仮想モールは責任を自覚せよ

2010年02月03日 18:45

2010年02月03日 18:45

 国内の主なジュエリー関連事業者が加盟する日本ジュエリー協会(JJA)に寄せられた09年上期(4―9月)の相談や苦情のうち、「宝石や地金などの表示」に関する件数が最も多く、前年に比べ、大きく増加したようだ。その背景の一因がネット販売事業者だという。無論、様々な分野・商材でネット販売が広がることに関しては、喜ばしいことだと言える。問題なのは指輪の地金の純度表示など消費者に誤認を与える出鱈目な表示を堂々と記載、問題が表面化すると、社名を変え同じ行為を繰り返す悪質な業者の跋扈だ。

 消費者庁の設置等で行政の監視の目が厳しくなっている今、こうした悪質な行為を繰り返す業者を野放しにしておけば、さらなる通販への規制強化は免れまい。早急に業界内で何らかの施策を講じる必要がある。とは言え、そうした業者の行為に歯止めをかけ得る有効な手立てがないのが実情のようだ。出鱈目な表示を繰り返す業者の多くはいわゆるアウトサイダーで日本ジュエリー協会はもちろん、日本通信販売協会など業界団体には所属していない。また、前述した通り、そうした業者は問題が表面化すると社名を変更して逃げてしまう。歯止めを掛けようにもその防波堤となる得るもの自体が存在しないわけだ。

 唯一、期待できるのは当該業者が「売り場」としている仮想モールの運営者だ。常識的に考えれば、自らが運営する売り場で出鱈目な表示が繰り返されれば、利用者離れを招く危険性があり、放置できない問題と捉えるはずだ。しかも、出鱈目な表示を行なっている業者は〝ひっそり〟と隠れて販売行為を行なっているのではなく、ジュエリージャンルで売上上位の場合もあるようだ。しかし、JJAが再三に渡って、出鱈目な表示を行う出店店舗に何らかの指導をして欲しい、と某大手モール運営者側に申し入れを行っても、問題があるなら個別に店舗に指摘すれば良い、というスタンスで出鱈目な表示が横行する現状は何ら改善が見られないのが実情のようだ。これは何もジュエリーだけでなく、他の商材でも同様の有様のようだ。

 楽天やヤフーなど仮想モール運営者が中心となって、ネット関連事業者の業界団体「eビジネス推進連合会」が2月にも発足する。同団体の大きな目的の1つはネット事業者が大同団結して、近年のネット関連の規制強化に対抗することだ。行政のネットビジネスへの無理解から来る規制に声をあげること自体は大いに賛同する。しかし、皮肉なことにその団体の中心たる仮想モール運営者の仮想モール上で、規制強化のきっかけとなり得る出鱈目な表示が平然と行なわれている。そして一部のモール運営者は何ら手立てを講じない。〝売り逃げ〟を黙認していると捉えられても、文句は言えまい。

 無論、企業として営利を追求することは当然だ。しかし、モールの流通総額、出店者数の拡大のためには多少の「表示間違い」には目をつぶるという態度ではとても行政を牽制し得る「圧力団体」とはなり得まい。何かに文句を付ける際には、一層、自らの行動を正すべきであり、責任の重さを自覚すべきだ。

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