"次代の経営者"にエールを
2014年02月20日 17:39
2014年02月20日 17:39
これまで通販市場をけん引してきた主だった通販企業のトップの世代交代が進みつつある。昨年末にはジャパネットたかたの髙田明社長が2年後をメドに社長を退き、その後は長男で副社長の高田旭人氏に社長職を引き継ぐ考えを示した。また、すでに老舗通販企業でもトップの子息などの後継者がすでに責任ある立場でそれぞれの会社のビジネスをけん引する担い手となっている。いかに偉大な創業者や経営者であっても、いずれかの時期に後継者に引き継ぎを行わねばならないのは自然の摂理である。次代の経営者には偉大な先代の資産を継承しつつ、気負わずに新たな独自を道を見つけ、さらに規模を拡大させ、未来の通販市場をけん引してもらいたいと切に願う。
とは言え、強烈な個性とカリスマを備えて、事業をけん引してきた創業者からバトンを受け継ぐことは容易なことではないだろう。例えば、意思決定1つとっても、それまではひとりのカリスマが、事業運営における様々な重要事項を最終的には決めてきたわけだ。当該企業の事業を創造し、いくつもの困難を切り開いていった経験や実績もあり、説得力や求心力があるわけで、物事はスムーズに決定していた。ただ、それは創業者だからこそ成立することと言え、誰もができることではない。このことはバトンを引き継ぐ後継者自身が痛いほど理解しているはずだろう。
だからこそ、すでに創業者から手を離れた通販企業などは、商社や銀行などから外部の優秀な人材を招聘し、従来の「個人」から「組織」による企業運営へと転換を目指した。当然の選択肢と言えようが、しかし、問題なのはそうして個人経営から組織経営に移行した通販企業が、必ずしも更なる成長を遂げているかと言えば、そうとは言い切れないことだ。これは某大手総合通販企業などの近年の状況を見れば明らかだろう。
確かに組織はスムーズに回せるようになり、緻密なマーケティングも、効率よい商品開発も可能になったかも知れない。しかし、そこにはかつて創業者が経営していた時代にはあった「色」が失われているからなのではないか。「色」とは言い換えれば、創業者の「個性」だ。強烈な個性が販売する商品を決め、訴求力のある見せ方を考え、この個性に共感した消費者が当該企業を支持し、その結果として当該企業は成長を遂げてきたわけだ。
個人経営から脱却し、組織による経営に移行することは悪いことではない。むしろ、当然の流れだと言えよう。とは言え、その過程で「個性」を失ってしまえば、当該企業の魅力は急激に色あせ、顧客離れを誘発しかねない。ある種、感覚的とも言えるカリスマが残した、目に見えない、しかし、最も重要な資産を、新体制でどう継承し、新しい形として昇華させることができるか。2年後に社長を継承することになるジャパネットたかたの髙田旭副社長は創業者のやり方やノウハウを組織や仕組みに変え、"再現"できる試みを進めており、この安定した土台の上で、新たな自らの「色」を作りそうとしているようだ。偉大な創業者の後を継ぐ次代の経営者にエールを贈りたい。