慎重派団体の動きを注視せよ

2013年07月04日 10:28

2013年07月04日 10:28

一般用医薬品ネット販売を解禁する内容を盛り込む成長戦略が閣議決定されてから、およそ3週間が経過した。これに基づき、厚生労働省が新たに検討会を立ち上げ、具体的な医薬品ネット販売のルール作りに入る予定だが、この閣議決定に不満を持つ薬業など医薬品ネット販売慎重派の関係団体が、ルール作りへの影響力を狙い、今後、政治などへの働き掛けを強めることも予想される。

 今回、閣議決定された成長戦略については、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会など安全性を軽視したものなどとして遺憾の意を表明している。各団体は、厚生労働省の「一般用医薬品のネット販売等の新たなルールに関する検討会」に委員として参画し医薬品ネット販売に懐疑的な見方をしていたが、同検討会の結論を頭越しにしたような閣議決定への反発は強い。

 だが、今年1月に、省令で一律に医薬品ネット販売を禁止するのは違法とする最高裁判決が出されたこと、消費者の間でネット販売が一般的な買物手段となり利用が拡大していること、さらに規制改革会議や産業競争力会議の議論の方向性などを考えれば、医薬品ネット販売解禁の流れにあることは予想できたはずだ。

 むしろ、慎重派の団体は、検討会の場で不毛なネットと対面の優劣論を持ち出し、安全確保策など本来議論すべき事案に使う時間を浪費したことを反省すべきだろう。

 一方で、慎重派団体の中には、政府が打ち出した医薬品ネット販売解禁の方針を参院選に向けたパフォーマンスと捉える向きもあり、選挙後に流れが変わると見て、巻き返しをうかがう動きも見られる。

 その一例と言えるのは、独自のガイドラインを策定し、会員企業への医薬品ネット販売の自粛要請を解除した日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の動きだろう。同ガイドラインは、法的要件や安全性確保など27項目の基準から成り、全ての基準を満たした会員企業の通販サイトにJACDSが「適合店マーク」を付与する。これは、先の厚労省のルール検討会で"なりすましサイト"の峻別策として浮上した認証マーク制度を意識したものと言え、今後の医薬品ネット販売のルール作りで存在感を示すためのモデルケースとする考えがあるようだ。

 さらに注意を要するのは、ガイドラインの策定と合わせて設置した医薬品ネット販売対策本部だ。同対策本部では、「適合店マーク」取得企業や購入者からの問い合わせ対応、トラブル仲裁などを行う一方、医薬品ネット販売のトラブル情報を収集し、専門家がネット販売との因果関係を検証、ネット上のフォーラムで公開することも視野に入れる。会員、非会員企業の別、自社および他社の問題に関わらず幅広く情報を受け付けることを考えた場合、情報の裏付けをしっかりと取って対応しなければ、密告のはけ口にもなりかねないが、これも今後の医薬品ネット販売ルールの検討で、情報面から影響力を持たせること狙ったもののようだ。

 医薬品ネット販売のルール作りがあらぬ方向に進まぬよう、ネット販売推進派の事業者も慎重派団体の動きを注視すべきだ。

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