アマゾンの一人勝ち防げ
2013年08月22日 10:29
2013年08月22日 10:29
通販新聞社が2013年7月に実施した「第60回通販・通教売上高ランキング調査」によると、上位300社の合計売上高は前年同期調査から5・9%増加し、5兆1425億5900万円となった。ただ、内訳を見ると必ずしも手放しで喜ぶわけにはいかない。アマゾンジャパンの増収額が全体の増収額の多くを占めているからだ。
今回の300社売上高は、前年同期調査から約2883億円増となった。一方、アマゾンジャパンの増収額は1400億円(ただし、前年同期調査の売上高は本紙推定だった)。増収分の実に半分以上を占めているわけだ。これに伴い、市場全体に占めるアマゾンの売上高比率も増加。前年同期調査では、上位300社売上高に占めるアマゾンジャパンの売上高は約9・9%だったが、今回調査では約12%まで増えている。
書籍やCD・DVDでダントツの売上高を誇るのはもちろん、家電でも「関連商品の売上高は1000億円を超えている」(業界関係者)との声もあり、これが事実なら同分野でもトップということになる。衣料品はまだそこまで大きな数字ではないとみられるが、このジャンルも強化を進めており、「アマゾン一人勝ち」という状況も見えてきた。
アマゾンが市場を牽引する一方で、伸び悩みが続いているのが従来型のカタログ通販企業だ。ニッセンホールディングスが7月26日に発表した2013年6月中間決算では、シャディ関連3社を連結したことで増収にはなったものの、最終赤字に転落した。通販のニッセンでは新規顧客獲得を中心に販促費用を抑制したが、想定以上に稼働客数が減少。カタログ発行時期と販売する商品の「ズレ」やネット限定商品の投入が思うように進まなかったことなどが加わり、売り上げが伸び悩んだ。
こうした状況を受けて、ニッセンHDでは大幅な媒体戦略の転換を打ち出した。カタログの配布を前提とした年間の販促計画を見直し、ネット販売を「主」、カタログを「従」に位置づけるというものだ。
確かに、前述した「ズレ」は近年カタログ通販企業にとって深刻な問題となっている。これをなくすには、カタログの配布頻度を増やすとともに、季節感のある商品を随時ネットで販売できるようにする商品開発体制を構築するのが一番だろう。
ただ、競合がひしめく中、ネットで存在感を出すには、商品力やサービス力の向上は必須。同社では商品・サービス品質の向上により顧客満足度を上げる「QSC活動」を進めており、効果が出ているとしているものの、リピート購入増には結びついていないのが実情だ。ネットを主としながら稼働客数を増やすには、送料無料や当日配送など、ネットでもトップレベルのサービス力を備える必要があるのではないか。
もちろん、最大の課題はネットで売れる商品を開発することだ。さらには、利益率の高い単品通販事業の強化なども重要になりそう。媒体戦略の大幅な変更は、稼働客数の減少につながる恐れもあるが、生き残りに向けた改革は不可欠だ。アマゾンの一人勝ちを防ぐためにも、従来型通販企業の挑戦に期待したい。