはできない。そのようなままでは、将来的な健食市場の拡大も望めないのは明らかだ。

 事業者は、表示だけでなく、安全性や品質のチェック体制を整備し、「規制改革」がもたらす新たな市場への備えとする必要がある。

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