化粧品被害症例の早期把握を
2013年07月25日 10:53
2013年07月25日 10:53
化粧品の老舗大手、カネボウ化粧品の製品自主回収は、化粧品販売を巡るリスクを再認識させるものだ。今回、カネボウが回収を決めて以降の対応には評価の声も少なくない。ただ、回収より約2年前に顧客から"肌が白くまだらになる"という症例の端緒を得ながら、回収まで時間を要したことには課題を残す。早期の症例把握を可能にする被害情報収集に向けたスキームの構築はカネボウに限らず、全ての化粧品販売事業者にとって喫緊の課題といえる。
カネボウでは、消費者相談窓口や販売店から寄せられた情報をデータベースで一元管理。研究部門への報告や原因究明を判断するものは、「肌トラブル」に、その後のフォローを必要としないものは「相談」に分類していた。にもかかわらず2011年、顧客から寄せられた白斑に関する相談を見過ごした理由を、「医師が皮膚疾患の一つである『尋常性白斑』と診断。化粧品との因果関係を指摘しなかったため、『相談』に分類された」と、カネボウは話している。
しかし11年以降、回収までに寄せられた症例は39件に上る。中には医師が白斑と診断したものも12例あった。白斑との関連の可能性がゼロとは言えない美白剤を扱いながら、なぜ皮膚科医の指摘を受けるまで調査に乗り出せなかったか。放置し続けたことは「皮膚疾患であるため化粧品との因果関係はないと判断した」という説明で納得できるものではない。情報の処理方法や顧客窓口のスタッフの対応力に何らかの問題があったと考えざるを得ない。
考えられるのは、十分な安全性試験を行い、国の承認を得た医薬部外品に対する過信があったということだ。本来、他社が用いない独自成分であればより注意が必要になる。が、化粧品や部外品はそもそも「人体への作用が緩和なもの」と理解されてもいる。"白斑などあり得ない"との思い込みが因果関係を否定し、発見を遅らせたのかもしれない。
カネボウが吸い上げた情報をどのように管理していたかは「ノウハウで公表できない」としているため、詳細は分からない。ただ、収集した情報から見えてくる分析結果は、「製品別」「成分別」「トラブル別」などデータベースの分類項目一つとっても異なってくる。原因とされる有効成分「ロドデノール」は複数製品に配合されており、製品別の分析ではその有害性は把握しにくいだろう。
ここ数年、大規模の自主回収が相次いでいる背景について、ある事業者は、市場への新規参入が増え、競争が激化する中で、美白やアンチエイジングといった分野で効果感を求めた差別化競争が激しくなっている点を挙げる。他社にはない、効果の強い成分を追求することが、今回の事態を招いたというものだ。
そうであればなおのこと、これまでの常識ではなく、市場の変化に合わせた情報収集の仕組み、判断基準が必要になる。今回の事例を教訓に各事業者は、さまざまな角度から情報を分析できる仕組みとなっているか、見直す必要があるだろう。また、顧客対応窓口とは別に、研究部門や品質管理部門が客観的かつ定期的にチェックする仕組みとなっているか、再確認する必要もある。