既存通販企業の奮起に期待
2013年06月14日 10:16
2013年06月14日 10:16
宅配水事業などを行うナックが化粧品通販のJIMOSを買収する。ナックは新たな収益源を獲得すべく、既存ビジネスで培った販売網や顧客基盤を活用した通販に本腰を入れていく考えで、その一環として今回の買収に踏み切ったようだ。これまで通販を主戦場に化粧品を展開してきたJIMOSを通販とは"畑違い"となる訪問販売を行う企業が買収した点について、そのシナジー効果などを疑問視する声もあるようだが、"畑違い"の企業、つまり通販とは無縁だったアウトサイダーによる通販企業の買収はもはや珍しいことでは決してない。
直近では韓国生活用品大手のLG生活健康が昨冬に買収した化粧品通販の銀座ステファニー化粧品に続き、今年1月には健食通販のエバーライフの全株式を取得し、子会社した。精密機器メーカーのノーリツ鋼機も昨秋に買収したシニア向け情報誌や通販事業を展開する、いきいきに続き、昨年末には老舗通販の全国通販およびジャパンホームショッピングサービス、全通など全国通販グループ7社を買収した。また、買収ではないが、コールセンター大手のトランスコスモスが破たんした総通の通販事業「日本直販」を今冬に買い取った。目立つ事例ではGMS大手のイオンが出資先のテレビ通販会社を完全子会社化。NTTドコモも09年にテレビ通販大手のオークローンマーケティングを子会社したことを皮切りに昨年7月にはタワーレコードを連結子会社化し、昨年8月には食材宅配のらでぃっしゅぼーやを買収、さらに今年に入り、ファッション通販サイトを運営するマガシークを買収している。
インターネットの普及や各種デバイスの進化、物流網の発達により、いまや流通形態は多様化しており、消費者の商品購入パターンもまた多様化している。要は様々なメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となり定着化してきているわけだ。そんな中で、メーカーや有店舗小売事業者、訪問販売事業者なども通販チャネルに興味や関心を抱くのは当然のことと言える。そのため、自社で通販サイトなどを立ち上げて通販ビジネスを開始する企業は増加傾向にあったわけだが、多くは「とりあえず立ち上げた通販サイトで既存商品を売ってみよう」というような、いわば片手間の通販と言えるものだった。
しかし、いよいよ本格的に人々の消費行動が多様化して、小売り企業やメーカーも含めて企業側が本当の意味でマルチチャネル化、オムニチャネル化を進めなければ、生き残っていけない時代に突入した今、ゼロベースで通販ビジネスを立ち上げるよりも、長らく続く不況などで体力が落ち、「買いやすくなった」通販企業を買収し、一気に通販に必要な商材や人材、組織といった「通販の器」を取得し、短期間に通販チャネルを確立しようと考える企業は恐らく多いはずで、今後もアウトサイダーによる通販企業の買収劇は増えるだろう。この先、通販市場を構成するプレイヤーの顔ぶれは大きく変化していくかもしれない。新規参入で新たな風を期待する一方、やはり既存通販企業の一層の奮起も期待したい。