ニッセン買収が示す現実
2013年12月05日 14:45
2013年12月05日 14:45
ニッセンホールディングス(HD)がセブン&アイ・ホールディングス(HD)の子会社となる。セブン&アイグループではTOB(株式公開買い付け)を実施するとともに、第三者割当増資を引き受ける予定で、買収額は最大で約177億円となる。通販業界を長く支えてきたトップランナーである、ニッセンが流通最大手の子会社になるという事態は重く、今後の再編が加速しそうだ。
ニッセン買収の目的について、セブン&アイHDの村田紀敏社長は「あらゆる販売チャネルを連携させた『オムニチャネル』を目指すために必要だった」などと説明した。ネット販売の進展は、これまで通販とは縁のなかった小売りやメーカーなどの参入を促進し、その結果として店舗と通販の「壁」がなくなる、つまりボーダレス時代が到来した。
セブン&アイグループではこれまで、子会社を通じてネット販売を手がけてきたが、以前は強みのあった書籍販売でもアマゾンに大きく水を空けられているのが実情だ。オムニチャネル化を進めるためにもネットの強化は必要不可欠であり、そのために通販のノウハウを持つニッセンをグループに加えたとみられる。
一方、ニッセンHDの今期業績は、シャディ関連3社を連結したことで増収にはなるものの、最終赤字に転落する見込みだ。同社では中間決算発表時に、カタログ発行時期と販売する商品の「ズレ」やネット限定商品の投入が思うように進まなかったことなどを業績不振の要因として挙げているが、これはカタログを主な販売チャネルとしてきた総合通販企業の限界を示したものといえる。
同社では、カタログの配布を前提とした年間の販促計画を見直し、ネット販売を「主」、カタログを「従」に位置付けるなど、媒体戦略の大幅な変更を打ち出していた。ただ、競合がひしめく中、ネットで存在感を出すには、商品力やサービス力の向上は必須となる。そのためにも、流通最大手からの資金調達は欠かせないということだろう。
総合通販企業はこの10年あまり、カタログからネット販売への移行を進めてきた。だが、既存の顧客が注文する媒体こそネットに移っているものの、ネットからの新規顧客獲得はうまくいっていないのが実情といえる。現に、ネット化が進むにつれて売り上げを落とす企業が大半だ。総合通販企業はこれまで、衣料品や家具などで「値ごろ感」を打ち出すて店舗への優位性を保ってきた。ところが、SPA(製造小売業)の発展はこうした優位性を完全に失わせてしまった。さらには流通形態の多様化が進むとともに、消費者の商品購入パターンも多様化。さまざまなメディアやチャネルで欲しい商品を選び、購入することが当たり前となる中で、総合通販が消費者から「選ばれる」のが難しくなったわけだ。
今回の買収劇は、従来型の総合通販企業の限界を如実に示したものといえる。このままでは同様の企業がまた出てくるだろう。ネット販売では、サービスレベルにおいてアマゾンジャパンや楽天などの大手に対抗するのは難しいだけに、各企業は生き残りをかけて、新たな収益源を見出す必要がある。